2006年4月29日土曜日

世界の中心で、愛を叫ぶ

2週間後の更新・・・また守れませんでした。

いつもの事ながら、大変申し訳ありません。

今月は、もう一つのHP更新作業に忙しく、時間が割けませんでした。

今しか会えない季節の証に出会いに言っていました。

今年で4年目になる「桜の旅」です。

毎週のようにあちこちへ出掛けて写真を撮ってきましたので、お時間のある方は是非「きまぐれ写真館」をお尋ね下さいませ。

その「桜の旅」もいよいよ佳境です。

来月はこちらに専念出来そうです。

と言う事で、これまでのお詫びをかねて5月は毎週更新を宣言します。

それから今までとは違う形のコラムも考えていますので、是非楽しみにしていて下さいませ。


さて、本題に入ります。

今回のコラムではストーリー紹介は省きます。日本映画の歴代興行収入で10位に入る程の作品であり沢山の方が観ている事と、いつもと違った題材を扱いたいのが理由です。その題材は後程。


この映画がヒットした要因は何でしょうか?

原作がベストセラー。私は未読ですが泣ける小説として有名です。

役者が有名。朔太郎の現在と過去を演じる大沢たかおさんと森山未來さんはそれぞれ有名です。それから婚約者である律子を演じる柴咲コウさんも「黄泉がえり」での好演依頼、日本の映画には欠かせない存在になっています。

その他にも主題歌を歌う平井堅さんや、途中で挿入される名曲の数々もヒットの要因であると言えるでしょう。

これだけ挙げると、なるべくしてなった興行収入10位とも思えます。

恐らくこの映画を企画する段階から数多くの方が携わり、原作の良さに惹かれ愛情を注いで造り上げたのでしょうね。

しかし私は、もうふたつ違う要素が関わっていると思うのです。

それは些細な事なのですが、ひとつ目は「泣きのツボ」です。

最近の映画にかかわらず、興行収入の良い作品はリピート率が高いと言えます。

同じ映画を、何度も映画館で見るという事です。この映画もきっとそんな人々に支えられたと言えるのではないでしょうか?

私は残念ながらこの作品を映画館では観ていません。DVDを購入し何度か観ています。しかし観る度にしっかりと泣けました。

映画館で観るのとTVで観るのでは感動の度合いが違ってきます。それなのにです。

大きなスクリーンで観る方が圧倒的に良い環境のはずなのですが。

そして何度も観る内に、泣ける箇所が増えていくのです。

その理由が「泣きのツボ」です。

以前このコラムで書いた「サトラレ」にも共通して言える事なのですが、見えてしまっている結末が観客の思考を働かせて涙を誘うのです。

ちょっと分かりづらいでしょうか?

簡単に説明しましょう。

この作品では、主人公の恋人である亜紀は白血病に冒されています。それは初めて観る人でも分かる事実(序盤では直接的に描いていませんが)として描かれています。

この病気は決して不治の病ではありませんが、今でも多くの方が亡くなっています。回想シーンの1986年当時は日本骨髄バンク等なく、さらに辛い状況だったと言えるのでしょう。

今もそうですが恐らくその当時白血病になった人は、誰もが死を覚悟していたはずです。

亜紀も同様です。

そして観客も、その気持ちを察しているわけです。

「この先には死が待っている」と。

その事実が、徐々にボディーブローのように効いてくるのです。

段々と悪くなる病状。刻々と近づく死。果たしたくても果たせない約束。

空港での亜紀の叫びに、この映画の悲しみの全てが集約されていると言っても過言ではないでしょう。

初めて観た時に、その「泣きのツボ」にはまると、次からはそのツボに直接関わるシーンでさらに想像力が働き、結末が頭を過ぎる。そしてさらに涙が溢れる、と言った具合です。

映画とは不思議で、最初に観た時は大したことのない映画でも、何度か観ていく内に、その間に経験した記憶が、映画へ大きく作用し、最高の作品になってしまったりするのです。

それはきっと、映画そのものに心があり、愛情があるからだと、私は思います。

この作品だって、ツッコミどころはいくらでもあります。

でもそれはどうでも良いんです。


映画は、心が宿っているかも知れないけれど、事実ではないのですから。


もう一つの要素は、ロケ地です。

都会は常に変わり行くもの。ほんの数年前の作品でも時代が変わったなぁと感じさせてしまいます。だから東京のような都会では、懐かしさはあまり感じません。

この作品の舞台は香川県。ここ数年で数々の映画のロケ地として注目を集めています。前回の「サマータイムマシンブルース」もそうです。

ちょっとした田舎である場所は、日本の何処にあるかには関係なく、ひとの心に安らぎや懐かしさを与えるものです。

この作品でも昭和後期の面影を上手く利用し、違和感なく当時を思い起こさせるのに一役買っているのです。

そんなロケ地の魅力に、今人々が取り付かれつつあります。

映画で得た感動を、実際自分の目で確かめようとするのです。

実際にこの作品のロケ地は、映画公開後から沢山の人々が訪れる名所になったそうです。

時に防波堤の上で叫んでみたり、時に路面電車の停車場にたたずんでみたり、と。

どこにでもありそうだけど、そこにしかない、そんな魅力に惹かれているのです。

あなたはロケ地を訪れた事がありますか?

お気に入りの作品のロケ地を、是非一度訪れてみて下さい。

次にその作品を観た時、今までと違う感動があなたを優しく包んでくれるはずですよ。


些細な事ですが、この二つの要素はどんな映画にも何気なく散りばめられていて、何気なく私たちの心に作用している。という事を知って頂きたかったのです。

なぜ感動したのか?を冷静に考える事はないと思いますが、それを知る事でさらに映画を楽しく見られると言う事を、どうか忘れないで下さい。


さて次回のコラムは、そんなロケ地の魅力に魅せられた沢山の人々が訪れた、そして「日本で一番有名」な映画の町である、広島県尾道市を舞台にした「さびしんぼう」を、ロケ地を訪ねた時の思い出と共にお贈りしたいと思います。

お楽しみに!


それでは、また!!

2004年日本映画  138分

監督・脚本   行定勲

原作      片山恭一

主題歌     「瞳をとじて」平井堅 

撮影      篠田昇

美術      山口修

録音      伊藤裕規

照明      中村裕樹

編集      今井剛

音楽      めいなCo.

出演      大沢たかお 柴咲コウ 長澤まさみ 森山未來 山崎努 他