2004年10月24日日曜日

ジュブナイル Boy Meets the Future

いつにも増してネタバレですので、もし映画をご覧になっていない方がいらっしゃいましたら、レンタルで構いませんので一度ご覧になってから、もう一度お尋ね下さい。

お願い致します。


邦画で実写SFものというと、誰もが思いつくのは子供向け。

「ゴジラ」シリーズや特撮ヒーローもの等、海外映画と比べると、明らかに子供がターゲットです。

アニメは大人向けの文化としても定着しているのに、不公平な限りです。

その流れを大きく変えたのが本作品と、私は思っています。

物語を構成する要素に「ロボット」「タイムスリップ」「宇宙人」とそれひとつだけでも映画として成り立つものがふんだんに織り込まれていて、それぞれに細かいディテールで考え込まれているのも、大人を意識した作品であることを伺わせます。

3人の少年と1人の少女で進む物語は主に、2000年という現在での幼き日々を描いていますが、40歳代前半位までの人には共感出来る描写が多々あります。

多くの映画の中では子供部屋は小綺麗だったりしますが、この作品の中ではリアルに描かれていて、ロボット好きの主人公を伺わせる沢山のロボットのおもちゃや自作の模型、それから秘密基地を思わせる仕掛けの施されたドアや、友達と一緒に読めるようにうずたかく積まれたマンガ雑誌等々。少年時代を過ごした人なら誰もが見たことのある眺めです。

物語の進行する場所も、少年時代を懐古させるに充分です。

樹の壁で覆われた古い木造の家や町並み、錆びかけた小さな看板、漁港、車のスクラップが山程積まれたジャンク屋。都会でも田舎でも見られた風景に溢れています。

推測ですが、この辺りには大人にも共感出来るようにとの監督のこだわりがひしひしと感じられます。

気の合う4人組。この息のピッタリさにも驚かされます。いや、初めて見た時にはあまりに自然さに自分の少年時代を思い出した位です。

監督というのは役者に希望を伝えて演技をしてもらいます。そして時として親の様な存在であると言いますが、この映画に関しては良き兄のような存在だったのではないかとも思わせます。

そのあたりはDVDに収録されているメイキングでも垣間見ることが出来ます。


さて、物語ですが・・・

林間学校の夜、主人公は眩しい光を目撃。そこで友達と一緒にロボットを見つけます。

翌日から、ロボット「テトラ」と3人の少年と1人の少女の夏の日々が始まるのです。

いつもと変わらない日常が進む中、静かに忍び寄る宇宙人の影。

狙われ始めるテトラと少年少女たち。

しかしテトラには誰にも言えない秘密があったのです。

そしてついに運命の時を迎えるのですが・・・


この映画の音楽は、最近の映画のようにうるさい使い方をしません。

要所要所に地味で静かに流れています。時には優しい旋律で、時にはウルトラQのようにおどろおどろしかったりと。でも肝心なところではしっかりと音楽で映画をもり立てます。

私は個人的には喧しい位の使い方をする映画音楽が好きなのですが、この映画に関しては別です。

エンディングに流れる山下達郎さんの主題歌も、映画の主題にマッチしていて後味の良い終わり方に花を添えています。

多少地味に感じる方もいるかもしれませんが、誰もが「悪い作品」とは感じない、そんな仕上がりの爽やかな映画でしょう。


さてこの作品の監督である山崎貴さんは現在、監督として3作品目の映画化に取りかかっています。

もうじきどんな作品であるのか発表されることでしょう。

私は、大きな期待を抱いているのですが・・・どんな期待かはいずれその作品の感想を述べる時にでも。


このところ、真面目なテーマを含んだ作品が続いたので、次回は思いっきり趣向を変えます。

迫り来る、必ず訪れる悲惨な未来から逃れることは出来るか?

「ファイナル・ディスティネーション」

B級ですが、レンタル店での基本在庫に値する程の作品ですので、ぜひご覧になって下さい。


それでは、また。


2000年日本映画 105分

監督  山崎貴

出演  遠藤雄弥 鈴木杏 YUKI 清水京太郎 香取慎吾 酒井美紀 吉岡秀隆 緒川たまき 他

主題歌 山下達郎「Juvenileのテーマ 〜瞳の中のRainbow〜」

2004年10月11日月曜日

ロックよ、静かに流れよ

子供ではないが、大人でもない。子供として見られることを嫌うが、大人としては見てもらえない。

誰もが通り過ぎたそんな日々。

あなたはどんな風に感じて、その時期を過ごしましたか?

そして、今その世代を生きている人に、理解のある接し方をしていますか?

自分がされて嫌だった事を、気づかぬ内にしていませんか?


この映画は多感な時代の男の友情を描いています。

今あらためて見直すと、どこか荒削りな印象のある造りは、この当時としては当たり前だったのかもしれません。

最近の映画はCGを駆使し、天気や風景、そして色合いを簡単に、意図したものへと変更が出来ます。

しかしこの映画は、そんな技術のまだ無い時代。たった16年前だというのに。

でも劇中に登場するお札は「夏目漱石」や「新渡戸稲造」だったりします。

私の中で、80年代後半からバブルがはじける90年代前半は、過激に進化していく時代。見知らぬ場所を舞台にしていても懐かしさを感じるのは、まさに同じ時代に主人公たちと同年代を生きたからではないかと思います。

話が逸れてしまいましたが、劇中に登場するいくつもの素晴らしい風景。これは最近の技術では簡単に作ることが出来ます。

しかし、この当時はロケ頼み。しかも天気次第。

なのに素晴らしい風景が、印象的なシーンを上手く演出しています。

私が特に忘れられないのは、俊介とミネさが出会ったその日に仲良くなり、二人並んで帰る夕焼けの道。

それから、東京でのライブ観賞後、4人で迎えた朝焼け前の東京。

どちらも、その瞬間の空気と、登場人物の気持ちを間接的に教えてくれて、映画を盛り上げています。

最近の映画には、この2点が足りないのではないでしょうか?

台詞やCGにばかり頼って、心のこもった「想像力」を掻き立てる映像が少ない気がします。

もう一度、「観て気持ちを感じる」と言う原点に立ち返った映画を観たくなりました。

それも現代の技術をフルに活用した映画を、です。

どれだけ素晴らしい映画が出来るでしょうか?

きっと世界に通じる傑作が生まれるような気がします。


この映画の舞台は、長野県松本市。

山に囲まれた、歴史ある街です。

歴史ある場所で必ず起こる、地元民と新参者のトラブル。

それを反映するように転校生の俊介は、ミネさと初日からトラブルになり、殴り合いの喧嘩から理解し合うようになります。

ミネさの親友トンダは、そんな二人を快く思いません。

が、ある日トモを助けているトンダを2人が助けたことにより、4人に友情が生まれるのです。

ロックバンド「クライム」を通じて絆を深めていく3人と、助けられた1人。

レコードショップでの事件が4人の絆を更に深めていき、東京でライブを観たことが4人に大きな夢を抱かせます。

「ロックをやる!」

酒もタバコもやるし、バイクも乗る。でも決して不良ではない4人に教師たちは、一方的で良い顔をしません。

しかしそんな目も気にせず4人はバイトにせいを出し、少しずつ楽器を買い揃えていきます。

そんなある日ミネさがこんな新聞記事を見つけます。

「郷土賞」

賞金が目当てという不純な動機ではありましたが、原稿用紙に起こすため世間に対する不満を互いに語り合うことによって、4人はやれば出来ると言うことを知るのです。

やがて、憧れのクライムのデビュー記念日に合わせて、自分たちの初ライブを開くためによりいっそう頑張るのですが・・・


DVDは無く、ビデオ自体も置いてあるレンタル店が少ない作品ではありますが、自身が懐かしさを感じるため、そして多感な世代の少年少女に接するための切っ掛けのひとつとして、是非ご覧になって頂きたいと思います。


さて、懐かしくマイナーな作品が続いてしまったので、次回は最近の作品を選んでみました。

日本では年に1本あるかないかというSF超大作であり、少年時代の胸の高鳴りを感じられる、そして私の中では邦画BEST5に入る、山崎貴監督作品「ジュブナイル」です。

レンタルで簡単に見ることが出来ますので、是非ご覧になって下さい。


それでは、また。


1988年日本映画 100分

監督 長崎俊一

主演 岡本健一 成田昭次 高橋一也 前田耕陽 あべ静江

2004年10月3日日曜日

ミリイ 少年は空を飛んだ

あなたは心に傷を背負っていますか?

そして少年や少女でなくなった今でも夢を信じていますか?

どちらもYesなら、この映画を試してみて下さい。

その上で、判断をして欲しいのです。

そう、何事も行動しなければ始まらないし、乗り越えられないのですから。


日本でこの映画は、しばらくの間幻の作品になっていました。

当時ビデオ業界は急成長を遂げ、新興企業が既存の会社を吸収したり、映画とはおおよそ関係のない企業がビデオビジネスに乗り出したりしていて、この映画ものその例外ではなかったのです。

松竹映画がFOXビデオと提携し、発売された作品だったのです。

しかし提携はすぐに解消、大作でないことも災いしてレンタル以外では長らく観ることが出来ず、在庫を持っている店もさほど多くなかったことが、幻の作品にしてしまった大きな理由だったのです。

その時代に、この名作に出逢えた私は運が良かったのかもしれません。


この作品はどこか「E.T.」に似ています。しかしUFOや宇宙人が出てこない分、現実的といえるかもしれません。そしてアニメ「ピーターパン」にも通じるものがあります。

しかし悲しいかな、人の視点は様々。

ちょっとでも無理なことを平気で描こうものなら、「つまらない」とか「ふざけている」と思ってしまう人が多いのも事実。

そんな人に、この映画はお薦め出来ません。


ストーリーは・・・

父親の死から立ち直れない、娘ミリイと弟、そして母。3人が新しい街へ越してきたことから始まります。

隣の家には不思議な雰囲気の漂う無口な少年エリック。

ミリイの通う学校、同じクラスにエリックがいたことから、二人は少しずつ接近していきます。

しかしエリックには、乗り越えられない大きな障害があったのです。

「自閉症」と「両親との死別」。殻に閉じこもっていても、自分ではどうしようも出来ない。そして会いたくても永遠に会うことが出来ない。二つの悲しみがエリックを取り巻いていたのです。

それでも健気に接するミリイに、エリックは次第に心を開いていきます。

そしてエリックもミリイたちの傷を癒し、少しずつ状況は好転していくのですが・・・

おそらくご覧になっていない方が多いと思いますので、これ以上は語らないことにします。

是非、ご覧になって下さい。

荒んだ心が、少年や少女だった頃のさわやかな心に、ほんの少しだけ戻れるかもしれませんよ。


DVDに収録されている監督の解説では、この映画のテーマは「救済」と「苦境を乗り切ること」だそうです。

しばらくの間、精神的にも経済的にも苦しい生活をしていた当時に出会ったから共感出来たとばかり思っていましたが、このコメントを書くために数年ぶりに観て、間違いだったことに気づきました。

当時は泣かなかったのですが、今回私は不覚にも3回程泣かされてしまいました。

「今」でなければ判らない何かが、この映画にはあったのかもしれません。

そして、こう思いました。

古い映画を、見返すことも良いものだ、と。

今でなければ判らない「何か」に出会えるかもしれないのですから。


あなたは好きな映画を、何年も観ていなかったりしませんか?

もしそうなら、DVDが安く購入出来る今、是非買っておくべきだと思います。

それが、本当の幻の作品になってしまう前に・・・


さて、次回ですが、その「幻の作品」になってしまうかもしれない映画です。


「ロックよ、静かに流れよ」


知っていますか?もし知らなければ、


男闘呼組を知っている方は多いのではないでしょうか?

そう、解散してしまいましたがジャニーズが鳴り物入りでデビューさせたグループです。

「ジャニーズの映画は嫌だ!」そう言って敬遠している方にこそ、この作品は見て頂きたいのです。

実話を元にした映画は、アタリが多いと思いませんか?

この作品もそんな中のひとつです。

そして、この時代の邦画に多い、メーカーの都合や版権等の複雑さから再発売されない「幻の作品」なのです。

現に有名な監督であるにもかかわらずDVDは発売されていません。

それどころか、私の記憶が正しければレンタル用としてリリースされたのみで、販売用は存在していないはずです(中古は別ですが絶対的な玉不足なので見つかる方が奇跡かもしれません)。

なので、昔から営業している近所のレンタルビデオ屋に足を運んで探してみて下さい。


・・・ひょっとすると私も観ることが出来ないかもしれませんが(笑)

もしその場合は、あらためて別の作品を紹介致します。


それでは、また。


1986年アメリカ映画 108分

監督 ニック・キャッスル

主演 ルーシー・ディキンズ ジェイ・アンダーウッド