前回、毎週更新をお約束しておきながら、いきなり破ってしまったことをお詫び致します。
これには理由があるのですが、今はまだお話し出来ません。
年末に、ある映画と絡めてお話し出来ると思いますので、どうかそれまでお待ちください。そしてどうかお許しください。
昨年は映画館での邦画の売り上げが21年ぶりに洋画を上回ったそうです。
そこには様々な理由があるのですが、大きな柱として言えるのは、それだけ邦画が元気になって来たと言うことでしょう。ただ、それを維持させる為には、観客を飽きさせず映画館へ運ばせると言う努力が、今後も必要なわけで、よりいっそう邦画のレベルを上げて行かなければならない、と言うことだと思います。
映画であるべき企画だけが映画としてスクリーンに登場しなければならないのです。
TVでも済んでしまう企画なら、私たち観客は映画館へは足を運びません。
それだけは、映画を作る側の方に徹底して欲しいと、一観客である私は切に願います。
それに関連していることなのですが、最近邦画が元気な理由のひとつに「フィルムコミッション」の存在が上げられます。
映画を好きな人なら既にご存知かと思いますが、「フィルムコミッション」とは映画やTV等の撮影に付随する様々な支援を行う組織のことです。
企画段階で映画の撮影場所を探す手伝いをしたり、撮影時のエキストラ手配やボランティアスタッフ等、その活動は多岐にわたります。
しかしこの組織の目的は、それだけにとどまりません。
あなたはロケ地へ行ったことはありますか?
それはきっと、映画等でその場所に特別な思い入れがあるからでしょう。
映画やTV等が「行きたくなる場所」の宣伝を間接的にしてくれる訳です。
「フィルムコミッション」の多くが、自治体が直接関与、または運営している理由は、そこにあります。
営利的な組織ではないけれども、間接的に地元の宣伝活動を行っている訳です。
2001年の8月に全国の協議会が作られて以降、現在では100を越える勢いで増え続けています。
邦画の元気は、これだけ多くの撮影支援組織があるおかげとも言える訳です。
私の住む鹿嶋市には、残念ながらフィルムコミッションは存在しません。
昭和40年代の鹿嶋開発以降、様々な映画やTVの撮影が行われているのに、です。
鹿嶋の立地は、ご存知の方も多いかと思いますが、東京から高速道路で約1時間30分。
東京近郊に本拠地を置く多くの制作会社にとっては、比較的予算もかからず身近にロケを行える場所であるのです。
もちろんTV番組等にも、取り上げてもらいやすい題材が数多く存在しています。
例えばサッカー。最近は優勝から遠ざかっていますが、それでも中継等で多数の製作者たちが訪れています。
他にも自然の産物が、豊富であるとも言えるでしょう。
海や、川、北浦等の釣りも有名です。数多くの芸能人がお忍びで釣りに訪れることもあります。
特に冬場は、ひらめ等の魚を釣る為に、沢山の釣り人が訪れています。
TVの釣り番組等でも良く放送されています。
それだけ鹿嶋と言うのは、映画やTVと近い存在なのです。
なのに、鹿嶋には組織が存在しません。しかし全くその動きがない訳ではありません。
私の友人である市議会議員は、「フィルムコミッション」の重要性を6年前から、議会等で説いています。
すでに一般質問では3度も取り上げているのですが、造ろうと言う動きは残念ながら起こっていません。
でも変わろうとしている兆しはあります。
2~3月にかけては鹿嶋市の協力で2時間もののTVドラマ撮影が行われていました。ある芸能人のご家族が鹿嶋市の出身である為に実現した企画であり、オール鹿嶋ロケと言うのは今回が初めてです。
TV放映は4~5月頃を予定しているそうですが、正式な日程が分かり次第、こちらでもご報告したいと思います。
さて前置きが長くなりましたが、今回お贈りする「夜のピクニック」には、実はフィルムコミッションの存在が欠かせないのです。
既にご覧になった方はお気づきかと思いますが、茨城県各所、特に水戸近辺は数多くの様々な団体が協力してます。
それだけ多くの地元民に支えられた映画なのです。
映画の中心である「歩行祭」を支えるスタッフのごとく、映画を支える為に茨城県民がひとつになった記念すべき作品と言えるのではないでしょうか?
主演をつとめる多部未華子さんは映画「HINOKIO」で本格デビュー後、映画を中心に活躍されている、これからが期待される女優の一人です。
凛としながらも何処か陰があり、それでいて一途なところが印象的でありますが、DVDのコメンタリーを聞くとまた違う一面が垣間みれるので、映画を気に入られた方は、是非コメンタリーを聞くことをお勧めします。
もう一人の主演を務めるのは、石田拓也さん。JUNON SUPERBOYコンテスト出身で、ここ2~3年程TVに映画に活躍の場を広げていることからも、その才能が伺えるかと思います。
その二人のそれぞれの親友役には、西原亜希さんと郭智博さん。西原さんはペンギンと戯れる『suica』で有名ですね。郭さんは岩井俊二監督作品に数多く携わっています。
この映画の魅力的なところのひとつに、個性的な役者がそろっているということがあります。
上記の4人を食ってしまう程のキャラクターが沢山登場します。その役者陣が、学校での雰囲気をよりリアルなものにしてくれているのは間違いないでしょう。
中でも私が気になるのは2人。
1人は、昼に弱くよるに強いロック少年を演じた柄本佑さん。名字からもお分かりかと思いますが、お父さんはあの柄本明氏。個性的な父親にも負けない存在感を、この映画では発揮しています。
もう1人は、すぐに弱音を吐く妄想好きな女性、梨香を演じた貫地谷しほりさん。「スィングガールズ」が有名ですが、最近では大河ドラマに出演、この秋からは連続テレビ小説の主役をつとめる等、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのある女優です。
脇を固める大人たちにも注目しましょう。一見強面ながら、生徒への繊細な優しさを持ち合わせる先生を演じるのは島田久作さん。主人公貴子の母親役には、南果歩さん。一見バラバラに思える個性的な若手陣を、演技で見事に中和する、素晴らしい仕事をしています。
音楽を担当するのはREMEDIOS。ピンと来ないかもしれませんが、「LOVE LETTER」など岩井俊二監督映画には欠かせない存在です。以前は麗美と言う名前で活躍されていた、と付け加えれば30代以降の方には分かるかもしれませんね。本作でも、生徒たちの揺れ動く心情をうまく表現しています。
最後になりましたが、監督は長澤雅彦さん。
「ココニイルコト」で監督デビューを果たして以降、「ソウル」「13階段」などの監督を経て本作に至りますが、映画との関わりはそれ以前からであり、初期の岩井俊二監督作品ではプロデューサーを務め、監督になってからも「はつ恋」の脚本を手がける等、活躍は多岐にわたっています。
「ココニイルコト」は私の好きな映画でもあるので、いつかまた紹介出来たら、と思います。
この映画「夜のピクニック」は観る人によって評価がはっきり別れる作品です。
私の友人には「面白くなかった」と言う感想もあります。
私は「映画の評価とは難しいもの」だと常日頃思ってます。以前レンタル店で店長を務めていた時にいくつも経験してやっと分かったのですが、万人に面白いと言われる作品はありません。
しかしほとんどの観客がつまらないと言う作品でも、その映画が一生を左右する場合もあり、その人に取っては名作でもあるのです。
だから常に、その映画を好きになってもらうには何が必要か?を考えて伝えているつもりなのですが、まだまだ力不足です。
この映画の良さは何?と聞かれると、答えは非常に難しいです。映画を面白くないと言った人が、なぜ面白くないのか、その理由も分かる気もするのです。
ではその答えは?
「体感する」
そんな良さのある映画だと思うのです。似たような経験があればそこに感情移入し、見覚えのある風景があればそれを懐かしむことも「あり」です。
そしてこの映画で何を感じて欲しいかと言うと、学生時代の淡い思い出を、昨日のことのように思い出して欲しいのです。
純粋な気持ちや心をもう一度思い出す切っ掛け、あなたにとってそんな映画であって欲しいのです。
なので今回はストーリーの細かな紹介は一切省きました。ネタバレ基本のこのコラムですが、あえてそれを破ってみたのです。
いかがですか?興味は湧いていただけましたか?
もし観ていただければ幸いです。
そして、良さを感じていただければ、私も幸せです。
さて、短い映画紹介でしたが今回はここで終わりたいと思います。
しかし、いつか別の形で、この映画のロケ地を紹介したいと思います。
今はまだその場に立っていませんが、次回紹介する作品と共に「ロケ地の旅」として紹介するつもりで居ますので、お楽しみに!
そんな訳で次回作は、去年の映画賞を総なめし、独立系映画では無理と言われていた日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞をした、
「フラガール」
をお贈り致します。
私自身の中では、この映画は非常に上位に位置している作品です。
ひょっとすると1回のコラムでは書き切れないかもしれないことを、まずお断りしておきます。
そろそろ桜の季節になってきましたが、皆さんの街ではいつ観られるのでしょうね?
そんな期待をしながらも、また来週、お会い致しましょう!
それでは、また!
映画データ
2006年日本映画 117分
監督 長澤雅彦
原作 恩田陸「夜のピクニック」
脚本 長澤雅彦・三澤慶子
編集 掛須秀一
音楽 REMEDIOS
出演 多部未華子 石田拓也 西原亜希 郭智博 貫地谷しほり 柄本佑 加藤ローサ 島田久作 南果歩 田山涼成 他
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