2007年9月30日日曜日

サイレント・ボイス 愛を虹にのせて

この映画は、一人の少年が起こした行動が世界を変えて行く、と言う物語です。

以前お贈りした「ペイ・フォワード」にも似た作品と言えます。


ご覧になった方が少ないと思われますので、ネタバレをなるべく避け、ご紹介したいと思います。


アメリカのとある地方に住む少年チャックはリトルリーグのエース。彼が投げれば勝利は確実。

彼の父は予備役の軍人で戦闘機のパイロット。チャックはそんな父が大好きで、空に憧れています。

ある日、チャックの友達と父の仲間と共に、手づくりのロケットを打ち上げます。結果は成功。

そのご褒美にと、軍人である父の知人が町に存在する核サイロへと招待してくれます。

期待で胸を膨らませる少年たち。しかし現物を見たチャックは、表情が暗くなります。

「もし人間が正常でなかったらどうなってしまうのだろう?」

その日以来、チャックは不安でたまりません。もし近くで核爆発があったら、人間はあっという間に蒸発。

それが愛する両親や妹だったら・・・

そしてチャックは行動を起こします。

大切な野球の試合で、突然投げる事を辞めてしまったのです。

「核兵器が無くなるまで、ぼくは投げない」と。

周囲は大混乱。しかしそれはほんの始まりに過ぎませんでした。

偶然、新聞の記事を目にしたプロバスケットボールプレーヤーのアメージングは、彼の勇気に賛同します。

アメージングも選手である事を辞めたのです。

そして小さな行動は、やがて世界を巻き込む大きな事件となって広がりを見せて行きます。

はたして、チャックとアメージングの行動の行く末は?


私がこの作品にであったのはレンタル店で働き始めたごく初期の頃だったと思います。

たぶん発売後それほど経たない時期だったはずです。

はずです、と言うのには理由がありまして、実はいつ見たのか記憶が無いのです。

見た事だけは覚えていました。もちろん内容もです。

当時の私に取ってこの作品はきっと、沢山ある映画のうちのひとつだったのでしょう。

「こんな事があったら素晴らしいだろうな」その程度の認識だったのです。

しかし再びこの作品を観終えた今、考えは変わりました。

どんなに難しい事でも行動を起こさなければ始まらない。

どんなに成功する確率が低いと思われる「困難」も、始まりが無ければ「成功」がない、と言う事です。

主人公の少年チャックは「結果がどうなるか分からない」と思いつつも、行動する事を続けました。親友となった選手アメージングもそんな彼を優しく見守りながらも、共に行動する事を続けました。

その姿勢が大切なのです。

時に挫けて、諦める事があるかもしれません。でも、行動を起こす事に意味があるのです。


この映画を既にご覧になった方は、「現代の寓話」と捉える方が多いと思います。

しかし寓話で片付けてしまって良いのでしょうか?

この映画が公開された1987年以降、世界では武器が絡んだ悲しい事件が沢山起きています。

民族紛争から、国同士の戦争、正義の名の下に先進国からの一方的な攻撃、果ては神の名を大儀に掲げ無差別なテロ。

そして悲しいかな、核兵器は未だに無くならず、かえってここ数年で広がりを見せる始末。

この映画が公開された時点で「この映画を現実として捉えよう」と言う心が多ければ、ひょっとすると映画と同じことが起こったかもしれません。

残念ながら、現代の人類は「核兵器の拡散」を止める事が出来ていません。

そればかりでなく、相変わらず国益の駆け引き道具として使っています。

20年間、進歩が無いのです。

それだけでない。

テロリストが台頭する今、かえってマズい状況に陥っているとさえ言えます。

以前紹介した「ピースメーカー」の様な事件さえ、現実に起こりえる可能性が高まっています。


では私たちに、何が出来るのでしょう?


依然とあるTVで、こんな事が紹介されていました。

世界で唯一核攻撃をしたアメリカに、攻撃を受け全身に傷の残る被爆者が、核の恐ろしさを訴えるため各地を回っていると言う内容でした。

以前のアメリカでは、そのような運動を認める程寛容ではなかったようです。非難さえ起こるくらいに拒絶反応を示したようです。

しかしこの数年で、その態度に大きな違いが現れていると言うのです。

ここまで読んだみなさまは、既にお気づきだと思います。

そう「911」のテロが切っ掛けなのです。

それまでの「大義名分」を全て信じ国の行動を疑わなかった人々が、起きてしまってからではありますが、真剣に考え、疑いを持つようになったのです。

そのTVで映し出されたアメリカの学生たちは、目に涙を浮かべ、初めてその残虐さを知ったように見受けられました。きっと、攻撃の正当性は歴史で習ったけれど、その裏側は知らされていなかったのでしょう。


そして私は思いました。

その日感じた気持ちを忘れなければ、きっと残虐な兵器は無くなってくれるはず、と。

例えば、学校でのいじめもそうです。

いじめの切っ掛けはなんであれ、苦しんでいる立場の気持ちを考えて、ほんの少しの勇気を持てば、なくせるはずなのです。


ひょっとすると、まずはそんな小さな事から始めて行かなければならないのかもしれませんね。

私は無宗教ですが、人間はもっと優しくなるべきと常日頃考えています。

時に余計なおせっかいになろうとも、親切等、行動を起こすようにしています。

そして地球上に住む人々の全てが、と行かないまでも、多くの人々がその気持ちを持っていれば、宗教や人種を越え、もっと優しい地球になれると信じています。


どうですか?

あなたはどうおもいますか?


その答えを知る為にも、ぜひこの「サイレント・ボイス 愛を虹にのせて」をご覧になっていただきたいと思います。

と同時に、「ペイフォワード」もご覧いただければ、より深い答えが見つかるかもしれません。


えっ?観るのが面倒くさい?


それじゃ、だめですよ。

全ては行動する事から始まるのですから・・・


さて来週は実際にアメリカで起きた事件を描いた「ユナイテッド93」をお贈りしたいと思います。

多くは語りません。

悲劇の物語です。これほどまでに悲しく、そして勇気とは何かを教えてくれる作品は今まで見た事がありません。

それが実話である事を差し引いても、この作品には観るべき価値があると私は思います。

最近、このコラムでは「紹介編」と「ネタバレ編」に分ける形が多かったので、今回に倣って次回も一回だけのコラムとしてお贈りしたいと思います。

ただ、ネタバレは避けられないと思いますので、是非是非レンタルで構いませんのでご覧下さいませ。

よろしくお願い致します。


それでは、また!



映画データ


1987年アメリカ映画 110分


製作総指揮 ロジャー・M・ロススタイン

脚本・製作 ディビッド・フィールド

監督    マイク・ニューウェル

音楽    エルマー・バーンスタイン

出演    ジョシュア・ゼルキー アレックス・イングリッシュ ウィリアム・ピーターセン ジェイミー・リー・カーチス グレゴリー・ペック 他

0 件のコメント:

コメントを投稿