2005年2月15日火曜日

ディープ・インパクト

迫り来る地球の壊滅。

それは自身の死と、愛する人との永遠の別れを意味します。

もしその時が、あなたの生きている内に訪れたら、あなたは一体どんな行動をとるでしょうか?

・・・残り少ない貯金をはたいてやりたかった事を叶える。

・・・浴びるほど酒を飲み続けて、酔ったまま時を迎える。

・・・仕事を一切捨て、愛する人と一緒にその瞬間まで生き続ける。

どれも誰もが考え尽きそうな事です。

でも実際はこうなるであろう、と言う形をこの映画は示してくれています。

やりたかった事を叶えようにも、世界は混乱、秩序は崩壊。

浴びるほど酒を飲んでも、迫り来る死の恐怖に悪酔いするばかりで、虚しさに呑む事をやめるでしょう。

そして愛する人と一緒に居ようとしても、所詮は血の繋がりのない他人。信じていても、自分を生んでくれた家族を選ぶかも知れません。


いきなり重い書き出しになってしまいましたことをお詫びします。

この映画は、かなり似たシチュエーションで進む物語で同時期に公開されたアクション大作「アルマゲドン」とは違い、ドラマに重きを置いています。そのドラマも3つの家族と大統領を中心に描いています。2時間の中に4つの物語という事は、単純に計算しても30分しかないのですが、その短さを感じさせない見事な繋がりで見せてくれます。この辺りは、女性監督の繊細さと、編集の勝利ではないかと思います。

まずはミミ・レダー監督の紹介ですが、恐らく聞き慣れない方が多い事でしょう。でも実は大作ばかりを手掛けている一流監督であり、あのスピルバーグ監督のお気に入りでもあるのです。

監督を手掛けたのは映画としては3作品。

アクション大作「ピースメーカー」、SFドラマ「ディープ・インパクト」、そして社会派で重いテーマを含むドラマ「ペイ・フォワード 可能の王国」、どれも私のお気に入りです。

「ピースメーカー」は、奪われた核弾頭を追う物語ですが女性監督とは思えないほどダイナミックに、そしてしっかりとメッセージを込めて造られた秀作。この作品は映画監督デビュー作ですが、TV界で活躍しただけあってベテラン監督と比べても全く遜色がない仕上がりになっています。

そして「ペイ・フォワード」はひとつの思いつきを実行に移した少年の物語。その行動が世界を変えていくという単純なストーリー展開でありながら、その裏には現代の人間社会に根付く問題をしっかりと描き、こうあるべきではないか?と言うメッセージを込めています。

もし機会がありましたら、ぜひこの2作品はご覧になって頂きたいと思います。

さて、話を「ディープ・インパクト」に戻します。

私がこの映画を初めて観たのは、今はなくなってしまいましたが渋谷のとある大きな映画館でした。

その時に幾つものシーンに涙しながらも、疑問に思った事があるのです。

短く感じるのです。と言うよりは、むしろ物足りなさを感じたのです。

色々考えてみた結果、ひとつの結論に達しました。

世にある映画の幾つかは、本来監督が描こうとしたものとは違う形になる事があります。ハリウッド映画では特に、です。

アメリカで映画は芸術と言うよりは、商売の意味合いが強くなってしまいます。これは沢山のスポンサーや支える人々の多さを考えると仕方のない事でしょう。その為に、一度造られたものに大幅に手を加える事があるのです。ひょっとしたらこの作品は、そんな影響があったのでは?と考えたのです。

実際は映画関係者でない私に知る由はありませんが、恐らくそうだったのではないでしょうか?

一度ご覧になった方も、この点を意識しながらもう一度ご覧になってみてください。どこかおかしいところが、少なからず感じられるはずです。

この映画は私の中で洋画のBEST5に入る作品です。

上記の様な疑問を投げかけたのになぜ?と思われる事でしょう。でも私が映画に求める事は完璧や完成度ではないのです。

「いかに感じ、いかに共感し、いかに泣けるか」

その意味でこの映画は、「タイタニック」に迫るほど素晴らしい作品です。

「タイタニック」に関しては色々書きたい事があるので、いずれこのコラムで取り上げたいと思います。

彗星の発見者である少年の家族と恋人、両親が離婚しているニュースキャスター、そして彗星の破壊のために宇宙に送り込まれた人々と地球に残されたその家族。

迫り来る終末が、その家族たちに試練を与え、観ている者に感情の高ぶりを与えます。

そしてラスト近くで迎える永遠の別れ。それはどの家族にも平等に訪れるのです。

いつしかそれぞれの家族に感情移入し、いつしか涙を流す、私にとってこの映画はそんな体感をさせてくれる大切な作品であるのです。

十数回と観ているはずなのに、今回も泣いてしまいました。今までに泣かなかった意外な場所でもです。

やはり私の中では名作なんだな、とあらためて感じました。


今回は観ていない方にも観て頂きたいので、なるべくネタバレを避けました。なので観た方には物足りなさを感じさせてしまったかも知れませんが、どうかご了承下さい。


さて最後に、ここ数作品で触れたくても触れられなかった事を書きたいと思います。

それは映画音楽についてです。

この作品を担当したのは、ジェームス・ホーナー。

映画が好きで沢山観ているという人でもなければ、ご存じないかも知れません。

古いところでは「48時間」「コマンドー」。大作では「エイリアン2」「フィールド・オブ・ドリームス」「パトリオット・ゲーム」。そして最近では「ブレイブハート」「アポロ13」「タイタニック」「パーフェクト・ストーム」

どうですか?殆どが知っている作品でしょう?でもこれは手掛けた作品のごく一部。毎年、数本の映画音楽を手掛けているベテランです。そしてアクションでもドラマでも、歴史大作でも、何でもこなしています。

私の中では、と言うか、映画音楽を好きな人の中では、恐らく5本の指に入る大御所と呼んでも過言ではないかと思います。

「ディープ・インパクト」の中でもその才能を遺憾なく発揮しています。

時に緊迫感のある場面を、時に哀愁の漂う場面を、そして涙を誘う場面を、様々な楽器を使い分けて演出しているのです。

その中で、特に私のお薦めは物語の中盤。曲をメインにして台詞を除き、2つの家族と大統領のドラマを描き切っているシーン。

夕闇の戦場をバックに響く哀愁の漂うトランペットのような音色が、涙を誘います。

そこで私から、ひとつの提案です。

それは映画を観る際に音楽にこだわる事です。作曲者にこだわるのも良いですが、まずは映画を観る者の感情移入にどれだけ深く関わっているかを、感じてみて下さい。作曲者はそれからでも構わないと思います。

DVDと言う、最高の音質を楽しめる環境があるのですから、是非、音楽に浸って映画を楽しんでみて下さい。


さて、ここで先週のクイズの答です。

「コンタクト」に出演している日本人が、誰の息子であるかという問題でしたが、お分かりになった方はいらっしゃったでしょうか?

答は、コメディアンであり役者でもある大村昆さんです。先週予告した通り、若い方には分からなかったかも知れませんね。


次回はちょっと趣向を変えてみたいと思います。

お贈りするのはギネスブックも認める大作、「男はつらいよ」より最終作「寅次郎 紅の花」です。

そう、日本を代表する監督山田洋次さんの代表作であり、国民的俳優のひとり故渥美清さんの最後の主演でもある作品です。

難しい事は抜きにして、次回は笑って下さいね。


それでは、また。


2001年アメリカ映画 121分

監督 ミミ・レダー

音楽 ジェームス・ホーナー

出演 ティア・レオーニ イライジャ・ウッド ローバート・デュバル モーガン・フリーマン

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