実はこの映画、観る予定の全くなかった作品でした。
切っ掛けは、この年の夏世界各地を席巻したSF大作「スターウォーズ ジェダイの復讐」を観たことから始まります。
当時、ガンダムを初めとする様々なプラモデルに熱中し、その関係で親しくなったとも言える友人と初日に銚子の映画館に観に行ったのでした。地方の映画館が衰退し始めていた当時としては非常に珍しい、映画館前に上映待ちの人が並んでいたことを今でもハッキリと覚えています。
その映画上映前に流れた予告編が、ジョン・バダム監督の「ブルーサンダー」でした。
メカ大好きの私とその友人は、切れの良いシャープなヘリコプターに魅せられ「絶対観に行こう!」と誓い、その秋に二人で同じ映画館を訪れたのです。
最近の映画では全くと言っていい程無くなってしまいましたが、この頃の地方の映画は何かしら併映作品をつけるのが当たり前で、その併映作品が「アウトサイダー」だったのです。
衝撃を受けました。それまで観ていたSF映画は、どちらかと言えば現実逃避な内容。でもこの作品は違います。
「リアル」なのです。映画は所詮「嘘」と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、この作品に出てくる全ての登場人物に嘘偽りが無く、そこにいるような錯覚に陥ったのです。
あっという間の90分。
映画を観ながら「泣く」なんて「恥ずかしいこと」と信じて疑わなかった中学生の私は、隣に友人がいることもあり必死に涙を堪えました。今思えば勿体ないことですが・・・生まれて初めて出会った感動映画で「泣くのを我慢」してしまったのですから。
でもこの映画を見終えた後、確かに何かが変わったのです。
SF好きの少年が、ドラマ好きの青年へ変化した瞬間だったのかもしれません。
この作品は、そんな私の忘れられない大切な映画であり、バイブルです。
現在、「アウトサイダー」は昨年公開された20周年記念ニュープリント&新翻訳版のDVDが入手可能ですが、今回私が観たのはその前に発売されたものです。
映画の内容は・・・
単純に分かりやすく短くまとめると、恋愛色をかなり薄くした「ウエストサイド物語」でしょうか。
でもミュージカルでなく、そして最近の映画ではすっかり忘れ去られた「古き良き時代の映画と映画音楽の形」を正統派として描いた作品と言えるでしょう。作曲がコッポラ監督の実の父であるということも、この時代にとかく軽視されがちだった映画音楽が、映画に埋もれずしかも感情をコントロールしてくれる美しい旋律が生まれた理由なのかもしれません。
特筆すべき事はいくつもあるのですが、まずは豪華なキャスト。
80年代から90年代にかけて、ハリウッド映画で大活躍をしたスターたちが総出演と言っても過言ではありません。マッド・ディロン(ドラッグストア・カウボーイ)、ダイアン・レイン(コットンクラブ)、トーマス・ハウエル(ヒッチャー)、ラルフ・マッチオ(ベストキッド)、パトリック・スウェイジ(ゴースト ニューヨークの幻)、そして端役ではありますが、あのトム・クルーズが今では想像もつかない程不良な顔で演技をしています。
主題歌はステーヴィー・ワンダーの「ステイ・ゴールド」。
劇中で最も忘れられない名台詞をそのままタイトルにしてしまう程に、気合いの入った名曲です。
版権等の問題で長年レコード&CD化されていませんでしたが、某大手自動車メーカーのCMソングとしてリリースされ、現在はベスト版等で入手可能となっていますので、映画をご覧になって気に入られた方は是非お買い求めください。
この映画と出会って20年経ちましたが、ラストシーンでは未だに涙が溢れます。
コッポラ映画史上、おそらく最もお金のかからなかったこの作品、あなたはどうご覧になりましたか?どんな感想を持たれましたか?
私にとっては、「心を洗ってくれる」そんな映画でしょうか。
次回は邦画です。最も気に入っている3作品をあえて外して、何にしようかと悩んだのですが・・・
現在、最新作「サマー・タイムマシン・ブルース」を撮影中の本広克行監督作品「スペーストラベラーズ」です。
また、月末にお会いしましょう!
それでは、また。
1983年アメリカ映画 91分
監督 フランシス・フォード・コッポラ
主演 トーマス・ハウエル
音楽 カーマイン・コッポラ
主題歌 ステーヴィー・ワンダー「ステイ・ゴールド」
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