2008年1月17日木曜日

復活の日

みなさまお久しぶりです、kiyohikoです。

「11月の初旬には更新出来ます」と書いておきながら、早くも3ヶ月が過ぎてしまいました。

年末年始の挨拶も出来ずに滞っていた事をお許しください。

勤務先の人手不足から休みをあまり取れない状況が続き、こちらまで手が回りませんでした。

私は親友がオーナーを勤めるコンビニで働いています。以前コンビニと言えば華やかな仕事のひとつだったかもしれません。

しかし今は、仕事量の多さから敬遠されつつある仕事になってしまったようで、求人を出してもほとんど応募がない状況。

現に私の勤める夜勤は、昨年9月中旬に一人辞めて以来、つい先週までほとんど応募がなかったのです。

しかし、待った甲斐がありました。やっと優秀な人材が決まったおかげで、こうして更新にこぎ着けました。


でもここでもうひとつお知らせしなければならない事があります。


今回「復活の日」をお送りした後、しばらくの間この極私的感涙映画評を休止しなければならなくなりました。

私自身が新たなプロジェクトに参加する事となったからです。

そのプロジェクトとは、私の尊敬する本広克行監督の4月に公開される最新作「少林少女」の応援ブログ。

本広監督の作品を愛して止まない全国の有志と共に、一緒に映画を盛り上げていこうと言う企画なのです。

そんなプロジェクトはめずらしくないとお思いかもしれませんが、今までとはちょっと違うのです。

素人で、映画関係者でもない私たちなのに「オフィシャル」なのです。

それだけ責任も重大で、色々な制約がありますが、「いつか何らかの形で応援したい」と思っていた私は、もちろん迷わずに参加を決意しました。

この企画ははじまったばかりの事なので、今後どのような展開になるもかも分かりません。

しかし始めた以上は、最善を尽くしたいと考えています。

となると、こちらのブログには力を入れられなくなってしまいます。

そこで休止を決意しました。

本来なら休止するべきではないのかもしれません。出来る限り頑張って、ダメなら休止すればいいとも思えます。

でも始める以上は、最初から集中したいのが私の思いです。

なので休止することをどうかお許しください。

もし、更新出来る余裕があると分かったら、その時点で復活致しますので、どうか気長にお待ちくださいませ。


さて本題に入りましょう。

今回お贈りする映画「復活の日」は、原作を小松左京さん、監督を深作欣二さんが務め、製作はあの角川春樹さん。

今はもう実現しない豪華な製作陣に加え、日米の俳優が総結集したキャストも、当時の話題をさらいました。

そして当時としては世界初の試みである南極ロケに、実際に軍から借りた潜水艦等を使用しリアルさも追求した、まさに贅を尽くした映画でした。


物語は冬の東ドイツからはじまります。遺伝子操作により誕生した最強最悪のウィルスMM-88が、存在に危機を感じた科学者によって持ち出されます。国を越えた協力によりワクチンを造って欲しいと願った為に犯罪を犯したのです。

しかしその行為は軍の知る事となり、博士は射殺。間一髪でウィルスを手に入れたスパイは猛吹雪の中をセスナで逃げます。が、レーダーから逃れる為の低空飛行が仇となり、山に激突、ウィルスは冬山にばらまかれてしまったのでした。

やがて春になり、ヨーロッパ各地では動物たちに異変が起こり始めます。

家畜たちが謎の死を遂げたのです。その死は動物だけにとどまらず、すぐに人間もその脅威にさらされてしまいました。

2ヶ月もしないうちにヨーロッパ全土は壊滅的な打撃を受け、その波はアフリカ、アジア、そして世界各国へと飛び火して行きます。

人類は予想もしていなかった、「急速な破滅の道」へと突き進んで行くのです・・・南極で暮らす僅かな人々を残して。


2時間30分を越える中身は、今見ても重厚さが漂い、そこから放たれるメッセージは色褪せていません。

そればかりか、30年近く前に造られた映画上の空想の危機が、今もって私たちを取り巻いている事に、驚きを感じます。

それはやはり原作が素晴らしいからでしょう。

私が生まれて初めて読んだ単行本の小説は、この「復活の日」でした。

克明に記されたデータや描写に、衝撃を受けた事は言うまでもありません。

人間の手でいじられた「病原菌」が人を死に至らしめるだけでなく、それまでに人間が犯してきた過ちが、最後通牒のように生き残った人間たちへ降り掛かる。まるで神が与えた罰のように。

そして、その過程が手に取るように見えて来る原作。

一度読まれる事をお奨めします。

その上でこの映画を観ると、さらに魅力が増し、一生忘れられない映画となるでしょう。


さて以前、ちょっと趣向を代えてお贈りします、と書きましたが、みなさまは覚えていらっしゃいますか?


私がこの映画に関して書きたかった事、それはリメイクへの希望、です。

昨今、日本もアメリカも映画のネタ不足からリメイクが続いています。

以前紹介した「日本沈没」も長年の時を経てリメイクされました。その出来は賛否両論ですが、私の感想はこちらをご覧下さい。

残念ながらこの「復活の日」は、リメイクの噂さえ聞きません。

なぜかは分かりませんが、あまりのスケールの大きさは、引き受ける事になる監督にとっては大いなるプレッシャーになるに違いありません。

もしかしたら、リメイクは無いかもしれません。

ならば、もしリメイクしたらどんな物語になるだろう?と考えてみたのです。

ここから先は、私の独り言と思って、読んで下さい。


まずは時代設定。

現代を舞台にすると、この映画が訴えている願いが薄れてしまうでしょう。

例えば、25年前にはなかったインターネットの存在。

ゆっくりと、そして一方通行気味に流される情報が、南極越冬隊の孤独と苦悩を強調させましたが、もしインターネットがあったら、どうなっていたでしょう?

無事である南極の存在がすぐに知れ渡り、大挙して感染した人間が南極へ押し寄せるでしょう。

ほどなく極寒の地でも感染がはじまり、あっという間に南極も全滅です。

人類へ生き残れなくなってしまいます。

それにこの映画で涙を誘うあるシーンも、存在し得なくなります。

滅び行く世界に取り残された孤独から、無線で助けを求める子供のシーン。何かしてあげたくても、何も出来ない悔しさが、今でも涙を誘います。しかしこれにネットが関わるとなると、「押しっぱなしのスイッチ」と言う悲劇はないですね。

もしネットを使ったテレビ電話などがあれば、少年の勘違いを解いて自殺せずにすんだかもしれません。

他には、故郷日本の状況が全く分からない隊員たちの心の焦り。

これも、インターネットの存在があったなら、消滅してしまうシーンでしょう。

それから、生き残った南極の人々が女性の権利を踏みにじる取り決めをしたシーン。

このシーンも、女性を軽視している人間が多い時代だから許されるシーンだったとも言えます。

私はこのシーンが女性を軽視しているのではなく、それよりも深い、究極の倫理観を問われたら人間はどう判断するのかを表現していると思っています。

しかし、もしリメイクがあってもこのシーンは許されないでしょうね。今の時代では、気分を害する女性が圧倒的に多いでしょう。

と言う事は、夫婦での愛のある行為によって誕生したグリー以外に子供はいない、と言う設定にするのが最善かもしれません。

つまり、この映画の良さは、あの時代でしか表現出来ないものだと言えるのではないでしょうか?

時代の変化がそれだけ激しい、と言う事です。

しかし一方、核の危機に関しては一歩も進歩していません。それどころか後退していると言えます。

ウィルスの恐怖も然りです。

鳥インフルエンザが、間もなく人が感染する病原体へ変異すると言われています。真偽の程は定かではありませんが、過去の歴史を振り返る限り、それは本当でしょう。

この映画程の猛威はふるわないでしょうが、ものすごく大勢の犠牲が出る事は違いありません。

脱線してしまいましたが、年月が経っても「変わるもの」と「変わらないもの」があるのです。

この作品をリメイクする上で大切なのは「変わらないもの」をいかにうまく引き出せるかにかかっている気がするのです。

「復活の日」はある意味でパニック映画だと思います。

原因の分からない恐怖に襲われる、その状況下で、人間の倫理観がどうなるかを描いています。

しかし当時の描写方法は、ここ最近の映画を見慣れた私たちにとっては物足りないと言わざるを得ないでしょう。

このパニック部分を現代の技術と表現方法でいかに料理出来るかによって、人間ドラマがより引き立ってくると思えるのです。

あなたは「タイタニック」をご覧になった事がありますか?

この映画は私のお気に入りのひとつです。特に好きなのは、船が沈み始めてから巻き起こる人間模様。

でもその人間模様を引立てているのは、壮絶な衝突と沈没シーンで(劇場の)観客に一体感を持たせる事に成功したからこそだと私は思うのです。

それと同じ考えで、物語により激しい強弱をつければ、リメイクが前作を越える事も可能なはずなのです。

もちろん、より素晴らしいリメイクが出来てもこの「復活の日」の魅力や良さ、そして完成度は色褪せる事はありません。それだけ、この作品は素晴らしく、邦画の歴史に残る名作だと、私は信じています。


ここまではリメイクが映画だったら、と言う過程で書き記しましたが、それだけとは限りませんね。

テレビシリーズと言う手もありかもしれません。

遥か彼方の記憶で定かではないのですが、小説ではもっと沢山のエピソードがあった気がするのです。

最近のテレビドラマは10~12話で終了するパターンが主です。

時間にすると、8時間くらいでしょうか。

これだけの時間があれば、原作に忠実な映像化も可能なはずです。

幸い、ここ最近の日本のVFX技術は相当高いレベルにあり、今は無くなってしまった街並も再現出来る事は「Always三丁目の夕日」を観れば明らかです。

当時の時代設定のまま、原作を忠実に再現出来るのです。

問題があるとすれば、資金面だけかもしれません。


どうです?21世紀が描く「復活の日」、観てみたいと思いませんか?


さて、今回のコラムはこれでおしまいです。

そして文頭で触れた通り、しばらく休止します。

当面の間、「少林少女」を応援するブログだけを書く事になるので、もしよろしければそちらをご覧下さい。

公式のブログのアドレスはこちらです。

ブログの左にあるカレンダー直下、「同門生道場」の「少林少女 常陸国かしま支部 放浪道場」が私のブログですので、是非お越し下さいませ。


それでは、また!


1980年日本映画 156分


製作 角川春樹

監督 深作欣二

原作 小松左京

脚本 高田宏治 グレゴリー・ナップ 深作欣二

撮影 木村大作

美術 横尾嘉良

録音 紅谷愃一

照明 望月英樹

編集 鈴木晄

音楽 羽田健太郎

翻訳 清水俊二 戸田奈津子

出演 草刈正雄 渡瀬恒彦 夏八木勲 多岐川裕美 永島敏行 森田健作 千葉真一 緒形拳 オリビア・ハッセー グレン・フォード ジョージ・ケネディ ボー・スベンソン エドワード・J・オルモス チャック・コナーズ ヘンリー・シルバ ロバート・ボーン