この映画を哲学的と表現する人がいます。少なくない事も事実です。
でも私には、決して哲学的には見えません。
なぜなら、主人公が科学者であっても、その心を突き動かしているのは「夢」であり、その行動を支えているのは「情熱」だからです。
私にとって「夢」のある映画のひとつです。
物語の進行は至って地味でシンプルです。
2時間半もあるにも関わらず、主人公が宇宙からの信号をキャッチし、政府までも突き動かし、大きな困難を乗り越えて旅立ち帰ってくると、ごく簡単にまとめられます。
SF映画にありがちなストーリーの複雑さを取り除いた部分に、しっかりとした人間ドラマを描いています。
それは恋愛であったり、上下関係だったり、宗教と科学であったりします。
地球上の人間関係の縮図とでも言えるのではないでしょうか?
この映画のスケールの大きさと、内に秘めたメッセージを感じます。
しかしそれは同時に、観る人によって様々な解釈を生み、SF映画であるのに科学的ではなく、人間くささをも生み出します。そこに「哲学的」映画と言われる所以があるのかも知れない、と私は思います。
さて、一般的な表現に当てはめようとすれば、この映画の中に宇宙人は登場したとは言えません。
そして主人公が宇宙旅行を体験したとも言い難いのです。
科学的「証拠」が何一つ無いのですから。
なのに行ったと信じられるのは、そこにきっと夢があるからではないでしょうか?
夢と言っても色んな捉え方がありますが、漠然とした目標ではなく、なんと言って良いのか分かりませんがこんな事があったらいいな、と言うようなものだと思って下さい。
そう言う夢がない人には、この映画はきっと駄作に映るでしょう。
事実、私がレンタルビデオ店で勤めている時に、この作品を勧めても評価は真っ二つでした。
子供が今すぐ離れた場所まで飛んでいきたい、と考えても常識と知識を蓄えた人間なら「無理だ」と一蹴するに違いありません。
確かに、常識と知識に照らし合わせれば無理です。
しかしこれはどうでしょうか?
物語の中で主人公が熱意のあまりに暴走して言ってしまう事があります。
そう「ライト兄弟」です。
当時は、なんてバカげた事をしているんだと思われていたに違いありません。
でも「人が空を飛ぶ」という夢は実現し、百年経った今では誰もがごく身近に利用出来るまでに至っています。
科学的な事でありながらも、この大きな事実は「空を飛びたい」という漠然とした夢が、人の心と行動を突き動かし、実現させたのです。
そう、それが紛れもない事実なのです。
だとしたら、この映画で起こった事も、いつか叶う日が来るかも知れません。
いや、いつかきっと来るでしょう。
そうして人類は進歩してきたのですから。
私が生きている内に、地球外生物と会える日が来る事を祈って・・・
さて今回のコラムはいきなり熱く語ってしまったので、ここからはちょっと脱線したいと思います。
まずは映画のその後について。
実は何度か続編の企画が上がって、未だに実現されていないようなのです。
私個人としては、造って欲しくありません。
なぜなら、漠然とした夢を、ハッキリとした形に描かずに感動を与えてくれた作品の続編に何を求めるか?そこが恐いのです。
もっと具体的に地球外生物を描かなくてはならないでしょうし、更に大きな試練と人間社会を描かなければならないでしょう。
3時間弱に収めきれるでしょうか?
中途半端に妥協してまとめるなど、決して許されるものではないはずです。
そして何より、この映画の原作者カール・セーガン氏は、すでにこの世にいないのです。
原作者の意図したものが描けるわけはありません。
だから絶対に反対なのです。
次は物語に登場するSETIについてです。
SETIとはSearch for Extra-Terrestrial Intelligenceの略、地球外知的生命体の探査です。
物語の中では、資金難に追い込まれて頓挫しかけます。
実際にこの探査には莫大な資金が必要です。
しかし何とか、現実の世界では続いているのです。そればかりではありません。
取り込んだ膨大なデーターを解析するためにとてつもなく長い時間がかかるのですが、そこを人間の知恵で解決しようとしているのです。
実はここにインターネットが関わってきます。
データーを短く切り刻み、協力者のパソコンに転送、そこで普段は使われていない「パソコンの空き時間」を利用して解析をし、結果を送る仕組みを考え出したのです。
その結果、最新鋭のスーパーコンピューターでも百年以上かかるであろうデーターを効率良く解析しつつあります。
そしてその仕組みは、外なる世界だけにとどまりませんでした。
人間の身体の膨大な遺伝子情報を解析するためにも使われ始めているのです。
宗教や思想の違いで何かと対立していると思われがちな人間ですが、実際はこんな所でひとつにまとまっているのです。
どうです?素晴らしいとは思いませんか?
ちなみに私はSETI at homeと言うプロジェクトに参加しています。もちろん地球外生命体の探査です。
すでに600回近くのデーター解析を行っています。
難しいんじゃ?なんて思っていませんか?決してそんな事はありません。
ソフトウェアをダウンロードし、簡単な個人情報を登録、あとはスクリーンセイバーなり、自分で起動するなりして、解析作業をするだけです。終われば自動的に送信し、また新しいデーターを受け取って同じ作業を繰り返す、たったそれだけです。
あなたも地球外生命探しに協力しませんか?
詳しいアドレスは載せませんが、SETIで日本語のページを検索して頂ければきっとすぐに見つかるはずです。
沢山の人々の夢を叶えるために、あなたも動いてみませんか?
さて最後の脱線はクイズです。
以前コラムでガッツ石松さんの出演について触れた事を覚えていますか?
今回もそれに関連します。
この「コンタクト」にはある有名芸能人の息子さんが出演されています。
その有名芸能人は一体誰でしょうか?
答は次回のコラムにUPしたいと思います。
ひょっとすると若い世代には全く分からない答かも知れませんね(笑)
さて次回は、今回と似たジャンルに該当する作品「ディープインパクト」をお贈りしたいと思います。
地球が壊滅するかも知れないと分かった時、人間は一体どう生きるのか?
彗星の衝突と回避作戦というSF要素と、人間ドラマを上手くミックスした秀作です。
感動作に仕上がっていますので、ご覧になった事がない方は是非、お近くのレンタル店に足を運んで下さい。
それでは、また!
1997年アメリカ映画 150分
監督 ロバート・ゼメキス
原作 カール・セーガン
音楽 アラン・シルベストリ
出演 ジョディー・フォスター マシュー・マコノヒー ジョン・ハート ジェイムズ・ウッズ ディビッド・モース
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