2024年2月21日水曜日

ゴジラ−1.0(妄想編)

 みなさま、お久しぶりです。

実に13年振りの更新です。このホームページを忘れたわけではなかったのですが、記事を書く気力がわかない、というか生活に一杯一杯で今もそれは変わってしません。ただ、どうしても記事にしたい映画と出会ったので今に至ります。

その作品は私の大好きな映画監督、山崎貴監督の最新作「ゴジラ-1.0」です。

公開からはや3ヶ月が経過し、でもまだ上映が続いている本作。先程やっと観ることが叶いました。大ファンの山﨑貴監督作品を大スクリーンで観るのは「寄生獣 完結編」以来9年振り。観賞後の興奮は最高潮です。この記事を帰りの汽車内で書いていたのですが汽車の軋みがゴジラの鳴き声に聞こえて仕方ありませんでした(笑)

それでは始めたいと思います。

いつもならナタバレなしの紹介編と、ネタバレ全開のネタバレ編と2回に分けて書くのですが、今回は公開からかなり時間も経っているので、あえてたくさんの方が書いている両方ともせずに「妄想編」としてお贈りしたいと思います。映画のデーターやスタッフ記載もあえて記さないで進めていきます。


さて、これまでの私のゴジラ鑑賞(映画館に限る)を記す必要はないかもしれませんが、何かの参考になれば、と念の為記しておきます。

私が生まれて初めて観た邦画が昭和ゴジラの「ゴジラ対メカゴジラ」でした。その衝撃たるや凄かったのですが、何故か映画館ではその後昭和ゴジラシリーズを観るに至りませんでした。

次に映画館で観たのは何と、問題作と言われているローランド・エメリッヒ版でした。コレジャナイ感が半端ではなく、2枚買ってあった前売券をとうとう1枚しか使わず終わってしまいました。そのせいもあり、平成ゴジラシリーズに足を運ぶまでには至りませんでした。その後、鹿嶋が登場する「ゴジラ2000」がありましたが、登場するのを知ったのがビデオ発売前で、またしても映画館で観る事は叶いませんでした・・・

その次はハリウッドのリブート版とも言えるギャレット・エドワース版「ゴジラ」でした。この作品はIMAX 3Dで鑑賞しました。漆黒の闇を3Dで動くゴジラ、久々に興奮しました。残念な描写(日本じゃない感山盛りな日本描写)もありましたが、次も映画館で観ようと心に誓ったのでした。しかし残念ながら生活に一杯一杯な時期に差し掛かってしまい、後のシリーズをスクリーンで観るには至りませんでした(後にサブスクでは鑑賞済)。

そして遂に「ゴジラ-1.0」を映画館で観る事が叶いました。


次は山﨑貴監督作品についてです。

山崎貴監督の作品は、過去作と何かしらの繋がりが多い傾向にあります。

今回のゴジラは過去にタッグを組んだ俳優が多数出演(ノンクレジットの橋爪功さんも含めて)していて、その傾向が最も強いと言えるでしょう。


監督デビュー作「ジュブナイル」は、ネット上に広がっていた「ドラえもんの最終回」が元ネタになっています。

ここでの縁が後の「STAND BY ME ドラえもん」に繋がります。

「三丁目の夕陽」シリーズでは、無くなってしまった景色や街並みをCGで見事に再現し、その技術は「永遠のゼロ」や「アルキメデスの大戦」で生かされています。

続編で登場したゴジラは西武園ゆうえんちの「ゴジラ・ザ・ライド」で本領を発揮しています。

「ゴーストブックおばけずかん」では「ジュブナイル」で主人公を演じた遠藤雄弥さん(ゴジラー1.0で大戸島の隊員役でも登場)と鈴木杏さんが主人公の両親役で夫婦を演じています。


そして今回の「ゴジラ-1.0」はその集大成と言える作品となります。


「三丁目の夕陽」での東京タワーや街並みを描いたCG、続編で登場したゴジラ、「永遠のゼロ」で描かれた太平洋戦争での航空機の再現、「アルキメデスの大戦」で描かれた今は無き艦船の再現等々です。

その全てがつながった集大成が本作と言えます。


余談ですが、私には野田健治を演じる吉岡秀隆さんが茶川に見えて仕方ありませんでした(笑)

繋がりで残念だったのは雪風艦長を堤真一(ヤマト実写版で雪風艦長古代を演じる)さんに演じて欲しかったのですが、どうやら実在する人(寺内正道少尉)がモデルの様で、その人にそっくりな演者なので仕方ないのかもしれませんね。

あともうひとつ「ジュルナイル」や三丁目シリーズで登場した神崎ラジオ商会と香取慎吾さんの姿がなかったことかな・・・

先程触れた橋爪功さん登場の顛末は3週間にわたって放送された高見沢俊彦さんのラジオ番組(ロックばん)で監督との対談が行われたので、いつかポッドキャストかYouTubeで公開される事を祈るしかありません。その内容はあえて書きません。いつか聞く事が叶った時、楽しんでいただきたいので・・・


さて、いよいよメインテーマの妄想編スタートです。


先ずは続編についてです。

そのヒントは物語のラストで描かれた典子の首筋の黒いアザ(恐らく黒い雨でゴジラの細胞を浴びた典子は一旦死んだが再生して生き返ったのでは?)にあると思うのです。そして銀座には同様に生き返った人が沢山居て、後に蘇ったゴジラのせいで化け物扱いで被爆者以上に差別され、それを理由にX星人(是非ゴジラファンである高見沢さんと佐野史朗さんに演じて欲しい)から地球侵略に利用されてしまう、という設定があっても面白いのでは、と思います。

最近のネット記事によると、監督にはある程度の考えがあるようなので、いつか叶うことを信じて待ちましょうか・・・


ここから先は未来の妄想を書いていこうかと思います。


それは山崎貴監督の次回作について、の妄想です。

スタジオジブリが日テレの傘下に入った報道で、監督の過去の発言が思い出されたのです。

その発言とは、実写化したい作品はありますか?と言うインタビュー。

山崎貴監督は「風の谷のナウシカ」と答えたのです。

ナウシカといえば最近、海外の監督がイメージを受けて実写化した作品が注目されています。短いながらも中々良く出来た作品でした。

先を越された感はあるのですが、私が妄想する山崎貴監督の次回作はズバリ、「風の谷のナウシカ」実写版です。

そう考えるに至った理由は幾つかあります。

アニメだけに頼らず、スタジオジブリ作品群の活用(今はミュージカルが主)が急務なのではないでしょうか?

と考えると、現在世界を取り巻く様々な事案(強力な武器を持つ大国が小国を殺戮を繰り返しながら従わせようとする姿勢)を踏まえた上で、最も実写化に向いている内容の作品と言えると思います。

それに日テレといえば監督とも深い関わりがあります。あの「Always三丁目の夕陽」で日テレが製作に加わっています。つまりヒット作品を作ると言う実績が山崎貴監督にはあるのです。山崎貴監督自身もスタジオジブリとも関係があります。過去には「Always三丁目の夕陽'64」公開前にジブリ内で試写を行った事もあるのです。(ポッドキャストに対談音源が残っています)ネット記事によると、どうやらその時期に実写化を直訴していて、宮崎駿さんのみ反対で却下されているようです。今回の「ゴジラー1.0」の出来栄えを見て考えが変わってくれた事を願うばかりです。

つまり撮るべき時が来た、と言う事です。できればその海外の監督さんもスタッフに招き入れて・・・

今年はオリジナル公開から40周年ですし・・・年内の完成は無理にしても事業として発表できれば40周年記念事業にもなりますし。


アニメの実写化には色々な意見、特に否定的な声が多いのも分かっています。でも撮るべき条件は整いつつあります。スタジオジブリと言えば、アメリカではDisneyが関わっています。「ゴジラ」のヒットはDisneyも放ってはおけないでしょう。となると山崎貴監督の海外初進出作品も夢ではありませんね。


あとその際ナウシカ役は飯沼愛さんにやって欲しいですね。問題なのは彼女がTBS専業女優扱い(他局の仕事実績有り)な事ですが、その佇まいと良い演技を生かしてくれると思うのです。


オスカー絡みで「ゴジラ-1.0」の上映がルーカススタジオで行われたニュースを読んで、私は大きな期待を持ちました。これはあくまでも妄想で願望でしかないのですが、「スターウォーズ」のリメイクを山崎貴監督に撮ってもらいたいのです。「スターウォーズ」の元ネタが日本(黒澤明監督作品)にあるのは周知の事実ですが、そこに日本人ならではの視点を取り入れたら、どんな作品になるだろう、そう思うと期待で胸は高鳴ります。

Disney傘下に入った「スターウォーズ」は、買収以降思う程のヒットが生まれていません。ここはリセットの意味も兼ねてリメイク(ジョージ・ルーカス監督の当初の7~9作目の構想に沿ったシリーズ化を見据えて)を作るべきではないでしょうか。山崎貴監督と言えばVFXの道へと導いた作品でもある「スターウォーズ」ですから断る理由は全くないでしょう。


さて山崎貴監督と言えば、過去を描いた作品が多いイメージですが、史実に基づいた実話作品は未開拓の分野です。


そこで一つ、いや、幾つか提案があります。

まず一つ目。

山崎貴監督がキャリアを積んだ伊丹十三監督の生涯を描いた作品。これはドラマでもドキュメンタリーでも構いません。関係者が存命のうちに作らないとその声は届けられません・・・


二つ目もやはり実話です。

「永遠の0」は特攻を描いた作品ですが、その特攻の発案者の生涯を描いた作品を作って欲しいのです。

「大田正一」と言う方は数奇な運命に翻弄され行方不明から戦死(私が住む鹿嶋市にも縁があります)した事とされ、とうとう戸籍復活には至らず亡くなった悲劇の人です。そこに生きていたのに、この世には存在していない事にされた屈辱を知る人は殆ど居ません。その事実を世界に知らしめる為にも書籍化された本(『カミカゼの幽霊 人間爆弾をつくった父』)を映画化して、「永遠のゼロ」「ゴジラ-1.0」に続く特攻三部作として結実して欲しいのです。


そして最後は広島と長崎で2度被爆した人(山口彊さん)の話(ジェームズ・キャメロン監督が撮るとされていたがその約束は果たされず)。ハリウッドで活躍するジェームズ・キャメロン監督には扱いづらい被爆と言う内容なので、当事者である日本人がその任を引き継いで欲しいのです。きっと素晴らしい作品が生まれると思いますよ。

そしてゴジラのようにハリウッドに旋風を巻き起こすのではないでしょうか?


実は今回、残念だった事があります。

それは近隣でロケがなかった事。

ジュブナイルやリターナーでは銚子市や海上町(現 旭市)周辺で撮影が行われていますし、Alwaysシリーズでは続と64が隣町の潮来市の駐車場でオープンセットロケ(過去にはAppleのアプリ、マップの航空写真に64のロケセットが映っていたこともありました)が行われていました。その跡地は、ホームセンターとなってしまったので以後の山崎貴監督作品ロケには使われませんでした。

それと最近知ったのですが、おばけずかんでは鹿嶋市が撮影協力に加わっています。

つまり実績があり、地元がゴジラでもロケに関われる可能性があった、と言う事なのです。

残念ながらロケ条件に見合わなかった、と言う事なのでしょう。

時の運、なのでしょうか・・・


さて長々と妄想を書き連ねて参りましたが、尽きないのでそろそろこの記事を終わりにしたいと思います。

次の更新予定はありません。

ひょっとしたらこれが最後かもしれません。

ですので・・・皆さん、さようなら!

2011年1月20日木曜日

夕日町三丁目を探して 次回予告

新年第一回目の更新となりますね。
遅まきながら、新年おめでとうございます!
年が明けてから寒い日々が続いていますが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか?
私は風邪をひく事もなく、何とか元気に過ごしています。

いきなり本題に突入してしまいますが、前々回、前回とお贈りした「夕日町三丁目を探して」ですが、勘の良い方はすでにお気づきかもしれません。
そうなんです。ロケが行われたのを目撃はしたのですが、そこに夕日町三丁目は出てこなかったのです。
ではなぜ、そのタイトルだったのか・・・

それはその記事を書いた時点ですでに「続編」と思われるものが製作されると薄々分っていたからなのです。
と言っても情報解禁前。漏れ聞こえてくるものは幾つかありましたが、公式なものではないのであくまで噂話のレベル。
「どうやら造られるらしい」との記事は絶対に書けません。もし事実なら、その記事が製作側に多大な迷惑をかける事もあるのですから。
しかし私は見てしまったのです・・・残念ながらこの続き、今は書けません。いずれお贈りします。今回はあくまでその予告と言う事です。
では今ではなく、なぜ引っ張るのか?それもいずれ語りたいと思います。
どうかお許しくださいませ。

さて本日のテレビや新聞でご存知の方も多いと思いますが、ついに三丁目シリーズの第3弾製作が決定いたしました!

その名も・・・

ALWAYS三丁目の夕日'64

です!
タイトルが示す通り、東京オリンピックが開催された年の物語となります。
しかも今回は、3Dカメラでの撮影による純粋な3D映画。
友人と、もし次回作があるとしたら3作目だからきっと3Dだよね、と冗談交じりに話していたことが現実となって、正直驚いています。
でもこの流れは、山崎貴監督の発言を注意して聞いているとある程度予測できたはずなんです。
監督は「アバター」が公開されるしばらく前に、「ジェームズ・キャメロンが凄い映画を撮っている」との発言をされているのです。話の詳しい内容は忘れてしまいましたが、その時に3Dの話にも触れたと記憶しています。
今思えば監督はすでにその時点で、3D映画を撮るぞ!との意思表示をしていたのかもしれませんね。
それが「SPACE BATTLESHIPヤマト」を経て、現実となったわけです。
しかも2Dを3Dに変換する方式ではなく、あえて3D用カメラで撮る所にも監督のこだわりを感じます。

この3Dは、日本映画界にとって画期的な出来事でもあります。
いままで邦画で3Dと言えば若い観客を対象にしたものがほとんどでした。
しかし今回は明らかに上の年齢層を狙っている作品です。つまり今まで3Dにあまり馴染みのなかった人たちが映画館へ訪れる起爆剤に成り得るのです。
ひょっとするとこの続編がきっかけで、日本の3D映画の流れが変わるかもしれませんね。
山崎貴監督おそるべし、です(笑)

さて「ALWAYS三丁目の夕日」と言えば、続編の時に幾つかのエキストラ募集がありました。
そして今回も、既にエキストラの絡んだ撮影が行われています。
とはいえ、情報解禁前なので参加できた方はごく少数。
今日の情報解禁で、多くの方が参加したいと思うはずです。
そこで期待するのは、大々的なエキストラ募集。
続編では映画館の観客と言うのがひとつの目玉になっていましたが、今回はどうでしょう?
きっと何かがあると私は願っています。いくつか考えたものがあるのですが、あくまで私の予想なのでここに書くべきではないですね。募集を楽しみに待とうかと思います。

さて製作発表では、詳しいストーリーが明かされていません。
分った事と言えば、製作発表で写った鈴木オートの姿。ちょっと豪華になっていましたね。さすがにビルディングにはなりませんでしたが(笑)
それから、前作のように新たなキャストが参加する可能性も高いはずです。
しかしこればかりは、正式な発表を待つしかありませんね。
楽しみに待つとしましょうか・・・

と言う事で、新作の情報をちょっと書いただけの記事となってしまいましたが、いずれ「夕日町三丁目を探して」の続きを書きますので、それまでお待ちください。

それとこの記事を読んでいるみなさまへのお願いです。
もし「ここで撮影している」とか「撮影現場でこんな人を見かけた」とか、新たな情報をご存知の方もいるかもしれません。
それを知らせたい気持ちもわかります。
しかし今現在製作中と言う事を忘れないでほしいのです。
情報を発表していないと言う事はそれを秘密にする必要があるからなわけで、公表されると製作に支障をきたすことも考えられます。とくにネットでの公表は大きな支障となります。
ですのでこちらの記事のコメントにその様な内容は、絶対に書かないようにお願いいたします。
もし書かれてもその場合は非掲載となりますのでご了承ください。

なぜかって?

ネットに一度流出した情報は例え大元を消しても、完全に消すことは出来ないのです。次々と伝わってしまいます。
それだけは避けたいのです。
なのでどうかご了承ください。
そして「ALWAYS三丁目の夕日'64」が順調に製作され完成できるよう、暖かく見守って欲しいのです。

一ファンとして切に願います。

どうかご協力のほど、よろしくお願いいたします。

それでは、また!

2010年12月21日火曜日

夕日町三丁目を探して その二

いよいよエキストラを動員した大掛かりな撮影日です。私は少しの残業後、すぐに愛車に乗って現場へ向かいました。気分はこの上なく良かったことを覚えています。念願だった撮影がいよいよ見られるのですから。

しかしそこに行くまでにトラブルがあっては気分も落ち込むというもの。だから慎重な運転を心掛けました。そしてその慎重な運転が、貴重な偶然に巡り合わせてくれたのです。

それはロケ現場から1キロほど離れた、とある十字路を右折した時のこと。私の後ろに対向車線から左折してきた東京方面ナンバーのマイクロバスが続きました。
私は何の気にも留めることなくそのまま現場へと向かったのですが、そのバスはずっと私の後ろを走り、なんと直接ロケ場所に入って行き、そして数人が降りてきたのです。マイクロバスに数人と、通常のスタッフの方とは明らかに違う待遇です。

そうです。おそらくそのバスにはプロデューサーの方々、そしてひょっとしたら山崎貴監督も乗っていたのかもしれません。確かめる術はありませんが、きっとそうだったと信じています。

のっけからの偶然に私は興奮しました。

その興奮をかみしめながら、ロケ現場が見渡せる場所への移動です。
樹木の垣根に覆われた先ほどの場所とは違い、そこから見える風景は昨日までとは全く違うものでした。

「ALWAYS 三丁目の夕日」で見なれたクラシックカーの数々が、ブルーバックの横に整然と並んで待機していたのです。その姿を見ただけで、私の気分はどんどんと高まります。

しばらくは放心状態のまま、その風景を目に焼き付けていました。

しかし3月とはいえ、まだまだ十分な寒さ。
それにそんなに早朝から撮影が行われるわけはなく、そこから2時間程は寒さとの戦いでした。
寒いからと言って車内に居ては、ロケ現場の動きは見えません。かと言って温かい飲み物ばかり飲んでいてはトイレが近くなり、その場から離れる機会が増えてしまいます。なのでその両方を適度に切り替えながらの長い待ち時間でした。


やがて少しではありますが、暖かさが感じられる時間になった頃です。

壁にもたれかかって休んでいた私の耳にバラバラバラと突然、爆音が飛び込んできます。あわてて立ち上がりロケ現場を見渡すのですが、姿が見えません。音だけ静かな冬空のもと、響いているのです。
もしやと思い、先ほど私が走ってきた道路を注視すると、彼方に驚きの光景がありました。

そこに居たのは黄色いボンネットバス。
ゆっくり、堂々と自走してきたのです。
そしてそのバスがロケ現場に入ったとたん、場の空気が一気に昭和へと変わりました。

あの空気はきっと、一生忘れないでしょう。それほど、目にも、耳にも強烈でした。ロケから間もなく4年が経つ今でも、ハッキリとその光景を思い出します。


そこからは待つことが全く苦でありませんでした。それは僅かながら上がり始めた気温のせいだけではなく、もうひとつの私の決心から来る頭の中の、考えの堂々巡りから来るものでした。


それは「差し入れを渡す」と言うことです。

前日の夕方、悩みに悩んだ挙句選んだものを持参してのロケ現場だったのです。
そして渡すという行為がいよいよ現実味を帯びてきて、どうやって渡せばいいだろうか?とか、何をしゃべったらいいのだろうか?と私の心は落ち着かなくなっていたのです。

そんなことを何度も考えていると、時間などあっという間です。

やがてすこしづつスタッフが増え、クラシックカーの持ち主と思われる人が集まり始め、とうとうエキストラを乗せたバスがやってきます。
エキストラの方々はすぐに、控室代わりななっていた隣の建物に消えてゆき、また静寂が戻りました。

これからエキストラの方々の服装や髪形の準備が始まると言うことは、撮影までまだ時間があると言うことを意味します。しかし私はもう満足でした。たとえ撮影が見られなくても、これだけの空気を肌で感じ、目に焼き付けたのですから。
昼まで待って撮影が始まらなくても、それでもいい、と思うようになりました。


それからどれほど待ったでしょうか?

待機していたクラシックカーや、ボンネットバス、バイクなどがブルーバックスクリーンの前に並び始めます。
やがてそれぞれがゆっくりと動き始め、行ったり来たりを繰り返します。
それぞれが同じ動きを繰り返し、戻っては繰り返しと、入念なリハーサルが始まりました。

ロケ現場にはアスファルトと、歩道のコンクリーと、ブルーバックと、自動車しかありませんでしたが、もう私の眼には、おぼろげな銀座の街並みに見えていました。


三輪トラック、スバル360、名を知らないクラシックカー、そしてサイドカーに大きな荷物を乗せた古いバイク。
どれも年代物なのに、頑張って走っています。なんのトラブルもなく・・・と思ったら、どうもバイクが調子悪いようで、ときどきエンストしてはエンジンをかけて、を繰り返していました。これはご愛嬌ですね(笑)


やがてすべての動きが止まりました。


さあ、いよいよ撮影開始だ!

そう思って身を乗り出したのですが・・・なんとエキストラも、運転手たちも、テントに向かって歩き始めてしまったのです。
そうです、時計を覗けばすでにお昼。
昼食休憩です。
そして私がここに居られるのももうリミット。

残念ながら撮影本番を観ることは叶いませんでした。

でももう十分満足です。これだけの空気を肌で感じ、そして貴重な体験が出来たのですから・・・あと私に残された仕事は差し入れを渡すだけ。そして帰るだけです。


しかしここでも大きな偶然が待っていたのです。

それは差し入れを持ってロケ現場の前で若いスタッフの方を待って声をかけた時のこと。

「○○さんは、今日はいらっしゃっていますか?」

○○さんとはブログを更新していたスタッフの方の名前ですがここでは伏せておきます。もし何かの形で、ご迷惑がかかると行けませんので。でも、当時ブログを覗いていた方はご存知でしょうね(笑)

その問いに、やさしく答えてくれる若いスタッフ。

居るとのことに、ホッとした私。

ブログにコメントを書き込んでいる者ですと事情を話し、渡してもらおうと差し入れを差し出しました。
しかし次の瞬間、スタッフが驚きの言葉を発したのです。

「今、呼んできますから待っていてください。」

私は撮影の邪魔になってはいけないと思い「渡していただければいいですから」と答えたのですが「休憩中ですから大丈夫ですよ」と告げ、奥へと消えてしまったのでした。


これは全く予想もしていませんでした。もちろん心臓はバクバクです。

ほんの1分程の待ち時間が、どれだけ長く感じたことか・・・


そして、白いダウンジャケットを着たその方が私の前に現れたのです。

長い時間が過ぎたような気がしました。
しかし実際はほんの5分程。
話した内容は今でも覚えています。
でもここには書くべきではないでしょう。
とにかく最高の体験をしたのでした。
丁寧にお辞儀をして別れると、その方は気さくな笑顔で見送ってくれました。

私は、使命を果たした高揚感と、これまで見たことのない規模の撮影を間近に見られた満足感で、最高の気分のまま、その場を離れたのです。


後日、この日には堀北真希さんと、その同級生役の森林永理奈さん、中浜奈美子さんが撮影に参加したことを知りました。
今思えば、徹夜(昼夜逆転生活なので表現がおかしいですが 笑)してでも観ておけばよかったな、と、ちょっと後悔しています。


翌13日も僅かな期待を抱き現場に行きますが、テントが畳まれたままで人の気配もありません。
その日の夜、ブログで準備日だったことを知りました。
しかし翌日は難解な撮影をするとの予告が・・・
もちろん私は、仕事後に向かいました。


おとといの待ち時間に慣れた私にはもう、数時間が苦ではありませんでした。
待っていれば良いことがあると分かっていたからです。

そしてそのブログでの予告は、予期していなかった展開を見せたのです。


既にそこに座ってから数時間が経っていました。
ボウっと現場を見ていると、一台の立派な外車が入ってきました。

そこから降りてきたのは背の高い女性。しかも付き人らしい人が傘を差し、日焼けしないように気を使っているようです。
これは間違いなく、主役級の女優と言うことです。しかし少しばかり距離が離れていたので、誰だかはわかりませんでした。ただ、明らかにオーラが違って見えた気がしました。

やがてその女優は控室に消えて行きました。


それからどのくらい待ったでしょうか?

現場が急に慌ただしくなります。スタッフや、クラシックカーの運転手、みんなが慌ただしく動き、スタンバイを始めています。


そう、いよいよです。


傘を差す付き人と一緒に女優が現れ、ブルーバックのスクリーン横に移動し、(おそらく)監督と打ち合わせを始めたようです。その様に見えました。

そして私は確信したのです。


そう、その女優は、小雪さんでした。


やがて撮影が始まります。

ブルーバックの前を自動車が通り過ぎ、その合間を縫って小雪さんがスクリーンに向かって歩いて行きます。
すこし動きを変ながら、何度も何度も繰り返していました。

何をしているのか?何のシーンなのか?全く見当がつきませんでしたが、劇場でこのシーンを見て、驚かされたのです。


映画後半で、ヒロミが特急に乗るために東京駅に向かい道を横切るシーン。
その撮影だったのです。ブルーバックは、東京駅に置き換わっていました。

時間にして、それは経った数秒のシーン。

それだけの為に、入念なリハーサルをし、撮影していたのです。
これには感動しました。映画撮影現場の真剣さと緻密さを垣間見た気がしました。

そしてその日も興奮のうちに帰宅しました。


それから数日間、何度か現場に行ったのですがブルーバックスクリーンは縮小し、歩道のコンクリーは取り払われ、撮影が行われる気配もありませんでした。

もうこの場所も終わりなんだな・・・

なんだかしみじみしてしまいました。

嵐が去って行ったあとのような寂しさ。


でも、それで終わりではなかったのです。


3月22日、再びクラシックカーが集結したのです。

もちろんロケ現場を観に行ったのですが、残念ながら時間の制約で撮影を見ることはできませんでした。しかしその帰り道、貴重な経験をしたのです。

当時ブログをご覧になっていた方はご存知かもしれませんが、私は帰り道でモーリスマイナーと言う名前のクラシックカーとすれ違ったのです。

その存在感は、明らかに他のものとは違いました。
すれ違いのほんの数秒間、重厚感に圧倒されたのを今でも思い出します。


そして奇跡はそれだけでは終わりませんでした。


それは20日のブログに掲載された、夕焼けをバックに物思いにふける監督の写真を見たときのこと。

何となく見覚えのある風景と手すりにピンと来ました。


そうそこは、私がロケ現場を探した時に偶然辿りついた湖の畔の公園だったのです。


あの時には、何もなかったのに・・・

しかもここでの撮影は、貴重な機材を使った日本橋のシーン。
いつの間に大掛かりなセットが組まれたのだろう、と不思議な気分になりました。


もちろん私はすぐに行動を起こしました。
夜勤明けにまたしても向かいます。


あいにくの曇り空ながら、現場は慌ただしく動いていました。日本橋のセットが人の背丈ほどの足場の上に組まれていたのです。それだけではありません。川へと降りる階段のセットも並んでいました。

しかし残念ながら、駐車場を占拠して行われる撮影だったため、駐車できるスペースがなく、その日は諦めることとなりました。


日本橋と言えば、続編のテーマとも言えるエピソード。当初は実際の日本橋を使うことが検討されていたようですが、諸事情でこの場所での撮影となったようです。

そして日本橋のシーンは、映画の中盤とラストを飾る重要なシーン。


後日知ったのですが、ここではたったの3日間に、吉岡秀隆さんや小雪さん、須賀健太さん、薬師丸ひろ子さんや上川隆也さん、そして小清水一輝さん、小池彩夢さん、とそうそうたるメンバーが入れ替わりで訪れ、撮影が行われていたのです。


翌日、その場所を訪れてみると・・・どうやら撮影休止のようで、セットの管理をする人が数人だけ車内に待機していました。

私は一人、真っ青な空の下、ゆっくりと日本橋を眺めることが叶ったのです。


もう撮影を見られなくても満足でした。

これだけたくさんの現場に出くわし、クラシックカーや女優、そして日本橋のロケセットまで見ることが出来たのですから・・・


その公園は、数日後に訪れた時にはもう日本橋の跡形もありませんでした。

またいつもの公園に戻っていたのです。


やがて最初の現場も、使用期限を迎える前にすべての機材が取り払われてしまいました。
そう、ここでの撮影は、完全に終わったのでした。

でも寂しさはありませんでした。

私の胸は、満足感でいっぱいでした。


それからの私は、公開が待ち遠しくて仕方ありませんでした。
これほど愛着の湧いた映画も、初めてのことです。

やがて時は経ち、冬になり、11月3日の公開日を迎えました。
残念ながら公開初日は休めず、初日舞台挨拶を見ることはできませんでしたが、後日大ヒット御礼舞台挨拶が行われ、そちらで貴重なお土産をいただきました。
そのお土産は今でも大切に取っておいてあります。

そしてそのお土産には今も、私の一つの願いがかけられています。


それは「もし3作目となる続編が公開されたら、これで酒を飲む。」と言うことです。


そう、お土産と言うのは、その舞台挨拶で行われた乾杯に用意された升だったのです。

「祝 大ヒット! ALWAYS 続・三丁目の夕日」と焼印の押された升。
おそらくこれを持っているのはその場に居合わせた1000人程ではないでしょうか?
その貴重な升で酒を飲みたいのです。


どうでしょう?


私はあると信じています。
願い続ければ、きっと叶うはずですから。


思えば、技術的な制約やロケの制約など、様々な困難を乗り越えて造られた映画ですから、もう不可能なんてないでしょう。


そして、いずれ答えはわかるでしょう。




最後になりましたが、なぜ今までこの事実を封印してきたのか?その理由を述べたいと思います。

それは、地元での撮影に迷惑をかけたくない、その思いからだったのです。

ロケ撮影は、製作側と、場所を提供する側の信頼関係で成り立っています。
それはもちろん、互いの利益を損ねない関係と言うことです。

製作側は借りた場所に対して責任を持ち、原状回復で返す。
場所を提供する側は、事前に情報を漏らさず撮影に対する安全を提供する。

その関係が重要なのです。

だから、事前にロケ情報が漏れたりして撮影に大きな支障が起これば、信頼は失われ、その場所での撮影は二度とないかもしれません。

だから私はこの事実を書くタイミングをはかっていたのですが、いつしか時を逸してしまい、今に至ったのです。



最後ですが、もしあなたの身近にフィルムコミッションがあって、もしも撮影が行われ、その場に運良く居合わせたら、決して邪魔にならないよう心がけてください。

撮影場所への侵入や、俳優へサインを求めるなど、決してしないようお願いします。

撮影期間中に、その様子をブログに書くなどはもっての外です。

今はネットで、簡単に情報が手に入ります。
情報はあっという間に伝わり、撮影現場がパニックになることも予想されます。
そうなったら、その場所での撮影は二度とないでしょう。


一人がルールを無視すれば、モラルが崩壊するのは簡単なこと。
そうならない為のあなたの行動が、その地域の為になるのです。


撮影から4年近く経ちましたが私はあえて今回、ロケ現場の市町村、具体的な地名等は伏せました。
それはもちろん、先ほど書いたことを守るためです。

その地域と、製作側の良い関係を保ってほしいとの願いからなのです。

実際、その場所は「ALWAYS 続・三丁目の夕日」以降、いくつかの作品のロケが行われました。これは信頼関係の賜物と言えるでしょう。

今回ここに書いた撮影場所に行ってみたいと思われた方、どうかその点をご理解ください。



さて今回はこれでお終いです。
色々と書くことがあって長くなってしまいましたが、これでも書くのを控えた部分がいくつかあります。
たった3週間強の出来事でしたが、それだけ濃い日々だったのです。


あなたの身近でも、このような奇跡が起きますように・・・

それでは、また!

2010年12月17日金曜日

夕日町三丁目を探して その一

前回の記事から日が浅いのですが、今回はどうしても今書きたいことがあるので、お贈りすることとなりました。そして長い文章となる予定ですので、2回に分けてお届けいたします。
「その二」はしばらく開けての投稿となるとは思いますが、それまでの間、この文章を読んで想像をしてください。そして私が感じた空気を味わっていただければ嬉しい限りです。

それでは・・・

先日、このブログを整理していてふと気付いたことがあります。

それは私の好きな作品、山崎貴監督の「ALWAYS 続・三丁目の夕日」に触れていないこと。

実はある理由があって封印していたんです。正確に言うと、ある理由で書くタイミングを失ってしまっていたのですが、今日はその理由をここで明かし、いつもとはちょっと違った切り口で語って行きたいと思います。

みなさまは映画を観て感動し、そのロケ地を探し、行ったことはありますか?
このブログを長く読んでいただいている方はすでにご存じかと思いますが、私は何度かネットで情報を調べ行ったことがあります。
この醍醐味は行った人にしか分かりませんが(そもそも余程好きでないと行きませんが 笑)、そこで味わえるのはあくまで「ここで映画が撮影された」という空気と「シーンを思い返すこと」だけです。その場所に役者はおろか大道具も小道具もありません。あくまでも目に飛び込んできた実際の風景と映画のシーンを、頭の中で混ぜ合わせて想像することだけなんです。
その映画が大好きな人にはそれだけでも十分満足で、よりその場所と映画に愛着がわくのです。

でも、それに満足できなくなったら?

やはり実際の撮影現場を見るに限るでしょう。

しかしそうそう簡単に撮影現場を見つけることはできません。なぜなら撮影が行われるのは通常、映画の情報が製作発表記者会見などで公になる前、しかもほとんどのシーンを東京などの撮影所だけで済ませてしまう場合さえあります。
その場合、私たち一般人は撮影所に入れないので、現場を見ることは実質不可能です。

ただそんな私たちにも僅かなチャンスがあります。

それはロケ撮影が行われる場合です。昔と違いオールロケーション作品と言うのは色々な制約があるようでほとんど見られませんが、それでもイメージに合った現場があればロケが行われることは多いのです。しかもここ10年でフィルムコミッションと言うものが発展し、日本各地の自治体などが映画やテレビ撮影の手助けをすることが増えました。昔と比べ、ロケがしやすい環境になったわけです。

つまり以前よりはロケ現場を知るチャンスが増えたのです。

ただ撮影自体は極秘に行われることが多いので、映画のエンドロールで知ることはできても、事前に知ることはかなり難しいと言えます。
もしも運良く近くでロケが行われ、しかも数日に渡っていれば、情報が入ってくることがあるかもしれません。

これはなかなか確率の低いことですが、それでも全くないことではありません。

あなたの近隣市町村に、ひょっとしたらフィルムコミッションはありませんか?

もしあれば他の地域よりも撮影隊を受け入れる体制が整っているので、確率は高くなります。過去に大作が撮影されれば、実績があるので確率も上がります。
そして行われる撮影が大規模ならば、エキストラを地元から募集することもあるのです。そうなれば、あなたの目や耳に事前に情報が入ってくる可能性も高くなります。

実は「ALWAYS 続・三丁目の夕日」は、そのフィルムコミッションのエキストラ募集で事前にロケ情報を知ることが出来たのです。

いくつかの偶然が重なったとはいえ、これは思ってもいないチャンスでした。

私は以前、レンタルビデオの仕入れで「ジュブナイル」と言う作品と出合い、山崎貴監督の存在を知りました。そして同時に、その映画が私の生まれ故郷とその隣町で撮影されたことも知ったのです。既に劇場公開後1年近くたっていたので、もちろん撮影現場に居合わせることは不可能でした。

しかしこの事をいとこに話すと「撮影見に行ったよ」と言うではありませんか!
これは悔しかったです。またとないチャンスを逃したのですから。そうそう簡単に出くわすことはないので、悔やんでも悔やみきれませんでした。
そしてあろうことに、この失敗をもう一度繰り返してしまったのです。

それは山崎貴監督の2作目。「リターナー」が発売された時のこと。
なんとこの作品も「ジュブナイル」でロケの行われたすぐ近くの場所と、今私の住む町の隣町で、少しながらロケが行われたのです。
事前に知ることはできなくとも、少なくとも映画館で観たかったと後悔しました。
「山崎貴監督の2作目は劇場で観る」そう決めていたのに、この作品が公開された頃私はある理由で映画を観に行くことから遠ざかっていました。それを悔やんだのです。
だから山崎貴監督の3作目が製作に入ったと聞いた時には「絶対映画館で観る」と心に誓い、それを実行しました。そして以後、山崎貴監督作品はすべて映画館で観ています。

その3作目があの有名な「ALWAYS 三丁目の夕日」です。

私はチケットを取り、初日舞台挨拶を観に行きました。あの時の一体感は今でも忘れません。暖かい空気に包まれた劇場でした。

この作品のオープンセットは群馬県にある個人所有の飛行場跡に建設されました。その情報は後から知ったのですが、この場所も探しあて、後に2度行きました。
今現在は別の建物が建ち面影さえありません。その場所を2度と見ることが出来なくなってしまったのです。
ロケ地巡りのだいご味はこんなところにもあります。

さて話は逸れてしまいましたが、その後4作目が「ALWAYS 続・三丁目の夕日」に決まったのを知り待ち遠しい日々が続いたのです。もちろん完成を待って、の期待ですが。

しかし、そんな私に大きな偶然が舞い込んできたのです。
それは2007年の2月の終わり。何気なく覗くようにしていた茨城県のフィルムコミッションのページ。

「ALWAYS 続・三丁目の夕日」のエキストラ募集の文字が飛び込み、しかも場所は私の住む町の隣。
期日は3月12日。撮影内容は「銀座の街」でエキストラは通行者役。

その頃の私は夜勤だったのでエキストラ参加は無理でしたが、せめて撮影現場を見てみたいとの思いを募らせました。
しかしエキストラに参加しない人間に場所を知る手だてはありません。つまり自分の足で探すしかないのです。

それから毎日、夜勤明けにロケ場所探しの日々が続きました。
ヒントになるのは映画の撮影状況を知らせるブログに載った写真のみ。
その写真から得られるヒントは皆無に等しいのです。当然ですよね。撮影現場を分かるように公表してしまったら、撮影に支障が出ますから。
それに必ずしもその写真の現場が隣町とは限りません。これは大きな賭けでした。

しかし私にはやるしかありません。
動かなければ、探さなければ、見つかる可能性はゼロですから・・・

迷わず探すことを決め、すぐに行動を起こしました。

写真で唯一ヒントになるのは特撮用ブルーバックの後ろに移る高圧線。それだけ。
「なんだ、簡単じゃないか」と思った方も多いでしょう。でもそうじゃないんです。私の住む町は関東地方でも有数の臨海工業地帯。そこには当然発電所もあり、そこからあちこちへと給電されているのです。高圧線はそれこそ海のある東以外、あちこちへと張り巡らされているわけです。

つまり沢山のルートをしらみつぶしにあたるしかなかったのです。

夜勤明け、ある程度空が明るくなるのを待って、高圧線巡りの日々が続きました。

その時の私の推測はこうです。
「音や人などで撮影に支障がないよう、森の中にある大きな空き地でロケが行われているのでは?」

これに沿って探し始めました。隣町は南部の平地と、北部の森林地帯とに分かれていたので、主に北部を探すことにしました。
高圧線に近い道路を、それこそしらみつぶしに走り、近くに道がなければ遠回りしてその先へ向かう日々です。
気付けば境を越え、町を出てしまうこともしばしば。ある時などは、森を縦断し、さらに隣の町へ抜けてしまい、湖の畔の公園に出てしまったことも。

数日かけてすべての高圧線を巡ったのですが、一向に見つかる気配がありませんでした。
ロケ日も近いし、諦めるしかない。

そう思ったある日のこと・・・いや3月6日です。忘れもしません。

噂が広がって迷惑をかけてはいけないと人には聞かなかったのですが、思い切って作品名を伏せ、隣町に住む知人に「映画を撮っているらしいんですが噂を聞きませんでした?」と聞いたのです。
撮影に迷惑をかけられないから、聞くのもこの人だけかな・・・とあきらめムードでした。

しかし、しかし、ここで大きな偶然が起きたのです!

知人は「あの場所かなぁ?」と口にしたのです。

「役場の人が、映画の撮影で使えなくなるからよろしくお願いします。って尋ねてきましたよ。」と教えてくれたのです。もちろん撮影前なので作品名は伏せられたままですが、同じ時期に2つの作品が撮影しにくることはあり得ません。間違いありませんでした。

そして場所を聞いて耳を疑ったのです。

なんとそこは森の中ではなく、町のど真ん中。北部ばかり探していた私の推測は見事に外れていたのです。見つかるわけがないはずです。

さっそく翌日行こうと思ったのですがあいにくの雨あがり。その日は諦め、翌日の夜勤明けにその場所へ行きました。

そして見つけたのです。
目の前には雨除けのためか、沢山のビニールに覆われた、横50mはあろうかと思われる巨大なブルーバックスクリーン。
それに大きな足場の上に組まれたデッキのようなセット。

ブログの写真と、目の前の写真がリンクした瞬間でした。

何かが込み上げてくるのが分かりました。もちろん感動以外の何物でもありません。

まだ夜明け間もない寒空の下、ひとりしみじみとその場に立ち尽くすのでした。
後に映画パンフレットとDVD特典の小冊子を見て知るのですが、大きな足場のセットは羽田空港の送迎デッキで、前日に吉岡秀隆さんと小日向文世さん、そして小木茂光さんが撮影に訪れていたのです。

それからその場所へ通う毎日が続きます。
仕事に支障がないよう、そこに居るのは昼までと決め、毎日通い詰めました。

しかし残念なことに撮影に出くわすことはなく、12日を迎えるのでした。

「その二」へつづく・・・

2010年12月14日火曜日

俳優 竹内力について考えてみた

気温が上がったり下がったりの繰り返しで体力的にかなりきつい天候ですが、みなさまはどう過ごされていますか?風邪などひかれてはいないでしょうか?

さて今回は、今までとちょっと趣を変えてみました。これまでは好きな映画を紹介するコラムがほとんどでしたが、今回は一人の俳優にスポットを当て、いろいろと考察し紹介していこうかと思います。


私は常日頃、新聞を読みません。ネットがそれにとってかわったからです。新聞よりも早く、より詳しい情報が手に入るからです。必ずしもそれが正しい情報と限らない場合もありますが、見極める目も身につきつつあります。

そんな私は今日、ちょっと気になる記事があったのでいつもの調子でさらっと読んでいたのです。
しかし読み終えた後、何か違和感を感じたんです。

その記事とは「竹内力 初のコメディー映画主演」

良く読んでみたら竹内力さんではなく、竹野内豊さんだったのですが水川あさみさんとの共演でコメディー映画が製作され来年公開されるというもの。


竹野内豊さんならば初めてのことなのでニュースなのですが、竹内力さんと勘違いしていた私には「コメディー映画」という括りがどうも引っかかったのです。


竹内力さんと言えばミナミの帝王や任侠映画で有名な俳優で、一時はVシネの帝王と呼ばれ、哀川翔さんとともにレンタルビデオ業界を引っ張った根っからの役者です。

レンタルビデオを沢山ご覧になった方なら分かると思うのですが、一般の人が抱く竹内力さんのイメージとは違い、彼は数え切れないほどの作品を経験し様々な役柄に挑戦している「器用な」俳優なのです。

どんな作品があるかと言いますと、例えばナインティーナインが初主演を果たした「岸和田少年愚連隊」シリーズ。彼らの主演はそれだけでしたが、その後沢山の続編が造られました。そのひとつ「カオルちゃん最強伝説」に竹内力さんは主演しました。シリーズ内でも有名な作品です。
本作で彼は、その姿を見ているだけで吹き出してしまいそうな怪演をしています。それは彼の演じる主人公が15歳の中学生と言うかなり無理のある設定のせいもあるのですが、それを何となく納得させてしまう演技力を見せてくれているのです。
その怪演のおかげで当初はシリーズの外伝的な作品だった本作はシリーズ化され2007年までに8作も造られました。

それ以外にも私の好きなシリーズ「全国制覇 テキ屋魂」等も忘れてはいけない作品でしょう。
この作品はネットなどの紹介では、彼に植え付けられたイメージを重視してか「任侠もの」扱いになっていますが、どちらかと言えばテキ屋で生きる男たちの友情を面白おかしく描いた「人情喜劇」の部類に入ります。

余談になりますが、日本各地を渡り歩くテキ屋という商売は祭とは切っても切れない縁。日本人には絶対に必要な存在です。それは世界に誇れる日本映画「男はつらいよ」でも証明されています。どこかに忘れていって言ってしまった日本人の義理人情を、感じさせてくれる存在であるからでしょう。
私はひそかに期待をしていたのですが、この「全国制覇 テキ屋魂」も寅さんのように長く続いてくれれば、と願っていたのです。
残念ながらレンタルビデオブームの終焉とともに、たった2作で終了してしまいました。

つまり俳優竹内力は、一般人の抱く「コメディー映画」のジャンルに含まれる喜劇的な作品をすでに何作も主演・出演されているのです。先ほどの「全国制覇 テキ屋魂」に関して言えばVシネ扱いになっているので、映画ではないと言われる方もいるかもしれませんが、Vシネ全盛期とは時代が違うから当てはまらないと、私は考えます。

それはなぜかと言いますと、Vシネマ(一般化した名称ですが元は東映の造った言葉です)と呼ばれた作品は当初、完全にビデオレンタルのみでしか扱われない作品でした。
しかしビデオレンタルが徐々に衰退し始め製作本数が減るにつれ、いつしか顧客への訴求力のためレンタル直前に全国で数館のみ劇場上映をし「劇場公開作品」の冠をつけた作品も出てくるようになったのです。

あいまいなのはその例だけではありません。シネコンが全国的に普及し増えたスクリーンのおかげで、一昔前ならVシネ扱いであろう作品が、今現在は劇場で上映される作品として造られる機会も増えているのです。

つまり時代が替わると共に、作品を映画かVシネかと区別することに意味がなくなってしまっていたのです。

他にも彼が出演を果たした中で、忘れてはいけない大切な作品があります。
それは「釣りバカ日誌」第19作。この作品で彼は、念願だった故郷を舞台に、国民的シリーズに出演を果たしました。
この作品も喜劇作品の部類に入りますね。

だから、その記事に対して「コメディー映画」と言う括りで表現してほしくなかったな、という感想を持ったのです。(今思えば大きな勘違いなので、どうでもよいことになってしまいますが・・・)

それにVシネの帝王と言う顔を知らない人でも、ここ数年彼が出演したTVなどを見ていれば、かなりコミカルな才能を持った人だと言うことが分かるでしょう。

その代表格が歌手RIKIです。竹内力の弟(誰がどう見ても本人ですが)で、竹中直人さんを彷彿とするはじけっぷりを見せつけていましたね。

そんなコミカルな部分が強調されている昨今ですが、実は彼は他にも才能を持っています。


それはビジネスです。と言っても何か大きな商売や副業をしているという意味ではなく、ビジネス的な部分の才能があると言うことなのです。

彼は自身の設立した事務所「RIKIプロジェクト」に所属しています。いわゆる個人事務所と思われがちですが、本人を含め10人(うち1人はRIKI)の個性派俳優と歌手を擁しているのです。
この事務所では他にも、映画などの企画制作も手掛けています。つまり彼は、所属する役者を自社企画の作品などに出演させることもできる立場にいるのです。他にもファッションブランドも手掛け、ミナミの帝王等ではそのブランドを身につけ出演・販売に結び付け、商売人としての才能も発揮しているのです。

彼は俳優竹内力であると共に、商売人竹内力、プロデューサー竹内力、と幾つもの顔を持っているわけです。
ビジネスで成功している社長たちはTVに頻繁に出演されますが、彼はあまり目立った露出はしていないので、この地位を生み出した幾つもの顔の存在は、意外な一面ですよね。

もちろん、今の地位を築くまでの苦労は沢山あったと思います。
それは彼の出演した作品遍歴を見ると分かるでしょう。

彼は大林宣彦監督の「彼のオートバイ、彼女の島」で主役デビューを果たしました。
その後も劇場公開作品を中心にTVドラマ等でも二枚目俳優としての地位を築きつつあったのですが、折からのレンタルビデオブームに乗って活躍の場をVシネマに移し、やがて「やくざの顔」としての地位を持つ俳優へと変貌していったのです。

私の手元に資料がないので詳しいことはわかりませんが、そういった時代の流れを肌で感じ取って、結果辿りついたのが自身の事務所設立に結びついたのだと思われます。

そんな彼はここ数年、コミカルな一面を見せ、以前はあまり出演しなかったTVにも顔を見せ始めています。


これは何を意味するのでしょうか?


日本はバブルがはじけて以来、アリ地獄から抜け出せずにいます。そして日本人の気質でもある「耐えること」が当たり前になって、まだ不況を抜け出していない事実さえ見失っています。


日本人は知らず知らずのうちに、笑顔を忘れてしまっているのです。

心の底から笑えることに飢えてしまっているのです。


彼は、演じることによって、そんな日本人を応援しようとしているのではないでしょうか?
一見バカバカしく見えさえする歌手RIKIの存在を笑い飛ばして見てしまう、いや、見させてしまう彼の演技力で、日本を救おうとしているのではないでしょうか?

私にはそう思えてなりません。

Vシネマという言葉が過去のものになってしまった今、俳優竹内力は新たな局面に向かおうとしていると私は信じています。それがどんな形かは分かりませんが、今以上に大きな存在で俳優界に居続けるでしょう。あわせて、皆様に「笑い」を届けるだけでなく「勇気」を与えてくれる存在になることも。

そして「人間 竹内力」の魅力を振りまいてくれるでしょう。

きっとこれから、私たちの目に嫌がおうにも留まるほどの活躍を見せてくれるはずです。


さて、勘違いから始まったとはいえ、今回は今までと趣向を変えて一人の役者について考察してみました。
たまにこのような形で俳優を取り上げていこうかと思いますので、どうぞご期待くださいませ。

それでは、また!

(12月15日AM4:00 内容一部修正)

2010年12月4日土曜日

SPACE BATTLESHIP ヤマト(ネタバレ編)

ちょっと時間がかかってしまいましたが、ようやく文章が完成しました。お待ちいただいた皆様に、思いが届くことを願って・・・

さて今回は激しくネタバレしていますので、まだご覧になっていない方は絶対に読まないことをお勧めします。興味本位でちょっとだけ覗いてみようと言う方も止めておくことをお勧めします。
なぜならこの作品を本気で楽しみたいのなら、事前に情報を全く入れなければ、最初から最後まで色々な部分で楽しめるからです。原作である「宇宙戦艦ヤマト」シリーズを観ている人も、全く知らない人も、それぞれに楽しめるツボがあちこちに散りばめられているのです。
ちなみに私は、テレビで放映されたメイキングと、SMAP×SMAPで放映されたオープニング・ヤマトの浮上シーンを観てしまっていたのですが、それでも映画館での浮上シーンでは涙があふれました。すでに観ていたのに、です。とにかく凄い迫力です。
おっと、これ以上語るとポロリと漏らしてしまいそうなので、ここまでにしておきましょう。
では、ネタバレ編のスタートです!













先ほどオープニングと浮上シーンを観た、と書きましたが、この番組は視聴率が高いのでご覧になった方も多いと思うのですが、皆様はいかがでした?
観てしまいましたか?
観ていたのに、数倍楽しめたとは思いませんか?
私にはピンときました。
あえて見せる方法を選んだな、と。これは以前、トムクルーズ主演「ワルキューレ」でアメリカで実際にあった宣伝方法です。私は実際にこの映像をネットで見てから映画館に行ったのですが、それでも十分に面白かったのを記憶しています。

では、なぜ面白く感じたのでしょうか?

テレビはどんなに大画面でも、あくまでもテレビ。本格的な映画館のような音響を持っている人はかなりの少数派。テレビで映した部分だけでは、このシーンの本当の魅力を伝えきれていないんです。
映画は映像と音響のバランスが大切です。その両方が揃ってこそ、魅力が増すわけです。
だから映画館で浮上シーンを観たときは、まるで別物のように感じました。
映画館で観たオープニングの戦闘シーンでは、より緊迫感が増し、浮上シーンでは腹の底に響くほどの地響きが、さも私がそこにいるかのような錯覚に陥らせ、身ぶるいと涙を与えてくれました。

やはりこの作品は、まず映画館で見るべき作品ですね。

よく映画の評判を気にして、面白そうでないからDVDまで待とう、なんてことを考える人がいますが、この作品は食わず嫌いではいけないのです。
面白いかどうかは、あくまで個人の感受性で決まる問題ですので、観終わった後にどう思うかを前もって気にせず、映画館に足を運ぶべき作品だと思うのです。
それは最終的に、次の映画へとつながる商業活動にもなります。

もしあなたの身近に、上記のような考えで見ないという方がいらっしゃいましたら「絶対映画館に行くべき」と勧めてください。よろしくお願いします。
そして見終えたその人と、熱く語ってください。

オープニングは火星域での艦隊戦でしたが、私はその映像にいきなり驚かされました。
日本映画では、よく技術的な部分が「ハリウッドに近づいた」とか「ハリウッドに迫る」とか表現されることがありますが、このオープニングの映像は「ハリウッドそのもの」と言っても過言のないレベルでしたよね。
細部まで緻密に描きこまれたガミラス艦は映画館の大画面で観ても全く隙がありませんでした。しかもこのようなCGの部分は、ほぼ全編にわたって使われているので、ここまで作り上げる労力は並大抵のものではないはずです。
実写部分の撮影終了から完成までは、わずか10カ月。たったそれだけの期間でこの膨大なVFX(分かりやすく言うと視覚効果)を処理したわけです。

尊敬に値する仕事を見事に終えたのは、山崎貴監督が所属する「白組」です。

その会社名を知らなくても「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズで昭和の風景を再現したと言えばお分かりでしょうか?そうです、あの昭和の街と東京タワーを作った人たちです。

CGと実写の合成はさじ加減が難しいようで、ちょっとでも不自然なCGだと素人の私たちでも違和感を感じ、映画そのものの質を疑ってしまうのです。
しかしこの「白組」の造ったヤマト全編のCGとVFXは、どこをとっても隙がありませんでした。
それだけではありません。
明らかにCGでなければできないと分かっているシーンは、誰でもCGと気付くと思います。しかし本作では、CGじゃないと思っていたシーンが実は・・・という部分が結構多かったのにも驚かされました。その仕事の素晴らしさを感じさせてくれたのです。

皆様は、ガミラス兵が大挙して押し寄せてくるシーンで装甲車が走っていたのを覚えていますか?

あの装甲車、実は人の乗っている荷台部分だけが実写で、他はすべてCGなんです。

一昔前の映画では、張りぼてでも実物を作ってしまうのが当たり前だったので、このシーンはかなり驚かされました。しかも何の違和感も感じさせずに、見せてしまうなんて。
でもこの方法、考えてみると合理的なんですよね。
実物とCG、どちらの方が予算が少なく済むか?と考えた上で、選択したのでしょう。限られた予算を効率よく、無駄なく使う、日本映画界が抱えるそんな苦労が垣間見える部分です。

パンフレットを読んでいると、他にも面白いエピソードが書かれています。

戦闘デッキは実は○○(たぶん私はそこに行ったことがあります)だったとか、ヤマトが建造中のドックが実は○○だったとか、書きたいのは山々ですが、これは直接読んでもらう方が良いですね。
インタビューや製作裏話が満載なパンフレットなので、ぜひ読み潰す用と保存用に2冊お買い求めください(笑)



デジタルをデジタルと感じさせず、アナログをアナログと感じさせない。
理想的な言葉ですが、この映画ではまさにそれが再現されたと言えます。

デジタルと言えば、この映画ではそれに頼らなければ表現できなかったシーンがいくつもあります。
たとえばコスモタイガーやコスモゼロなどの戦闘機。これも一昔前なら、一機丸ごと造ってしまうのですが、これもコクピット以外はCGだったのです。
しかし臨場感を出す工夫は忘れていません。
メイキングでその秘密が明かされていますが、なんとそのコクピットは動くんです。だから左右へロールする時の役者の演技は、本当の反応も交じっているので演技の枠を超えた臨場感が生まれるのです。

余談ですが、私はこのコクピットを見て思わずうなってしまいました。

実は山崎監督の作品にこのシステムが登場したのは、初めてじゃないんです。
山崎監督の過去作品にそんなものを使うシーンってあったっけ?と思ったあなた、大切なシーンを忘れていますよ!

それは「ALWAYS 続・三丁目の夕日」のオープニング、ゴジラの登場した場面です。

この映画の象徴ともいえるミゼットが、まるでマンガのように飛んだり跳ねたりしたのを覚えていませんか?
このシーン、本物のミゼットのボディーを例のシステムの上に載せ、ガッチャンガッチャンと動かして撮影しているのです。この装置はメイキングで観られますので、興味を持ったらぜひ「ALWAYS 続・三丁目の夕日」豪華版DVDをご覧ください。その場合は、レンタルではないので買うこととなりますが・・・

デジタルと言えば、デスラーもその一つです。

意識の集合体のようなガミラスが人間の前に現れる方法として、電波の揺れのような波を伴った液状の物質として現れます。
どのような形でデスラーが登場するか?と楽しみにしていたのですが、これは良い意味で裏切られましたね。まったく「あり」だと思います。

まさにタイムリーな話題ですが、NASAの発表で生命体の構成に関して今までの常識が通用しない発見がありました。作品内のガミラスの設定が、現実にもありうるかもしれないと言うことが、偶然にも証明されてしまったのです。

これにはちょっと驚きました。

そしてこれは絶対に語らなければならない、というものがあの「アナライザー」の存在。
原作を知っている自分にとって声が同じなのは嬉しかったのですが、ただのAIとしてしか登場しないアナライザーはちょっと寂しかったのです。

しかし、しかし、しかし・・・

コスモゼロに搭載されると、まるでスターウォーズのXウイングに積載されたR2-D2のように(このあたりはスターウォーズが大好きな山崎監督らしいですね)おなじみの赤い頭が!しかもそれだけではありません。

ガミラスに潜入した古代たちを守るために、なんとアナライザーが巨大ロボットになるではないですか!これには思わずガッツポーズしてしまいました。
まさに山崎監督らしい仕掛けです。

ご覧になっていない方が多いかと思いますが、山崎監督の初監督作品「ジュブナイル」ではテトラという小さなロボットが登場します。物語が進むにつれ、このテトラは主人公の少年の相棒のような存在になります。
ヤマトでの古代とアナライザーの関係が、まさにこの関係と同じなんです。これに関してはもう少し踏み込んで書きたいのですが、「ジュブナイル」をご覧になっていない方のためにさし控えておこうと思います。私の感動のツボは、ここに書かなかった部分にありますので・・・

それから戦うアナライザーを見て改めて感じたことがあります。
それは、山崎監督の作品に共通するテーマです。
山崎監督作品は、すべてがバディ(相棒)ムービーであること。相棒との心の触れ合いや友情が、常に中心にあるということです。
そう考えたら、次の映画がどのような形で相棒を見せてくれるのか、ますます楽しみになってきました。きっと近い将来(個人的な勘ですが来年末かな?)、形になって私たちの前に現れてくれるでしょう。

山崎監督は「スターウォーズ」と「未知との遭遇」に衝撃を受けてこの世界を目指すことになったのだそうです。

そんな山崎監督の愛が、この映画の中には登場します。

先ほどのアナライザーもそうですが、他にもいくつかあります。

コスモタイガーやコスモゼロのデザインやドッグファイトシーン、そして艦橋内や廊下の武骨さはきっとテレビシリーズ「ギャラクティカ」へのオマージュでしょう。

ガミラスとイスカンダルの意識の集合体という考えは、おそらくテレビシリーズ「スタートレック ネクストジェネレーション」のボーグやQの存在が大きかったと思います。

それからガミラスへ突入するために自由落下するシーンでは、アメリカに負けてないぞと言わんばかりの迫力を見せてくれましたが、これに関しては「スタートレック」2009年版映画をかなり意識したのではないでしょうか?
確かにこのシーンは「スタートレック」と比べても全く遜色がありませんでした。最高の出来だと思います。そして監督のドヤ顔が見えた気がしました(笑)

それぞれのシーンを「パクリじゃない?」と思う人がいるかもしれませんが、そうじゃないです。以上のシーンの数々は、それぞれの作品を本当に愛しているからこそ生まれたオマージュなんです。
気になった方は、ぜひ上記の作品をご覧になってください。どの作品も一味違う面白さのあるSFなので、見て損はないと思います。

そんな愛情あふれるシーンの数々ですが、この「SPACE BATTLESHIP ヤマト」では作品全体がその愛をどう感じさせてくれるか?が映画が成功するかどうかの一つの大きな壁になっています。

そう原作であるオリジナルの「宇宙戦艦ヤマト」に設定やストーリーがどれだけ近付けるか、ということです。

愛があればこそ、なるべく忠実に造りたくなるのは当然です。でもそれではオリジナルにはなりません。しかも36年前の設定ですから、今の常識ではかなり不自然になる部分も当然あるでしょう。
でも全く違う設定ではしらけてしまいます。
しかしこの映画では、その辺りのバランスを絶妙なサジ加減で実現しています。

まず先ほども書いたガミラスの設定。オリジナルでの、隣り合った星に住む種族の容姿がなぜかまるで違うと言う違和感を解消していると思います。

それからいくつも登場する「宇宙戦艦ヤマト」各シリーズの名場面や、感動のセリフなど、うまく取り入れていますよね。私がツボだったのは、地表で波動砲を発射し安否不明だったヤマトが、爆煙の切れ間から浮上するシーン。

うぁ~やったよ、実写で!と叫びたくなりましたね、ここは。

他にも最後のガミラス戦でヤマトの波動砲を封じたミサイルは、回転こそしないもののドリルミサイル、まさにそのもの。ここで使ったか!と感動しました。

それだけではありません。この作品では、原作の声優にも敬意を払っています。
アナライザーの声の緒方賢一さん、デスラーの伊武雅刀さん、オリジナルではスターシャやテレサの声を担当された上田みゆきさんはまさにスターシャと言えるイスカンダル役、などなど。
すでに亡くなってしまった方がいらっしゃるオリジナルなだけに、これはかなり嬉しい配役と言えますね。

そうそう、ナレーションのささきいさおさんもそうです。誰もが知る有名な主題歌を歌っていたので、この配役も大きなサプライズでした。

愛情は、そのような設定や声優だけではありません。セリフにも溢れています。

私は沖田館長の「バカめ」には身震いしました。
映画の情報が錯綜している段階で沖田館長を西田敏行さんが演じるというデマ(これはこれで容姿がそっくりなので観てみたい気がします)が流れましたが、このセリフに関しては山崎努さんだからこそ表現できたと言っていいと思います。

そう、役者と言えば、キャスティングも素晴らしいですよね。原作に近いイメージで、かつ有名な役者をよくここまで集めたな、と。
なかでも特筆すべきは、真田を演じる柳葉敏郎さんと、徳川機関長を演じる西田敏行さん。頭が禿げていない西田さんは容姿こそだいぶ違いますが、その存在感は徳川機関長そのもの。そして柳葉さん演じる真田に関しては、もう完璧としか言いようがありません。しかも柳葉さんは、この映画のオファーを受けた時、自分の役柄を当てたのだそうです。まさに運命だった、と言えるエピソードですね。

他にも佐渡酒蔵改め佐渡先生を演じた高島礼子さん。最初にそのキャスティングを聞いた時にはかなり不安を覚えたのですが、実際にスクリーンで見たら、これはこれでまたいい味を出しているんですよ。ちゃんと酒瓶と猫を抱えているし(笑)

それから、島を演じた緒方直人さん、森雪の黒木メイサさん、古代守役の堤真一さんや、藤堂平九朗役の橋爪功さんなどなど、かなり多くのキャスティングが絶妙でした。

皆さんはどう思われましたか?
私にはかなり満足なキャスティングだったと思います。

そして忘れてはいけない主人公、古代進。
演じるは老若男女知らない人がいないスーパースター、木村拓哉さん。
映画公開前、彼が演じることに不満を抱くファンが多かったのですが、映画を見た後には納得するファンが続出したそうです。それも納得ですね。
私に言わせれば、たぶんこの映画は木村拓哉さんいなくては成立しなかったでしょう。その演技、容姿、感じさせる佇まい、すべてがまさに古代進でした。

登場人物の多い映画では、時間的な制約でそれぞれの個性を発揮できないことが多いのですが、この映画では各役者の個性が、それを上回る個性で木村拓哉さんが演じたことによって、見事にひきたったのではないかと思います。

それほどまでに、木村拓哉さんの存在が大きかったと言えます。

そして、これを語らずには終われないのが、音楽の存在です。

この映画で音楽を担当されたのは佐藤直紀さん。山崎監督の「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「BALLAD 名もなき恋のうた」を担当されていますが、最も話題になったのはあの「龍馬伝」ではないでしょうか。

いまや日本を代表する作曲家です。

そんな作曲家にも、大きな苦悩があったと思われるのが、テーマ曲の存在です。
それは、原作を見ている人なら誰もが口ずさめるテーマ曲。
あまりに有名過ぎて、無視できない存在。この曲でなければヤマトではない、と言われてしまうほどに大きい。
しかしやはり、さまざまな映画の音楽を手掛けているだけあって、見事に解決していました。
誰もが知るそのテーマ曲と、原作の名場面で使われたスコアをうまく取り入れた音楽が、随所に散りばめられているのです。

音楽だけ聞いても損はない、それほど素晴らしい出来栄えです。

さて、先ほど記した原作に似た役者の存在と同じくらい重要だったのが、このテーマ曲の作曲家の存在です。

私はヤマトの浮上シーンでそのテーマ曲が聴け、嬉しく思い、同時にそのテーマ曲を書かれた宮川泰さんの存在の大きさを、改めて知りました。
古代進を演じた富山敬さんと同じく、すでにこの世にいらっしゃらないのが残念でなりません。もし生きていたら、この映画を見てどう感じたのか知りたいと思ったのは、私だけではないと思います。

原作から36年という月日。この二人の死だけでも、どれだけ長かったのかと感じてしまいます。
しかし36年もたったからこそ実現できた企画だったのも確かです。
あの壮大な世界観は、10年前はおろか、数年前でも表現できなかったでしょう。
だから、まさに、造られるべくして造られた映画、なのだと思います。

さてかなり熱く語ってしまいましたが、ここから先は私の個人的な欲望を書き記してみたいと思います。お読みになった皆様がどう感じるかはわかりませんが、自分に置き換えて考えてみると、案外楽しいかもしれませんよ。

それは自分ならこう描く、と言うことです。素人の私ですから実現は絶対にあり得ないので、せめてここだけの発言としてお許しくださいませ(笑)

私が一番感じたのは、映画がかなり短く感じたこと。実際は2時間18分もあるのですが、勢いよく描いた展開が時間を全く感じさせませんでした。しかしそれゆえに感じる物足りなさもあるわけで。
原作の物量を考えると3時間くらいが丁度良いのではないかと感じました。
もっとも3時間となると、上映する側からすれば一日の上映回数が減り収益にも影響するので、無理な話なのでしょう。
でもこれだけ好調な滑り出しがそのまま続いて記録を打ち立てれば、追加撮影して完全版・・・なんてこともあり得るかな?などと思ったりしています。そのときはもちろん、映画館に足を運びますよ!
おっと、これは妄想でした。いけないいけない。

他には、見せ方で感じたこともあります。

最後にヤマトは地球上空で自爆しますが、このシーンでは映像が固定されていましたよね。私は爆発後にどんどん引いた絵になり、最後は地球全体が写されたら最高!と思いました。
「これが古代の守った地球なんだよ」って感じられる気がして。

さて色々と書き連ねてまいりましたが、最後にこの映画を見終えて感じたことをここに記し、終わりにしたいと思います。

それは「機動戦士ガンダム」の実写が観てみたくなったと言うこと。以前から見てみたいとは思っていたのですが、今回は本気でそう感じました。

実写化までは色々な問題があるでしょうが、予算さえ何とかなれば実現できる、と感じずにはいられなかったのです。

その際には私の大好きな作品を撮り続けるお二人の監督、本広克行さんと山崎貴さん、そして原作者でもある富野由悠季さんが手を組んでくれたら嬉しいな、と・・・それぞれドラマパートの監督、VFXの監督、そして総監督と。あくまでも妄想なんですけど、なぜだか実現しそうな気がしてならないのです。
どうでしょうね?近い将来起こってくれたら嬉しいのですが・・・

そう言えばこれだけ物量のある仕事を指揮された山崎貴監督、次回作は何なのでしょうね?
私はひそかに「あれ」を期待しています。
「あれ」って何?ですかって?それは言わないでおきましょう。私の勘は案外鋭いので(笑)

今回は、大変長々とお付き合いくださいましてありがとうございました。

久しぶりだからどこまで書けるかと心配していたのですが、映画同様熱くなってしまい、気付けばこんなに長く書いてしまいました。

私の文章を読んで、そこは違うとか、俺ならこうだ、とか思うところも沢山あるのではないかと思います。もしよろしければ、短文でもコメントいただけると幸いです。

それでは、また!




2010年日本映画 138分

監督・VFX      山崎貴
脚本         佐藤嗣麻子
編集         宮島竜治
撮影         柴崎幸三
美術         上條安里
VFXディレクター  渋谷紀世子
音響効果      柴崎憲治
キャスティング   北田由利子
助監督        山本透
製作担当      金子堅太郎
VFXプロダクション 白組
企画プロダクション セディックインターナショナル
制作プロダクション ROBOT
エンディング曲   スティーヴン・タイラー -「LOVE LIVES」
音楽         佐藤直紀
出演         木村拓哉 黒木メイサ 柳葉敏郎 緒方直人 堤真一 高島礼子 橋爪功 西田敏行 池内博之 マイコ 矢柴俊博 波岡一喜 斎藤工 三浦貴大 浅利陽介 山崎努 他

2010年12月1日水曜日

SPACE BATTLESHIP ヤマト(紹介編)

皆様、大変ご無沙汰してしまいました。私は色々とあって、見ることは多くてもネットに書き込むことはほとんどなくこの1年を過ごしていました。
皆様にとってこの2010年はいかがでしたでしょうか?
私には「どん底」の1年だったかもしれません。いまだ見えない出口を探し、日々苦悩しています。行動する勇気さえ失いつつある最近でしたが、この作品に出会って、変われる気がしてきました。もう少し頑張ってみよう、そう思わせてくれる作品です。

今回お贈りする作品名は「SPACE BATTLESHIP ヤマト」

その名が示す通り、日本のアニメ界で輝かし栄光を持つあの作品「宇宙戦艦ヤマト」のリメイクであり、そして初の実写版です。
これだけ偉大な原作を実写化する道のりには相当な苦労があったでしょう。
実際、苦労の末に製作が決まってからも、監督予定者の変更や決まっていたキャストの一部変更など、ここ数年話題にも事欠きませんでした。
実写版は、まさに原作が辿った道のように困難な道のりを克服して生まれた作品と言えます。
36年前TV放送された、「SPACE BATTLESHIP ヤマト」の原作である「宇宙戦艦ヤマト」は放映当時画期的と言える作品でした。それは子供をターゲットにしていなかったからです。舞台が宇宙空間という設定、宇宙戦艦などの細かなディテール、似て非なる異星人とその星の世界観、そして当時失われつつあった戦争の記憶と記録、その全てを兼ね備えた、まさに大人に向けて造られたと言える内容が、アニメに新しい風を吹き込んだのです。
しかし1974年当時、まだ「大人の鑑賞に耐えうるアニメ」と言うジャンルは確立されておらず、人気絶頂の裏番組に苦しめられ、あの「機動戦士ガンダム」同様に当初の予定を縮めての放映終了を迎えることとなりました。先を行く者の試練とでもいえるでしょうか。
そんな「宇宙戦艦ヤマト」が脚光を浴びたのは、再放送からでした。
その後TV版を再編集し映画化、大ヒットとなるのですが、当時小学生の私でさえ再放送にくぎ付けで、母親に頼んで映画館に連れて行ってもらった程、と言えば、どれだけ大きなブームとなったのか分っていただけるでしょうか?
実写版で主役を演じた木村拓哉さんも、そんな私たちと同様に映画館へ行ったことをインタビュー等で話されています。彼は「宇宙戦艦ヤマト」が初めて映画館で観た映画だそうで、オファーを受けた時の気分はまさに「夢」のようだったでしょうね。

さて原作の「宇宙戦艦ヤマト」ですが、映画の大ヒットによりTV版の続編、TVスペシャル版、そしてオリジナル映画と、約10年にわたってアニメ界をけん引してゆきました。
やがて少し遅れて一大ブームとなった「機動戦士ガンダム」にバトンを渡すかのように、最前線から姿を消すこととなります。

その後の「宇宙戦艦ヤマト」が辿った道は、イスカンダルへ向かうTVシリーズのヤマトのように、苦難の連続でした。
折からのレンタルビデオブームに乗ってオリジナルビデオでの復活を試みるも、アニメを制作していた会社の倒産により未完のまま終了。他にも生みの親であるプロデューサーが起こした不祥事や、「宇宙戦艦ヤマト」の商標や著作に関する裁判の連続など、浮上しようとしてもがいている状態が長く続きました。

しかしヤマトは、戦艦大和が地球の危機に瀕し宇宙戦艦ヤマトとなって復活したように、再び最前線へと戻ってきたのです。

それは今からちょうど1年前、完結編として一度終了した作品のその後を描く劇場版「宇宙戦艦ヤマト 復活編」として帰ってきました。
オリジナルで古代進の声優だった富山敬さんが亡くなってすでに4年。古代進は山寺幸一さんへと引き継がれ、登場人物の多くも世代交代し、その息子たちに引き継がれました。この設定だけを見ても、どれだけ時が過ぎたのか分かるでしょう。
残念ながら映画は興行的に成功したとは言えませんでしたが、私たちと同世代には大きな話題となって歓迎されたのです。

その「宇宙戦艦ヤマト 復活編」が製作されているころ、極秘裏に実写版プロジェクトが進行していました。業界人ではない私にも時々噂レベルでその存在が漏れ聞こえることはありましたが、噂では大きなニュースになることもなく、原作のファンを含め多くの人々には知られていませんでした。
しかし2009年、ついにその製作が発表され、私たちの目にとまることとなるのです。

近年、日本のCGやVFXのレベルは格段に進歩しています。存在するはずのない世界を違和感なく描き、観客の心をそこへ導くほどに成長しています。しかし海外の作品のように潤沢な予算があるとは言えない状況なのも確かです。
その構図は、日本が敗戦から復活し世界に通じる国になった経緯に似ていると言えるかもしれません。工夫と努力が結果を生む、そんな表現が似合うでしょうか。

壮大な宇宙や艦隊戦を映像化するため莫大な制作費がかかると予想された「宇宙戦艦ヤマト」の実写は、近年の日本映画界の盛況が後押ししたと言っても過言ではなありません。そしてテレビ局が製作をし、他の業種を巻き込む形式が完成された今日だから、可能になったとも言えるでしょう。
この作品も近年の大作映画と同様にテレビ局がその中心の役割を担っています。
テレビ局が製作に関わるのが嫌だ、とか、そのシステムが映画をダメにしているという映画ファンが多数いるのも事実ですが、アメリカのように潤沢な予算が見込めない日本では必須のシステムです。この方法がなくして、日本の映画界は活性化しない、と断言できます。
それにテレビ局が参加するメリットは他にもあります。
どれだけ素晴らしい出来の映画でも、宣伝が伴わなければ劇場でのヒットはあり得ません。シネコンのスクリーンを上回るペースで作られる数多くの映画の中では、そのような体制だと日本各地のスクリーンにかかることは事実上不可能で、最終的には資金の回収ができず、映画製作者の意欲をそぐ結果に終わってしまいます。

そう、テレビ局が関わることで、効果的に宣伝に力を入れることが出来るのです。

以前、大ヒットした映画「フラガール」はテレビ局が関わらず資金を得、製作するという新たな方法で成功しました。しかし残念なことにその後のヒットに恵まれず、あれだけの成功を生みだした製作会社の解散へと至ってしまったのでした。

少し話が逸れてしまいましたが、この「SPACE BATTLESHIP ヤマト」のようにそれまでの映画とはケタの違うスケールの作品では、今のこのご時世、テレビ局の後押しがなければ日本では造ることが不可能なのです。

そんな方式にもデメリットはあります。

それは製作に加わったテレビ局以外では、極端に露出が少なくなるということです。今、民法各局ではそれぞれが独自に映画製作に乗り出しています。つまり他局はライバルとして存在するのです。
しかし今回は、作品に対する期待の大きさの表れでしょうか、通常は関わったテレビ局以外ではあまり扱われないことがなかった宣伝活動が、他局を巻き込む勢いで進行しています。
実際、製作のTBSではない局でオープニングをノーカット放映したり、映画のキャストが集結した番組が他局にもありました。もっともこの宣伝に関してはあるキャストの所属事務所の力が大きかったと言った方がいいかもしれませんね。

テレビでの膨大な宣伝活動より少し前に行われた完成披露試写会は、10万人もの応募があったと聞きます。作品に対する期待の大きさがうかがえるエピソードです。
しかし残念なことに、試写が行われるまでは実写に対してのネガティブな記事が多く、映画もヒットしないという意見が多かったのです。
おそらく過去に行われた実写化作品の失敗や、「なんで今さら」と言う考えが多かったのでしょう。すべてがそうとは言えませんが、実際、元ネタとなる作品が古ければ古いほど、海外でも日本でもリメイク作品は当たらない傾向にあると私は感じています。
リメイクに対する不安要素は容易に想像がつきます。原作である「宇宙戦艦ヤマト」からすでに36年も経っています。当時熱狂したファンたちはすでに40~50歳代。しかもここ10年の停滞が災いし、それ以降の年代にはほとんど知られていません。
でも試写会で実写版を観た人々の声は、そんな不安を打ち消すものでした。
「宇宙戦艦ヤマト」を知らなくても楽しめ、知っている人にも喜んでもらえる、そんな作品が完成したのです。

その作品を作り上げた監督の名は山崎貴。

名前を聞いても知らない方が多いと思いますが、「ジュブナイル」で劇場映画初監督、その後「リターナー」を経て、「ALWAYS 三丁目の夕日」とその続編を監督した、と言えばお分かりいただけるでしょう。
VFXを武器に、泣ける脚本で観客を虜にする監督です。当初の2作品はオリジナルの物語でしたが、「ALWAYS 三丁目の夕日」以降は漫画やアニメの実写化が続いています。今回の監督起用は、そんな実績が呼び込んだ結果なのでしょう。前作の「BALLAD 名もなき恋のうた」は、タイトルだけではピンときませんが、これもアニメが原作となります。日本では知らない人がいないほど有名なアニメです。その原作が何か・・・知らない方はぜひ調べてみてください。
ちょっと驚くかもしれませんよ。

監督曰く、「SPACE BATTLESHIP ヤマト」は「駄目かもしれないけど頑張ると言う気持ちを感じてほしい」つまり、あきらめない勇気を描いた作品とのこと。バブル崩壊から抜け出せない今の日本に必要な、大切な気持ちをあなたにも感じさせてくれるかもしれません。私はこの作品から勇気をもらいました。

さて他にもこの実写版には多くの有名な俳優が関わっていますが、それに関してはネタバレ編の方で紹介したいと思います。
ネタバレ編では激しくネタバレをし、思うことを語ってゆきたいと考えていますので、ご覧になった方は期待してお待ちくださいね。

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」は本日12月1日、ついに公開されました。「映画の日」に公開となりかなりの混雑が予想されますが、その混雑はまだまだ続きそうな予感がします。
これだけの製作陣とキャストに恵まれたこの映画。もしかしたら大きな記録を打ち立てるかもしれません。

もし映画はDVDだけでいいやと思う方がいたら、ぜひ本作は映画館で観ることをお勧めします。なぜなら「体感する」と言うことが、この映画の本当の良さを実感する一つの方法と感じたからです。

以前私が体感する映画と感じたのは、あの「タイタニック」です。

恋愛映画と思われがちですが、あの映画の本当の良さは同じスクリーンを見つめ同じ音響に包まれ、沈没を体感し、映画の観客がタイタニック号乗客の一部となり、それぞれの感情が涙や嗚咽となり、他の観客の耳に入る。そんな一体感で「体感する」ことにあるのです。
残念ながら今、「タイタニック」は映画館で観ることはできません。そう、それが味わえるのは劇場公開中だけだからなのです。
「SPACE BATTLESHIP ヤマト」がどれだけの期間映画館で上映されるかはわかりませんが、体感するからこそ味わえる興奮や感動は、これを逃すと味わえません。だからぜひ、騙されたと思って劇場に足を運んでみてください。
きっとあなたも乗組員と一緒に宇宙へ飛び出した気持ちになることと思います。
私が観た回では、「タイタニック」の時と同じく、終盤のとあるシーンで起こる静寂の中、「ある」音が聞こえ、他の観客と一体感を感じることができました。

劇場へ足を運び、もしこの映画を気に入っていただけたら、こちらにコメントを頂けると幸いです。
そしてあなたが、私と同じように多くの感動を味わえることを願っています。

続けてネタバレ編をお贈りしたいと思うのですが、どうやら久々の文章作成には時間がかかりそうです。この文章も下書きを含めて数時間かかっています。なので、今しばらくお待ちください。
あれもこれも書きたいと、沢山の思考を巡らせている最中ですので・・・

それでは、また!

2009年9月29日火曜日

秋桜〜コスモス〜(情報編)

昨晩(正確には今日未明)、かなり久しぶりに「秋桜~コスモス~」が日本テレビで放映されました。

深夜にも関わらず、相当数(放送時間中で400近く)のアクセスがこちらのホームページにあり、驚いている次第です。

そこで急遽、情報の少ないこの作品について、幾つか記して行こうかと思います。

まずは録画し忘れて、でもこの作品を欲しいと思った方の為に、販売についてです。

残念ながら国内ではビデオのみの流通です。今日現在、発売元ではまだ僅かながら在庫を持っているようですので、こちらをご覧下さい。


http://www.vap-shop.jp/shop/ProductDetail.do?pid=VPVT-64439(VAP通販サイト)


それから、すずきじゅんいち監督が現在仕事の拠点として活躍されているアメリカではDVDが発売されています。ただ残念ながらビデオテープを元にDVD化したようで、画質はビデオ版並み、かつ英語字幕が表示されたままになります。あまりお薦め出来ませんが、日本国内で発売されていない現状を考えると長期保存にはこちらが適しているかと思われます。


http://www.amazon.com/Remembering-Cosmos-Flower-Mari-Natsuki/dp/1892649438/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=dvd&qid=1254168266&sr=1-1(AMAZONアメリカサイト)


そしてこの作品を造るにあたって主導的な役割を果たした「もとみや青年会議所」のホームページはこちらです。


http://www.motomiya-jc.jp/


今回、放送をリアルタイムで観ていたのですが、公開されて12年経った今でも、いつも同じ場面で涙します。改めてこの映画の凄さを感じている次第です。


この作品についての私の感想等は、以下のリンク先をご覧下さい。


秋桜~コスモス~ 紹介編

秋桜~コスモス~ ネタバレ編


さて余談になりますが、この映画にはある有名人が出演しています。

その方は役者としても活躍されていますが、どちらかと言うとお笑いにシフトを置いているようです。

あえて名前は記しませんが、どうしても気になると言う方はこちらをご覧下さいませ。

きっとビックリすると思いますよ。



映画データ


1997年日本映画 103分


企画   社団法人もとみや青年会議所

製作   映画「秋桜」製作委員会

     フィルムヴォイス

     日本テレビ放送網

     もとみや青年会議所

     オフォス・マインド

     フォーラム運営委員会

     バップ

監督   すずきじゅんいち

原作   すずきじゅんいち

脚本   すずきじゅんいち

     小杉哲大

撮影監督 田中一成

撮影   奈良一彦

照明   安河内央之

録音   久保田幸雄

美術   稲垣尚夫

音楽   佐村河内守

編集   掛須秀一

助監督  永岡久明

医事監修 山口剛

出演   小田茜 松下恵 夏木マリ 宍戸開 石井愃一 藤田敏八 川内民夫 榊原るみ 宍戸錠 山岡久乃 他

2009年7月5日日曜日

富士山頂

日本で一番愛され、日本で一番有名な俳優は?と聴かれたら、あなたは誰の名前を挙げますか?

おそらく一番多い答えが「石原裕次郎」でしょう。
リアルタイムで彼の映画を観ていない私でさえそう答えるほどに偉大で、日本の映画史と日本人の生き様に多大な影響を与えた存在と言っても過言ではないはずです。
昨日7月4日と、今日7月5日、テレビ朝日系列では石原裕次郎さんの23回忌法要と言うことで、大々的に特集が組まれました。
そしてその一環として、これまでビデオ化もDVD化もされていない幻の作品が放映されました。
(地上波初放送と銘打っていましたが、後に初ではないことが判明したようでテレビ朝日の特集ページには訂正が載っていました)

その作品の名は「富士山頂」

それまでの映画界の常識を打ち破り、撮りたい映画を撮るため造られたと言える「黒部の太陽」。
大ヒットしたその作品に次いで造られた作品です。
私はこの作品が公開された当時、まだ幼かったので作品のことは全く知りませんでした。
正直に言うと、この作品の存在を知ったのもつい最近のことです。
夕べの特集で触れられていましたが「黒部の太陽」に次いで、この作品も日本国内で年間の1位をとった作品なのだとか。
ではなぜ、それほどまでに有名な作品を、私は知らなかったのでしょう?
それは、おそらく私だけではないと思います。
なぜなら、私たち以降の世代は「石原裕次郎」と言えばTVでしか見ていないからなのです。
「太陽にほえろ」や「大都会」「西武警察」などのイメージしかないのです。
以前「甦える大地」をお贈りした際に触れませんでしたが、地元で撮影された作品にも関わらず、その存在は私が20歳を超えるまで知りませんでした。
なぜなら、その作品を観る機会が全く無かったからなのです。私よりも若干年上の住民は公開当時とそれ以降、観る機会があったようなのですが、残念ながらビデオ化されていない為、私たち以降の世代にとっては地元であるにも関わらず幻の作品だったのです。
幸いなことに、私が「甦える大地」を取り上げた後、かしま青年会議所の有志により一昨年の10月14日に上映会が実施されました。
残念ながら私は行けませんでしたが、撮影を担当された金宇満司さんや主人公のモデルとなった国会議員の野呂田芳成先生の貴重な講演も交え、遠方から石原裕次郎ファンが駆けつけるほど盛況だったと聞きました。
こうして観る機会が与えられるだけでも、私たち地元は、実は恵まれた環境なのかも知れません。
それほどまでに、映画俳優「石原裕次郎」の後期作品は幻なのです。

さてご覧になっていない方の為に、簡単にあらすじを紹介したいと思います。

三菱電機社員の梅原(石原裕次郎)は上司の命令で、あるプロジェクトに携わろうとしていた。
それは日本一過酷な環境の富士山頂に、日本全土をカバーする気象レーダーを設置すること。
その計画を推し進めていたのは気象庁で働く葛木(芦田伸介)。主計局の役人を何とか説得し、予算を取付けるがそこには大きな問題が経ちはだかっていた。
まず莫大な量の資材をいかにして運ぶかと言うこと。馬と人手での運搬には限界がある。登山道の問題で自動車での運搬は不可能。
次に問題なのは、建設に適した気象条件が年に2ヶ月も無いこと。冬場はもちろん無理だが、雪が無くならなければ建設は出来ない。しかも山に慣れない人間が登ればたちまち高山病に襲われ、その苦しみは計り知れない。人間の忍耐も試される場所なのだ。
そして一番の問題は期限が区切られていると言うことだった。
その期限は2年。不可能に近いと言っても過言ではない、悪条件の数々。
それでも梅原は諦めなかった。
まずは建設に適した場所であるかどうかを調べる為の、地質調査の為の登山。
大成建設社員伊石(山崎努)や、それまで馬での荷物運搬を生業としていた朝吉(勝新太郎)を巻き込み、日本史に残る大仕事が、今まさに始まろうとしていた・・・

さてご覧になった皆様、いかがでしたか?
そのスケールの大きさは、例えようが無いほど素晴らしかったですよね。
豪華な顔ぶれもさることながら、石原裕次郎さんを始め、既に亡くなられた俳優の多さに時の流れを感じずにはいられませんでした。
まだ公害の影響が少ない青く透き通る美しい空や、まだ開発がされていない富士山麓の映像も素晴らしいですが、音楽も忘れてはなりません。
オーケストラで演奏された壮大な音楽と、冬の富士山の映像が相まって、自然の雄大さを見事に表現しているオープニングのスタッフロールは、現在の映画では決して真似の出来ない素晴らしさです。
「甦える大地」にも共通して言えることですが、忘れられないほどに美しい景色と、その当時の映画音楽が、ある種の何とも言えない感動を味合わせてくれています。
この作品で印象的だったのはドーム運搬決行日、朝の風景。富士山頂で、雲の隙間から漏れる朝日を複雑な表情で見つめる勝新太郎さんの心情と相まって、言い知れぬ達成感を私たち観客に味合わせてくれます。
「甦える大地」でもある役者が出演するシーンが印象的なのですが、それに関しては今は触れないでおきましょう。未見の方には秘密にしておいた方が良いかもしれませんからね。
さて初見の私の感想ですが、映画作りに命を懸ける石原裕次郎さんの生き様を感じずにはいられない素晴らしい内容でした。
「黒部の太陽」以降の作品に共通している「戦後の日本を支え復興した男たちの生き様と熱意」が、男、石原裕次郎の生き様にだぶって見えたのは、決して私だけではないでしょう。
この作品の素晴らしさは、それだけではありません。環境問題が取りざたされている昨今、あれだけの規模の撮影を実際に富士山することは、現在では不可能でしょう。
そう言う意味でも、歴史的に価値のある作品です。それだけに、簡単に観られない現状は残念と言えます。
では、なぜDVD化しないのでしょうか?
確かに「映画は映画館で」と言う裕次郎さんの意思は尊重するべきだと思います。
しかしもし裕次郎さんが今も生きていて、DVDやブルーレイの画質の良さや、液晶テレビの美しさ、そして映画館を凌駕するほどのホームシアターの音響、その全てを裕次郎さんが体感していたら、どう思うでしょうか?
もしもの話は適切ではないかもしれませんが、きっと多くのファンに作品を観てもらおうと思ったに違いありません。
何より忘れてはならないのは、裕次郎さんが亡くなって23年。その間に沢山のファンが寿命を迎え、いつか・・・と夢見ながら観ることが叶わず旅立っているのです。
個人の意志が尊重される為に、ファンの心が犠牲になっても良いのでしょうか?
私は、違うと思います。
ファンを第一に思う人なら、己のこだわりでなく、まずはファンのことを考えるはずです。
・・・いや、ここまでにしておきましょう。私が何を言おうと、決定するのは石原プロモーションなのですから。
ただ、これだけは言えます。今回放送された「富士山頂」は大切に保管されていたフィルムとは言え、細かいノイズが目立っていました。特に後半は明らかに分かるほどに。
アナログは、そのままでは劣化していくだけなのです。いくら大切にしていても、です。
ならばどうすれば良いのでしょう?
海外では一般的な、デジタル化による修復が最有力です。その為には莫大な資金が必要です。
こう考えたらどうでしょう?
後世にこの素晴らしい作品群を残す為、デジタルで修復をし、その資金の為にDVDやブルーレイを販売するのです。
それをする為に残された時間は、決して短くないはずです。
観たいと欲するファンの命には、限りがあるのですから。
するべき次期は今、そう言っても過言ではないと思います。
一般人である私が、だいぶ生意気なことを言っているように思われるでしょうが、私も作品の舞台となった地元に暮らす一住人、その声であることを忘れないで下さい。

さて、通常、映画をTV放映する際はCM前とあけに、放映している番組名や作品名が画面端に表示されます。
ご覧になった方は気づかれたかと思いますが、今回の「富士山頂」ではそれがありませんでした。
なぜでしょう?
おそらく、それは「映画は映画館で」と言う石原裕次郎さんの意思に、少しでも近づける為だったのだと思います。
CMはスポンサーの都合上入れない訳にはいきませんから、せめて本編放送中は映画館に近い環境にしたかったのでしょう。
「映画は映画館で」と言う故人の意思と、多くのファンの為に行ったTV放映。
一見、矛盾するこのふたつを、上手く取持って叶ったのが、今回のこのイベントです。
そう言う意味では、裕次郎さんの意思と、ファンの熱意が歩み寄った貴重な瞬間だったと言えます。
そんな素晴らしい時間を共有出来たことを、一映画ファンとして光栄に思わずにはいられない、そんな2日間でした。

さて次回は、もうひとつの幻の作品「甦える大地」のあらすじを書き記したいと思います。
そのあらすじを記したホームページはほぼ皆無に等しいので、もしDVD化されなかった場合の語り部は誰かがするべきです。
余計なお世話と思いつつ、私がその一翼を担えれば幸いです。

それでは、また!!



1970年日本映画 107分(テレビ朝日放映時)


製作  石原裕次郎 二橋進悟 久保圭之介
協力  三菱電機株式会社 三菱重工業株式会社 大成建設株式会社
    朝日ヘリコプター株式会社 気象庁
監督  村野鐵太郎
原作  新田次郎
脚本  国弘威雄
撮影  金宇満司
照明  椎葉昇
録音  紅谷愃一
美術  横尾嘉良
編集  渡辺士郎
助監督 近藤治夫
音楽  黛敏郎 肥後一郎
出演  石原裕次郎 芦田伸介 山崎努 勝新太郎 渡哲也
    宇野重吉 東野英二郎 星由里子 市原悦子 中谷一郎 田中邦衛 他

2009年6月30日火曜日

バウンス ko GALS

なんとかギリギリ6月中に更新です(笑)と言っても、これを読まれる方は7月だと思いますが・・・


まずは最初に訂正です。

以前予告で記したタイトルを「バウンス KO GALS」と表記していましたが、正確には「バウンス ko GALS」です。なぜ一部だけ小文字なのかは不明なのですが、そう表記するには理由があるはずなので、ここに訂正させていただきます。

それから前回「なるべくネタバレにならないように」と書いたのですが、この作品の魅力を語る上で物語の核心に触れないのは難しいので、今回のコラムは前半にあらすじ、後半はネタバレを含みつつこの作品の良さを語って行きたいと思います。


ではまず、あらすじを紹介しましょう。


あなたは、たった18時間で一生ものの友情って生まれると思いますか?


答えは"YES"です。

そしてこの一文が、作品の全てを表しています。


高校の体育館になぜかチャイナ服とミリタリージャケットを羽織った女子高生の姿。彼女の名前はRaku-chan(佐藤康恵)。彼女は友達に援助交際を紹介はするが、決して「売り」には手を出さない。そして友達への気前の良さが魅力。

新幹線の車内で地図とパスポートを眺める女子高生Lisa(岡元夕紀子)。留学先のニューヨークでの資金を少しでも増やそうと、駅で降り渋谷の街中を歩く。東京には不慣れな様子が、歩く姿や仕草に見て取れる。

Maru(矢沢心)は親友のRaku-chanとショッピング。そこで「売り」の待ち合わせの男と会う。堕胎したばかりだから手伝ってとRaku-chanを誘うが、上手くかわされてしまう。

しがないスカウトマンSap(村上淳)は109前で仲間と止め処ない話をしているが、ひときわ輝く女子高生を見つける。彼女はさっきのLisaだった。Sapはしつこくアタックをかけるも、ガードの固さに撃沈。

ホテルに入ったMaruは早速「売り」を始めようとするが相手が悪かった。彼はデートクラブも手掛けるやり手のやくざ(役所広司)だったのだ。儲けるつもりが逆に脅され、金ばかりか、身分証明書と携帯電話までも取り上げられてしまう。

Sapを振り切ったLisaは裏路地の一角にある店へと入って行く。そこはブルセラショップ。

留学の為にと、それまで縁のなかった世界に足を踏み入れるLisaだったが、店主(桃井かおり)とのやりとりからなんとかお金を手に入れることに成功。しかし欲が湧いてしまった。

Maruは親友のJonko(佐藤仁美)に泣きついていた。Jonkoは自分の経験から、不浄な大人を決して信用せず、一見小生意気だが芯の通った女子高生。

困った仲間は放っておけず、親友の窮地を救う為、単身そのやくざを探しあて身分証明書と携帯電話を取り返しに乗り込んで行く。

再びLisaを見つけたSap。さらに稼ごうとビデオ撮影現場へと向かうLisaを、こっそりと追いかける。

まったく繋がりのないLisa、Raku-chan、Jonkoだったが、運命に吸い寄せられるように惹かれ絡まり合うのだった・・・


序盤の紹介だけなのにどうしてこれだけ長いあらすじになってしまったのかと言うと、実はこの作品、何人もの物語が少しずつそれぞれに絡み合って、最後に「爽やかな感動」と言う化学反応を起こすのです。

一見するとドキュメンタリーのような女子高生の会話(演技に見えないくらいに自然な、集団の会話)や、まるでゲリラ撮影のような(人であふれかえる渋谷の街中で役者に演技をさせることによって、役者以外の人間にさも演技が事実のように見せてその反応を収録してしまう)街中でのシーン、チョットした裏路地に入ると人気のなくなる東京を途中途中に何度も登場させる(公園、ブルセラショップの裏路地、夜のガード下、神社の階段)等、ひとつの物語をじっくりと見せるのではなく、細切れにそれぞれを描き、直球ではなくまるで俯瞰で物事を見ているような感覚から感情移入をさせているのです。

ただ観ていると全くそれを感じさせない、不思議な映画です。これは原田眞人監督の力量なんでしょうね。

見せ方や物語の組み立てだけではありません。演技に関しても素晴らしいものがあります。

主人公3人以外のそれぞれの登場人物は、出演時間こそ短いのですが演技派の役者とその人物の背景をしっかりと見せる作り込みなんです。

いくつかあげると・・・

SapとLisaの会話(27分あたり)。

バブル以前とその後の厳しい世の中、両方を知るSapの台詞「ダテに俺、渋谷で生きてる訳じゃないもん」や「若い頃、勉強とオナニーしかしてないから、遊び方知らないんだよ。なんだよ、ブタブタの親父になってからよ!」「あいつら敵じゃん!!」は短いながらもSapの経験の深さと歪みをしっかりと表現しています。

他にも、やくざとJonkoの会話(38分あたり)。

商売の決着を付けようとしていたやくざに、日本が狂い始めた本質を女子高生の直感で語り、やくざに時代の流れを痛感させてしまうシーンは、この映画の中でも秀逸だと思います。

脚本を読んだ訳ではないのですが、おそらくしっかりとしたリサーチの上で組み上げられた設定なんでしょう。事実、脚本を手掛ける原田眞人監督は、実話や、実際に起こった出来事を元にした映画で、その手腕を発揮しています。

「金融腐食列島 呪縛」(バブル崩壊後の金融業界の内情を暴いた問題作)

「突入せよ!あさま山荘事件」(言わずと知れたTV生中継された篭城事件)

「クライマーズ・ハイ」(日航ジャンボ機墜落事件を取材する記者たちの葛藤を描いた異色作)

この3作品は原田眞人監督の代表作と言っても過言ではないと思います。

余談ですが他にもSF、アクション、ホラー、推理小説の映画化、果てはアイドル映画まで、幅広く手掛けられています。

ひょっとしたら原田眞人監督の作品とは知らずに、ご覧になっているかもしれませんよ。

それから、これを外すわけにはいきません。

Lisaと名誉教授の会話(65分あたり)。

従軍慰安婦の問題を女子高生との会話の中で描くなんて、なかなか考えつかないことだと思います。

戦犯になってしまった為にアメリカへ戻れない名誉教授は罪であるはずの過去を簡単に喋り、その罪の意識のなさに憤慨するLisaの構図。

狂ってしまった日本の常識と言うか、崩れてしまった日本の節操を、上手く表現していると思います。

この名誉教授を演じるのは「河童」で心優しいおじいさんを演じた今福将雄。演技の幅の広さが光っています。

他にも2つほど、「う~ん」と唸ってしまった台詞があるのですが、それは書かないでおきましょう。

実際にこの作品を目にした時に、あなた自身で感じて下さい。


さてこの作品を見ていると、あることを感じさせてくれます。

それは懐かしさのようで、遠い昔を観ているような錯覚です。

たった12年前なのに、なくしてしまったもの(人情味のあるやくざや、人々の純朴さ)。

消えてしまったもの(ポケベル、街中にあふれる公衆電話、ブルセラショップ)。

そして変わらないはずなのに、懐かしさを感じてしまうもの(友情)。

なぜなのでしょうね?

それはきっと、この時代にしか描けなかったものをこの時代に描き、その時代を知る私たちだからこそ知り得る「リアル」なんだと思うのです。

そして大して変化していないはずの日常が、人間の価値観を含め劇的に変化している現れだと思うのです。

物語は架空だから私たち観客が直接経験した訳ではないのですが、不思議と虚構ではなくなるのです。

本当に、うまく時代を描いた作品なんだな、と改めて感じました。

事実、今でこそこの作品を知っている人は少ないのですが、当時は高評価の作品でした。

「第71回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画第6位」と言う実績が、物語っています。

そして、この作品を知る人にとっては、いつまでも心に残る作品なんです。

ネット上で評価を観ていただければ、ご覧になっていない方でも分かると思います。


そうそう、最後に忘れてはいけない大事な感想を。

Lisa、Raku-chan、Jonko。この3人を演じた女優たちの瑞々しい演技がなければ、これほどまでに後味の良い映画にはならなかったでしょうね。

私には、何度観ても泣ける、貴重な貴重な作品です。


短い紹介でしたが、この作品の魅力、上手く伝わったでしょうか?

もし中古ビデオ店等で作品を見つけることが出来、あなたと同じ感動を分かち合えたら幸いです。


さて次回はちょっと変わった企画でお贈りしたいと思います。

今年はあの大スター、石原裕次郎さんの二十三回忌です。

そしてその一環として、幻の作品がTVで放映されます。

ネットで調べたところ過去に一度だけBSで放送された記述を見かけましたが、ビデオもDVDも発売されていないので、幻の作品に偽りはないでしょう。


その作品の名は「富士山頂」


ことし2夜に分けて放送されたTVドラマの元である映画「黒部の太陽」や、以前お贈りした映画「甦える大地」と同じく、戦後の日本を支えた人間の熱意を描いた貴重な作品です。


放送は7月4日夜9時。

これを逃すと次の放送はいつになるか分かりませんから、是非ご覧になって下さい。

私は今回初めて観るのですが、リアルタイムでの石原裕次郎さんを知らない世代の視点で、あれこれ感想を書き記していと思います。

その次にお贈りする作品は・・・以前書かなかった「甦える大地」のあらすじ完全版を、いつか放送されることを願って書こうかと思います。


それでは、また!



1997年日本映画 109分


プロデューサー 鈴木正勝

監督・脚本   原田眞人

撮影監督    阪本善尚

照明      高野和男

録音      中村淳

美術      丸山裕司

音響効果    柴崎憲治

記録      坂本希代子

助監督     竹下昌男

音楽      川崎真弘

編集      阿部浩英

出演      佐藤仁美 佐藤康恵 岡元夕紀子 村上淳 矢沢心 万央里

        海藤れん 遊人 池田裕成 清川均 小堺一機 塩屋俊

        今福将雄 ミッキー・カーチス 桃井かおり 役所広司 他

2009年6月23日火曜日

ブラッド・イン ブラッド・アウト

6月も3分の2を過ぎたと言うのに、ここ鹿嶋はまだ涼しく、曇天を除けばまるで5月初旬のような陽気です。今年もそれほど暑くない夏になるのかなと思ったりしているのですが、全国的に見るとそうでもないんですね。


さて今回お贈りするのは、心奮わされる映画「ブラッド・イン ブラッド・アウト」です。

監督は「愛と青春の旅立ち」「カリブの熱い夜」「ディアボロス」「レイ」等、ジャンルにとらわれない傑作を世に送り出したテイラー・ハックフォード。

公開されたのは1993年。縄張り争いや、刑務所での乱闘・殺人、麻薬がらみのシーンがあるにも関わらず、意外にもディズニー系列配給作品です。

兄弟同然に育った3人の男の、12年に渡り絡み合う絆を描いた物語は、観る者の心を掴んで放しません。

前回簡単に触れたのですが、この作品は日本国内では一度だけDVD化されましたが、現在は廃盤となり新品の入手はほぼ不可能となっています。しかしビデオやDVDでのレンタルは在庫を有する店舗があるので、そちらを利用して、是非ともご覧いただきたい作品です。

ネットでの評価を見ていただければ分かりますが、かなりの高評価で隠れた名作とも言える作品でもあります。


まずはご覧になっていない方の為に、簡単なあらすじを・・・


保護観察処分中、喧嘩をして逃げ出してきた青年ミクロ。

彼は、生まれ故郷のロサンゼルス東部へと戻ってきた。多くのメキシコ系アメリカ人と色とりどりのアートに囲まれたその街に住む母親を頼って来たのだ。だが母は親戚の家にミクロを預けるのだった。

その親戚の家には、兄弟同然に育ったパコがいた。

クルスはパコと共に、父に請求書を届ける為、勤務先の自動車修理工場へ行く。

そこには、やはり兄弟同然に育ったクルスが働いていた。彼は絵の才能に長けていて、その上手さはロサンゼルス一と言っても良い程。

パコは、客から預かっている自動車にミクロ、クルスと共に乗り込み、ドライブに出かけた。

町並みが見える小高い岡の上で語り合う3人。いつも変わらず、街を見つめる松の大木が風に揺れる。

そこへ突然やって来たのは2人の警官。治安の悪いこの地区へ見回りに来たのだった。

パコは焦っていた。彼は保護観察中の身。バレてしまえば、刑務所に収監されてしまう。

ここの警官たちは、肌の色で人間を見る。それを知っているパコはひたすら大人しく振る舞おうと勤めるが、警官は疑いのまなざし。

しかし機転を利かせたクルスのおかげで、なんとかその場から解放されたのだ。


この街には2つの対立するグループが存在した。ひとつはパコとクルスの属するヴァトス。

もう一方は、協定を破り縄張りを荒らすプントス。小競り合いは絶えなかった。

2人と本当の兄弟に成りたがるミクロは、縄張りを荒らすプントスを一人で襲撃し、認められる。彼には、そこまでして認められたい理由があった。

それは、ミクロとクルスと親戚であるにも関わらず、彼の肌は白く、瞳が青かったからだ。

肌の色は、知らないうちに彼のコンプレックスでもあったのだ。


芸術の成績優秀なクルスは終業式に大学への奨学金を得て、家族は鼻高々だった。それはミクロもパコも同じで、その日のパーティーは彼を慕う人々で賑わっていた。

そんな中、クルスは目当ての女性を連れ、夜の街へ繰り出す。

しかしそこで不幸な出来事が・・・そしてその出来事が3人の人生を、修復出来ない程に大きく狂わせるのだった・・・


この作品は12年の出来事を描く為、3時間もあります。紹介したあらすじはだいたい30分程でしょうか。

しかしその長さを微塵も感じさせず、引き込んで行く力があります。回りくどい説明はせずに、常に人間関係をストレートに、そしてその心情を端的に描き切っています。そこがこの作品の最大の魅力でもあるのです。

特筆すべきは3人の生き様。ミクロは肌の違いを克服すべく血を流すことに手を染め、パコは自信のなかった自分を見つめ直す為に海兵隊へ、そしてクルスはその才能を持ち成功への道を突き進んで行くにもかかわらず、身体と心に負った傷を紛らすため麻薬にのめり込んで行きます。

3人それぞれが抱えるプレッシャーに抗う為に選んだ道がやがて互いに深い溝を造って行くと言うその様が、繊細に、かつ大胆に描かれているのです。

ラスト1時間は、観る者に涙さえ流させる程に熱い展開が待ち構えています。


私がこの作品を初めて観たのは、ビデオ発売数ヶ月前。その内容に心動かされ、当時勤めていたレンタル店では仕入れを決めました。そして音楽も気に入り、サウンドトラック盤も購入したのです。

この音楽を書いたのは、ビル・コンティ。映画好きの人にはあまりにも有名な作曲家です。

代表作は「ロッキー」シリーズや「ライトスタッフ」等。監督同様、ジャンルに捕われず様々なジャンルの音楽を紡ぎだしていますが、今回の音楽はまさにラテン系。

しかし音楽の使われ方はしつこくなく、感情の起伏の激しいシーンだけを彩るように緩急をつけていて、決して物語を支配してしまわないのです。ともすれば作品のイメージを変えてしまう程の情熱的なメロディーを、上手く操っているのです。

そのメロディーは、抗えない運命に翻弄される3人の人生のように、時に華やかに、時に悲しく、そして情熱的です。残念ながらサウンドトラック盤に収録されているのはそのスコアの一部ですが、それだけでも聞く価値のある作品だと、私は思います(もちろん映画を気に入っているのが前提ですが・・・)。輸入盤は今でも手に入るので、映画が気に入ったら是非聴いてみて下さい。


さて、ここから先は内容に深く関わるので、まだご覧に成っていない方は、是非ご覧になってからお読みください。


この映画には沢山の人物が登場します。特に刑務所内では覚えきれない程の役者が出演していますが、それだけではありません。実際の服役囚たちが多数出演し、その殺伐とした空気をよりリアルに感じさせることに成功しています。

役者と言えば、刑事になったパコの同僚は、ある有名な映画で印象的な脇役を演じた俳優が演じています。

ちょっと痩せているので分かりづらいかもしれませんが、声を覚えていればきっと分かると思いますよ。

ヒントは「糞まみれ」です(笑)是非是非探してみて下さい。

この映画は内容も素晴らしいのですが、そう言った脇役の役者陣にも恵まれた作品と言えるでしょう。

最近のハリウッド映画で個性的な脇役を演じる役者が、多数出演しているので、探すのも面白いかもしれませんね。


痛みを逃れる為に麻薬に手を染めたクルスは、坂を転げ落ちるように破滅へと向かっていきます。

それを決定づけたのは、幼い弟の死でした。クルスの過ちが、本人ではなく弟を殺してしまうのです。

もう元には戻れない、決定的な事件でした。

親子の縁は切れ、兄弟の絆は壊れ、クルスは身を隠すように消え、益々麻薬に溺れてしまうのでした。

その心の傷がどれだけ深かったのか、それを思うと胸が痛くなります。

しかし、それ以上に苦しんだのはクルスの兄、パコです。

麻薬で身内を失う悲しみを決して誰にも体験させまいと刑事の道を選びますが、本人の苦しみは決して癒えることがありません。そればかりか麻薬に携わった為、人生を狂わせてしまう人々を観るたびに、心の傷は深くえぐられて行きます。おそらくそれは、クルスの痛みを手に取るように感じていたからなのでしょう。


作品の半分近くを占める刑務所内の出来事は、人種差別を感じさせない日本で育った私たち「日本人」には衝撃的と言える内容です。

ミクロが故郷で感じていた人種差別は、結局刑務所内も同じ。塀に囲まれているにも関わらず、その内部はまるで地球の縮図です。

白人たちの組織、黒人たちの組織、ミクロの属する中南米系の組織オンダ、そして女の代わりに求められるがまま己を売る男たち。そしてそれを支配する特権階級とも言える刑務官。それぞれは、対立しつつも共存共栄の道を歩んでいました。

その中でミクロは人生の厳しさと生きる術を学び、認められる為、塀の外と同じように手を血で染めてしまうのです。

その名は「血の証明(ブラッド・イン ブラッド・アウト 血のつながりを得る為に、血を流す)」

しかしオンダの長は、麻薬に手を出さないミクロの心の清らかさを信じ「仮釈放をだまし取るんだ」と諭します。己を認めてくれたオンダの長を信頼するミクロは、その言葉を信じ学校の卒業資格を取り、長い苦労の末、やがて仮釈放が認められます。

人種の違いを克服したかに見えたミクロですが、世の中は「前科」と言う言葉に激しい差別で当たってきます。真っ当に生きようとするのに、それをいとも簡単に阻んでしまうのです。

結局ミクロはその差別と、組織のつながりの為に、また刑務所へと逆戻りしてしまいます。

私が忘れられないのは、パコとミクロの悲しい再会シーン。兄弟のように育ったのに、刑事と強盗と言う相容れない立場に立ってしまい、しかもミクロの片足を奪ってしまいます。

兄のように親しんだパコに裏切られたと感じたミクロは、心が激しく深い溝の中へと落ちて行きます。

血の証明はエスカレートし、血で血を洗い、他の刑務所までも巻き込む事件へと発展してしまうのです。それだけではありません。争いを治める為に戦うことしかないと信じて疑わないミクロは、パコの言葉に従うように見せかけ、その裏ではオンダだけを信じ他の組織を次々とだまし討ちにしていくのです。

それはミクロの限りなく澄んだ青い目が、完全な悪に染まった瞬間でした。

その後に迎えるこの映画で一番のバイオレンスな部分であるはずの暴動シーンは、痛みに麻痺してしまったミクロの心を思うとやりきれない程悲しくてたまりません。

和平の道を選んでくれたと信じていたパコは、ミクロの裏切りに怒りをあらわにします。しかしミクロは、そんなパコの心の痛みさえ、見えなくなってしまったのです。それどころか刑事であるパコを組織に迎え入れようと提案をするのです。正義を信じるパコは、痛感しました。もう昔には戻れない、と。

ラスト5分、麻薬から抜け出すことの出来たクルスは、ミクロの裏切りに傷ついたパコをある場所へと連れて行きます。

そこにあったのは、あの日のままの3人が今も生きる壁画。

2人はその絵の前で涙ながらに、心に残る罪の意識と傷を吐き出し合い、やっと昔のような絆を取り戻すのです。もう後戻りの出来ないミクロを残して・・・


今回、約10年ぶりに「ブラッド・イン ブラッド・アウト」を観たのですが、ある奇跡に恵まれました。

実は私の手元には、当時メーカーから戴いた沢山のサンプルビデオが残っています。しかし長い年月の間に、ほとんどのテープはカビが生え、すでに観ることが出来なくなっています。

「ブラッド・イン ブラッド・アウト」を観る為にどこかのレンタル会員になるしかないのかなぁ・・・と覚悟していたのですが、探してみるとなんと奇跡的にカビずに残っていたではないですか!まるで私が探すのを待っていたかのように・・・他のテープはほとんどダメになっていたので、これはまさに奇跡としか言いようがありません。ひょっとすると、もう一度この作品を観る運命だったのかも知れません。

そして改めて、この作品の良さを痛感したのでした。

でも出来ることならTVサイズのビデオではなく、ワイドスクリーンサイズのDVDを皆様には観ていただきたいと思います。私自身も、そのサイズでもう一度観て、さらに良さを発見したいと思っているのですが・・・こればかりはメーカーの決断を期待するしかないですね。


さて次回も予告通りに「バウンス KO GALS」をお贈りしたいと思います。

こちらの作品は、レンタルの入手も難しいので、なるべくネタバレにならないよう、紹介したいと思います。


それでは、また!



1993年アメリカ作品  180分


製作総指揮     ジミー・サンティアゴ・パカ ストラットン・レオポルド

製作        テイラー・ハックフォード ジュリー・ガーシュイン

監督        テイラー・ハックフォード

ストーリー     ロス・トーマス

脚本        ジミー・サンティアゴ・パカ ジェレミー・アイアコーン フロイド・マトラックス

オリジナル・スコア ビル・コンティ

出演        ダミアン・チャパ ベンジャミン・ブラッド ジェシー・ボレゴ ビクター・リバース デルロイ・リンド トム・トーレス カルロス・カラスコ テディ・ウィルソン レイモンド・クルウズ ヴァレンテ・ロドリゲス ラニー・フラハティ ビリー・ボブ・ソーントン ジェフリー・リヴァス 他