2009年3月20日金曜日

ワルキューレ(紹介編)

みなさま、お久しぶりです、kiyohikoです。

花粉症と黄砂が猛威をふるっていますが、みなさまはいかがでしょうか?


さて前回別の作品を予告していたのですが、今新作映画を観に行く機会があったので、今回は内容を変更します。

そしてその映画は今日公開されたばかりなので、ネタバレもしないように「紹介編」とさせていただきます。


その作品とは「ワルキューレ」

トム・クルーズが実在した軍人シュタウフェンベルク大佐を演じています

製作と監督は「ユージュアル・サスペクツ」で全米に衝撃を与えた、ブライアン・シンガー。

ここ最近アメコミ原作の映画が続いていましたが、今回は初めて実話に挑みます。

ヒトラー暗殺を企てた人々に焦点を当てた非常に重たい内容で、非常時に発動されるある作戦を逆手に政府の転覆と自由を手に入れようとする物語です。


それでは本題に入りましょう。


歴史にはふたつの側面があります。

ひとつは、教科書などに載り学校で一度は習う事実。そこで知識を得た上で、その後の考え方や人生に少なからず影響を与えています。ただし大抵の人間は長い歴史を学ぶ都合上大きな出来事ばかりで、よほどの興味を持たなければ小さな出来事はこれに該当しません。

もうひとつは、教科書などには載らない事実。学校を卒業した後、何らかの形で情報として入っては来ますが、既に歴史の骨格を学んでいるので、その人の考え方や人生にさほど大きな影響は与えません。

例えれば、日本が戦った太平洋戦争はひとつとしてとれば大きな出来事ですが、その中には沢山の作戦や、出来事、偶然などが重なり、複雑に絡み合っています。そうしてひとつの歴史となっているのです。

それでも私たちが高校生までの間に習うのは、その中のほんの一部。日本人の行った残虐な行為などは、深くは語られません。

私たちは後に、日本人が行ってきた残虐さを知ることとなるのですが、その影響力は「全員が同じ事実を突きつけられる学生」である時に学ぶ程ではないでしょう。

今回ご紹介する映画「ワルキューレ」の内容は、日本人にとって後者の側面を持っています。

ドイツと言う国が周辺諸国を占領し、異人種を虐殺しつつ勢力を拡大しますが、やがて衰退し、最後にヒトラーは自決する。ほとんどのドイツ人は「悪」である、と。

多くの日本人が学んだ歴史から把握しているのは、この程度です。

「ドイツが残虐な行為を行ってきた」としか認識が無く「悪」になってしまうのですが、その残虐行為を止める為に命をかけた人々が多数いた、と言うのは残念ながら日本人にはあまり知られていません。

そう言う意味では「シンドラーのリスト」なども同じかも知れませんね。


この映画「ワルキューレ」は、ドイツ人の魂を救うために命を捧げた人々への鎮魂歌であると同時に、人間はどうあるべきか?と言う大きなテーマを私たちに突きつけています。

そう、この映画はかなり骨太な内容なのです。


みなさまは結末の見える映画ってどう思われますか?

大抵、途中からつまらなくなりますよね。大逆転があるかな・・・と期待していると、さらにつまらなくなってしまいます。

ベストセラーの小説などが原作だったりすると、それを避ける為に新たな結末になったりすることも多々ありますが、歴史を描く映画では、そうはいきません。せいぜい違った解釈を加える程度までしか出来ないでしょう。

特に「実話映画」をうたっていれば、その違った解釈さえも許されない状況になります。なぜなら実話には、生死に関わらずその出来事に携わった人がいるのです。映画を造る以上、その人々に最大限の敬意を払わねばなりません。

この映画には、もうひとつ難しい理由が存在します。

歴史で学んだ「ヒトラーは自決する」と言う事実がある以上、この映画の作戦は失敗し破綻してしまうのは明白です。

そう、結末が見えているのです。

ただ私たちがそこに至る経緯をほとんど知らないと言うのは、この物語を楽しむ要素のひとつとしてあるかもしれません。

でも作戦が失敗することは明白です。

映画を観る前は、この難しい題材をどう料理するんだろう?そればかりが気になっていました。

どこかを間違えば、一気にシラケた映画になってしまうからです。

しかし観終えてまず感じたのは、素晴らしい内容、と言うこと。

緩急の間が良く、音楽も決して本編を喰わないがでも自己主張をしている。そして音楽のかからないシーンも効果的に緊張感を演出。

それぞれの登場人物の心を感じさせる楽曲やカメラワークも見事だと思います。

特に後半は緊張に次ぐ緊張の連続で隙がなく、まさに手に汗を握る展開。既に与えられた結末に向け、一気に進んで行きます。

配役も含めて、全てがうまく絡み合い、素晴らしい仕事をし、良く練られた映画になっています。


そして私自身の個人的な感想ですが「信念を持って生きなければ」そう思いました。


この「ワルキューレ」は観て損の無い映画であるだけでなく、今まさに歴史を学んでいる学生たちにも是非見せたい、いや、観なければならない映画だ、と強く感じました。

戦争映画とはほとんどの場合、人間が血を流し殺し合う映画です。残虐性ばかりが強調され、教育には良くないとの声も聞きますが、果たしてそれが全ての戦争映画に当てはまるのでしょうか?

そんな訳はありません。

この映画には人間が人間として生きる上で大切な、「信念を貫く意志」が描かれています。

自らが殺されかもしれないと言うのを承知の上で、ドイツを国民の為に取り戻そうと多くの人間が団結するのです。

たったひとつの目的、ヒトラーを殺す為に。

殺人を肯定する訳ではありませんが、この歴史の場合はそうしなければより多くの命が奪われていたことでしょう。

ワルキューレ作戦で暗殺されそうになったと言う事実が、後の自決を決定づけたのかもしれません。

ただ、歴史に「もしも」は無いのですが・・・

目的の為に様々な思惑を持つ人間が集まると言うことは、たったひとつの裏切りや失敗で破綻すると言う要素もはらんでいます。

軍人や政治家と言う生き様や存在意義の違う人が沢山関わるからこそ、それはより深く、そしてより複雑に絡み合ってしまいます。

周知の事実ですが、人間誰もが同じ考えではありません。押さえつけようとすれば、必ずほころびます。多くの様々な決断が重なり続け、歴史が作られているのです。

そしてそれは、そのまま自分の人生にも繁栄していると言えます。


私はこの映画「ワルキューレ」はただの戦争映画ではなく、人生を見つめ直し、この先の生き様に大きな影響を与える映画だと思っています。


あなたは観に行かれますか?

私は是非お勧めします。

それには理由があります。

地方では、洋画の上映期間が明らかに短くなっています。

毎週何かが公開されるなど作品の多さが際立っているだけでなく、洋画はDVD化が早いと多くの映画好きな人は知っています。急ぐ必要は無い、おそらくそんな理由があるんだと思います。

でもシネコンは、昔のように同じ作品を一日中まわすのではなく売り上げの少ない作品は減らし、新しい作品にシフトしていまうのです。

つまり「どの時間でも自由にスクリーン」で観られる環境は公開直後だけと言うことです。

迷っていたら、より観づらい環境になってしまいます。

何よりもやはり、映画はスクリーンで観るのがベストですから。

気になったら即行動、映画に関しては言えると思います。

それに、この作品のパンフレットは情報量が豊富で、知らなかった事実を学ぶには十分な量の歴史が語られています。劇場へ足を運び、買って損の無いパンフレットだと思います。(私は常に買いますが 笑)


それでも迷ってますか?

ではひとつ、秘密の情報を。

字幕が無いため英語の聞き取りが出来る人に限定されてしまうのですが、とあるパソコンメーカーのアメリカの公式サイトで、「ワルキューレ」の最初の6分間が観られるのです。

もちろん無料です。今日現在は、まだ観られました。

興味のある方は、是非探してみてください。それからでも遅くはないでしょう。


次回は、前回の予告通り「レ・ミゼラブル 輝く光の中で」をお贈りしたいと思います。

更新はちょっと先になりますが、それまでお待ちくださいませ。


それでは、また!



映画データ


2008年アメリカ映画 120分


監督   ブライアン・シンガー

脚本   クリストファー・マッカリー ネイサン・アレクサンダー

製作   ブライアン・シンガー クリストファー・マッカリー ギルバート・アドラー

撮影監督 ニュートン・トーマス・サイジェル

編集   ジョン・オットマン

衣装   ジョアンナ・ジョンストン

音楽   ジョン・オットマン

出演   トム・クルーズ ケネス・ブラナー ビル・ナイ トム・ウィルキンソン テレンス・スタンプ カリス・ファン・ハウテン トーマス・クレッチマン エディ・イザード ジェイミー・パーカー クリスチャン・ベルケル デヴィッド・バンバー 他