2005年6月11日土曜日

がんばっていきまっしょい

今では死語になりつつありますが、日本映画にはスポコンものと言われるジャンルが存在します。この映画の舞台である1976年は、まさにそのジャンルがブームの真っ最中。

主人公である悦子も、それにもれず熱血漢か・・・と思いきや、至って普通の少女。ちょっと違うのは、一生懸命になると見境が付かなくなる所か。恋に、ボートに一途で。

物語は、悦子が美しい海辺で、海を流れるボートを見つめる所からはじまります。

実は進学校に合格したものの、何をするべきか見失って傷心中。

凪を切って進むボートは、そんな悦子に勇気をくれます。

高校では厳しい担任教師に目をつけられ、せっかく入ろうと思ったボート部は女子部が存在せず。

でも負けません。なけりゃ、作ればいいのです。まさに「がんばっていきまっしょい」。

競技するのに必要な最低限の5人を、何とか確保。しかし何も知らないのは恐いことで、ボートを数メートル運ぶことも出来ず、せっかく海に入っても当然真っ直ぐ進めません。

でも彼女たちは負けません。

最初はバラバラだった動きも徐々に合うようになり、何とか真っ直ぐ進むようになります。

やがて合宿を経て、彼女たちの心もひとつにまとまり、念願の新人戦出場!

しかし結果は・・・


これが前半戦のあらすじです。残りは観ていない人のために触れないでおきましょう。


監督は磯村一路さん。スポコンもの真っ最中の1970年代の終わりに、ロマンポルノ系の映画で監督デビュー。その後約10年はその世界で活躍されます。

1990年代に入ると、折からのビデオブームでポルノ映画は衰退。

ここでひとつの転機が訪れます。

代わりに訪れたレンタルビデオの波に乗り、オリジナルビデオ映画の監督を務めるようになるのです。

そしてもう一つの転機が訪れます。

1994年のJリーグ開幕です。その波に乗り作られたのが「Jリーグを100倍楽しく見る方法!!」

磯村一路さんは、その作品の監督を努めることにより、映画を知らない一般人の間でも一躍有名になります。

「がんばっていきまっしょい」はその3年後に作られた作品であります。

現在の活躍は目覚ましいもので、2003年にはさだまさしさん原作の「解夏」の監督を務め、監督としての地位を不動のものとしました。


この作品の主人公である5人は、撮影当時まだ、役柄と同じ高校生。

主役を務めるのは当時まだ17歳の田中麗奈さん。

初々しさの中にも芯のある演技は、映画観客だけでなく、業界人の間でも話題になり、その後はTV「GTO」や映画「はつ恋」など、多数の作品に出演・主演するに至っています。

脇役の真野きりなさんの演技は秀逸です。

誰かって?きっとあなたも知っているはずですよ。しばらく前に放映されていたTVCM「TOYOTA デュエット」で、あの市原悦子さんと競演し、個性を爆発させています。もちろん映画での活躍も目覚ましく、海外の作品で主役も務めました。

二人とも、今後の活躍に期待せずにはいられない女優と言えるでしょう。


さて私とこの作品の出会いは、ビデオ発売直前の1999年7月。しかし本編を観たのはつい先月のことでした。

そう、手元にサンプルビデオはあったのですが、全く手つかずだったのです。

今思えば、この映画の製作に携わった全ての方に失礼なことをしてしまいました。

これほどまでに、やさしく、勇気を与えられ、泣ける映画だとは思いもしませんでした。

劇場公開当時に出会えなかったことを悔やんで止みません。

しかし悔やむことはもう一つ。

2003年末に、私はバイクで旅に出ました。

目的は、西日本にある3カ所の最南端を巡り、長年の夢であった尾道を散策することでした。いずれ夢の切っ掛けになった映画「さびしんぼう」は取り上げる予定ですが、まだしばらくは他の作品を紹介して行きたいと思います。

話が逸れてしまいましたが、この映画の撮影は愛媛県で行われました。

その中でも特に素晴らしい景色が胸を打つ、ボート小屋のある海岸。

きっと皆さんの脳裏に焼き付いていることでしょう。

実は、その撮影された海岸から僅か数百メートルしか離れていない道路を走っていたのです!

もちろん旅の当時、この映画の内容は全く知りませんでした。

これほどまでに美しい景色を知っていたら、例え100キロ離れていたって訪れたに違いありません。

映画を観なかったことを悔やんで悔やんで仕方ありません。

いつかきっと、必ずその海岸を訪れたいです。

いいえ、きっとその海岸に行きます!


さて映画の内容に話を戻します。

どんなに心が荒んでいても、一生懸命な姿には何よりも心を打たれます。

この映画のほぼラスト。

主題歌に合わせて映し出される5人の必死な姿と、最後に魅せる涙は、きっと一生忘れることの出来ない名シーンでしょう。

このラストのために、1時間45分の前振りがあったと言っても過言はない程です。

勇気をくれるこの映画、観るときっと何かが変わりますよ。


さて前回も触れましたが、7月から鈴木杏さん主演でTVドラマとしてスタートします。

映画は時間の制約上、ボート部の話がメインでしたが、ドラマは原作に書かれているその後の5人の姿も描かれるようです。

今から楽しみで仕方ありません。

それから前回、DVDに付いて触れましたが、現在期間限定で値下げして販売中と言うことが分かりました。この映画を気に入った方、6月末までですので1000円近く安い今の内に是非ご購入下さい。


いつもならここで、次回の予告となるのですが、今回は違います。

個人的なことなのですが、しばらくの間このコラムを休載とします。

長くても7月末までには再開する予定ですので、それまでの間、どうか私のわがままをお許し下さい。

何をするのか?って?

ごめんなさい、今は言えません。再開後も言えないかも知れませんが、いつか必ずこのコラムでお話ししたいと思います。

キーワードは「夢」です。


では、しばらくの間、さようなら。

そして、それでは、また!


1998年日本映画 120分

製作     周防正行

監督・脚本  磯村一路

原作     敷村良子(第4回坊ちゃん文学賞受賞)

音楽     リーチェwithペンギンズ

出演     田中麗奈 清水真実 葵若菜 真野きりな 久積絵夢 松尾政寿 中嶋朋子 白竜 森山良子