今年の夏は暑かったですね。そして9月もあと一週間となった今日はさすがに平年並みに戻りそうですが、週間予報ではまだ暑い日がありそうな気配。
鹿嶋と言う土地は海に面しているため、この季節になると結構涼しいはずなんですが、日中に眠る生活をしている私は、今年は何度もエアコンのお世話になりました。
しかしさすがにもうすぐ10月。たぶん、この暑さも、後数日の我慢でしょう。
天気次第ですが9月27日~29日の予定で、バイクの旅に出ます。
私はバイクが好きであちこち出かけますが、実はほとんどが日帰り。しかも走りっぱなしが多いのです。
今回の旅の目的は、長年抱いてきた「目標」への序曲。
いつかなうか分かりませんが、私の目標はバイクでの日本一周。しかも原付で。高校時代からずっと思い続けています。
働き続けないと生きて行けない現状では、まとまった時間は無理ですが、こうして一歩ずつ進めていつか目標を達成しようと頑張り続けます。
今回の旅は、以前10日間で本州、四国、九州の最南端を訪れた旅の続きとも言える内容です。
目指すのは、本州の最東端と最北端。岩手県の魹ヶ崎と、青森県の本間です。その後は日本海に抜けてから帰宅するつもりです。
貧乏旅行なので、テントと寝袋、そして自炊用具を積んでの旅となります。
無事に終われば、何らかの形で旅日記を公開するつもりでいますので、お楽しみに。
今回お贈りする「秋桜 ~コスモス~」は、福島県のほぼ中央に位置する町が舞台となります。
造るに至った経緯は前回のコラムで触れているのでここでは割愛しますが、舞台となる本宮町(現在は本宮市)は、安達太良山と阿武隈川に挟まれ、自然と親しくふれあえる土地です。そんな風土が、人々のつながりとこの映画を生み出した、と言っても過言ではありません。
オープニングに登場する公園は、安達太良川と阿武隈川の交わるすぐ近くにあるみずいろ公園と言う施設で、実際に画面に写っている様子そのままに今も親子が楽しく触れ合っている、そんな場所です。
劇中に登場する祭りも、手づくりいかだでの川下りも、行事として住民に親しまれています。
そしてこの映画では、登場する場所や行事だけでなく、商店や高校、病院名等、ほとんど全てが実名で登場しています。
「エイズを巡る周囲の冷やかな反応」と言う、一見すれば敬遠されがちな実名使用も、地域住民みんなが映画のテーマを理解しているからこそ、出来た事なのではないでしょうか?
実際、この映画に出資した人々や企業の数はエンドロール後を観ていただければ分かりますが、その熱意は尊敬に値します。
それだけではありません。
撮影中、映画製作スタッフとキャストは、町民たちが確保した宿泊場所(アパートや空き家、店舗2階の居住部分等)に寝泊まりし、撮影場所の手配や、車両調達、様々な交渉、果ては食事の炊き出し等、スタッフ、キャストを家族のようにもてなしたと言うのです。
まさに、地域住民が一致団結している、素晴らしい町なのです。
この映画には、何度観ても泣けるシーンが3つあります。
一つは、コントを観終え、メロンを切っているシーン。
母の辛さが、演技の枠を越えて伝わってきます。
二つ目は、松下恵さん演じる、園田明子の親友山倉夏実がたった一人で訴える明子の実情。
そのけなげさに、胸を打たれます。
そして三つ目は、明子の死後、病院の廊下で抑える事無く感情を剥き出しに泣く園田清美の姿。
このシーンに関しては、余計な言葉はいらないでしょう。
そして私にとって、この作品は忘れられない名作です。
その理由は先ほどの「地域住民の一致団結」等いくつかありますが、あえてひとつ説明するとすれば「後味」だと思います。
「死」が待ち受ける重いテーマの映画であるのに、観終えた後の後味は決して悪くないのです。
それだけではありません。
明日への活力を貰える、と言えば分かりやすいでしょうか?
それはなぜでしょう?
恐らく、オープニングで見せる主人公、園田明子の笑顔だと思います。
偏見と差別が待ち受けているのが分かっているのに、不安ではなく、常に前を向いて、しっかり生きて行こうとするその姿勢に、心打たれたのです。
そして、そう生きる事に決めた娘を甲斐甲斐しく支える母、園田清美の圧倒的な存在感です。
園田清美を演じるのは、映画だけでなく演劇や歌手等幅広く活躍する夏木マリさん。
この映画では、片親ながらも重病の娘を一生懸命に支え、決して弱音をはかない気丈な母親を演じています。
とにかく、夏木マリさんの存在感がこの映画の全てを調和していると思えるくらいに圧倒的なのです。
そしてその存在感が、観客の思考と化学反応をおこし、涙を誘います。
私の好きな映画のパターンに「笑いと涙の両立」があります。
一見するとこの映画もそれに当てはまるような気がしますが、ちょっと違います。
コントのシーン等は笑わせる事を意識した内容ではありません。重いテーマの中和剤の役割を果たしています。
それからこれはあくまで私の解釈ですが、ひた向きに死と向き合い一生懸命今を生きようとした明子の人生は、観客を笑わせる短い時間の為だけにひたすら極める漫才やコントに似ていると思えるのです。
その意味を、知らしめる為に必要な「笑いのシーン」だったのではないでしょうか?
私がこの映画を初めて観たのは、今は無き「シネ・ヴィヴァン六本木」。1999年に閉館となりましたが、ミニシアターでは老舗だったと聞きます。
なぜ観る事になったのかと言いますと・・・
私の大切な友人がこの映画の少し前、小田茜さんの舞台に出演していたのです。
それまではあまり良く知らなかった女優さんでしたが、その舞台を切っ掛けにちょっとだけ意識して気にするようにしていたのです。
その時、この映画「秋桜 ~コスモス~」のTVCMを偶然目にします。
それが、忘れられない印象的なCMだったのです。
おそらく、日本国内でDVD化されない限りそのCMを観る事は不可能かと思いますが、はかなくも美しい予告だったのです。
映画を観終えた方には、きっとどのシーンか分かると思います。
そう、降りしきる雨の中、明子が訴えるシーンです。
私は今でも、このシーンに勝る美しさを放つ映画を見た事がありません。
終盤の文化祭はクライマックスです。
明子は具合を悪くし参加出来ず、夏実も誹謗中傷に傷つき本来の目的は果たせませんでしたが、夏実の心からの訴えに、観客全ての心が一つになる、と言う忘れられないシーンです。
しかし、実際にこのような状況に面した場合、どうでしょうか?
私は、現代はそこまで美しくないと思っています。
でも、この映画を観た人全てが、他人の辛さと自分の立場を天秤にかけても、他人の辛さを理解し共に涙してくれる、そう信じて疑いません。
さて、中途半端ではありますが、今回のコラムはここで終わります。
この映画に関しては、やはり観ていただかなければ真価を発揮しません。
そして、余計な言葉等で表現しては、かえって映画の価値を下げてしまう気がします。
前回のコラムでも書いた通り、入手が難しい作品ではありますが、ぜひぜひ購入してでもご覧になって下さい。
それだけの価値がある作品だ、と自信を持って言えます。
文頭でも書いた通り、来週末は旅に出ます。
そして再来週末は、本広克行監督が手がける舞台「FABRICA[12.0.1]」を鑑賞するため上京します。
なので2週続けてお休みとなります。
その後のコラムで何を取上げるか、今の段階で決めかねているので、2週間のうちにこのブログ上でお知らせしたいと思います。
それでは、また!
映画データ
1997年日本映画 103分
企画 社団法人もとみや青年会議所
製作 映画「秋桜」製作委員会
フィルムヴォイス
日本テレビ放送網
もとみや青年会議所
オフォス・マインド
フォーラム運営委員会
バップ
監督 すずきじゅんいち
原作 すずきじゅんいち
脚本 すずきじゅんいち
小杉哲大
撮影監督 田中一成
撮影 奈良一彦
照明 安河内央之
録音 久保田幸雄
美術 稲垣尚夫
音楽 佐村河内守
編集 掛須秀一
助監督 永岡久明
医事監修 山口剛
出演 小田茜 松下恵 夏木マリ 宍戸開 石井愃一 藤田敏八 川内民夫 榊原るみ 宍戸錠 山岡久乃 他
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