2009年5月22日金曜日

太陽を盗んだ男

5月も終わりが近づき、だいぶ暑くなってきましたがみなさまはいかがお過ごしでしょうか?

私の住む鹿嶋は太平洋沿いの立地と言うのもあり、気温程の暑さを感じさせず、過ごしやすく感じます。

今年の夏はどうなるんでしょう。暑すぎも問題ですが、寒いのも良くありません。って人間のわがままで贅沢を言っちゃあ、いけませんね(笑)


さて今回お贈りするのは「太陽を盗んだ男」1979年の作品です。

メガホンを取るのは長谷川和彦監督。この映画を含めて、たった2作品しか映画監督をしていないと言う、異色の経歴の持ち主です。

主人公を演じるのは、当時歌やドラマで日本中を席巻した沢田研二さん。この作品でも、その魅力を存分に発揮しています。

そしてもう一人の主役である警部を演じるのは菅原文太さん。「仁義なき戦い」での圧倒的な存在感をこの作品でも発揮しています。

まずは、映画をご覧になったことの無い方の為、簡単にあらすじを紹介をしましょう。


城戸(沢田研二)はどこか冴えない中学校教師。

いつものように満員電車に揺られながらの通勤。教師であるにもかかわらず遅刻するなど無気力で、その緊張感のなさから生徒にはあまり相手にされないダメ人間。あだ名は「ふうせんガム」。

しかし彼には、生徒はおろか、誰も知らない秘密があった。

それは核爆弾を製造すること。その為、原子力発電所を襲う計画を立て、毎日のように身体を鍛え出勤前に偵察をしていたのだった。

いつものように生徒たちに教え帰宅する城戸だが、家に帰れば着実に計画を進めていた。

台所のテーブルに整然と並ぶ実験道具と、散らかった部屋。その壁には手書きの原子力発電所見取り図。

唯一の癒しである近所のネコと戯れるとき以外は、私生活さえない程、核爆弾製造計画のために没頭していた。

やがて彼は、老人に扮し交番の警官から拳銃を奪うことに成功。後は原子力発電所に乗り込み、プルトニウムを奪還するだけ。

そんな城戸に大きな転機が訪れる。それは修学旅行の帰り道、皇居で起こった。

戦争で心に病を追った老人が城戸たちの乗るバスをジャックしたのだ!

機関銃と手榴弾を胸に抱え、天皇に会わせろと要求する老人。その要求をのむふりをして車内に乗り込む警部、山下。老人を説得し生徒の解放に成功するが、戦争を生き抜いた老人も愚かではなかった。

男子生徒を人間の盾とし、皇居へと乗り込もうと歩き始めるのだった。

皇居前に集結する沢山の警官と機動隊。果たして城戸と生徒の運命は?そして身を挺して犯人確保に挑んだ山下の運命は?


戦争に負け2つの核爆弾を打ち込まれた世界唯一の被爆国日本で、この映画の登場はセンセーショナルでした。

核を持たないと宣言している国で、一市民が核爆弾を製造し日本を相手に無謀な戦いを挑むと言う内容。

タブーとも言える領域に踏み込んだ映画と言えます。

しかし観客の反応は、それを感じさせない程に好意的なものでした。公開当時、映画雑誌の読者選出第1位を取るなど、画期的と言える映画として迎え入れられたのです。

やがて時が経ち、2006年。長らく目にすることの無かったこの作品が、DVD化されました。


実は私、この映画が公開された当時は観ていません。危険な香り漂うその内容は、当時小学生の私には手の届かないものでした。しかしながらコマーシャルは何度か目にした記憶があり、ずっと気になっていたのです。

それが、ある日ネットで調べ物をしていてDVDが発売されているのを知り、購入するに至ったのです。

2008年7月のことでした。

それから何度となくこのDVDを観ていますが、その魅力は30年経った今でも色褪せること無く、むしろ混沌とした今の時代背景が30年前に重なり、より魅力を発揮しているようにさえ思えてなりません。

今でも映画雑誌の読者や映画関係者が選ぶベスト作品に何度も選出されるのは、ダテではありません。

もしご覧になったことが無いのでしたら、レンタルでもかまわないので是非ご覧になっていただきたいと思います。そしてその目で、この作品を判断していただけたら幸いです。


さてここから先は、既にこの作品をご覧になったみなさまの為に、ネタバレを含んだ紹介をしていきたいと思います。

ですのでまだご覧になっていない方は、是非ご覧になるまでこの先は読まないようにお願いいたします。

それでも読みたいと言う方に、無理は言いません。内容を知ってしまっても、失うことのない程魅力的な映画なので問題ないとは思いますが、それでもやはり、知らない方が本来の楽しさを味わえますからね(笑)


いきなりですが、この映画の魅力は何でしょう?


私は、リアルと虚構の境界線がだんだんと麻痺し、その世界にのめり込んでしまう所にあると思います。

核爆弾を個人が造ることは、おそらく今の科学でも無理だと思います。

原材料の入手や、精製、放射線など、いくつもの問題があるからです。

だから個人が核爆弾を造ると言うのは「虚構」になります。

でもこの映画はまず最初に、科学の知識を持つ中学校教師を主人公にすることによって、観客に「ひょっとして?」と思わせることに成功しているのです。しかもその主人公を演じるのは、当時知らない人が居ない程に有名だった沢田研二さん。日本レコード大賞を受賞したり、「8時だョ!全員集合」に何度も出演されるなど、すっかりお茶の間に浸透している人が演じることによって、よりリアルに磨きをかけています。

そしてそれを迎え撃つ警部は、菅原文太さん。任侠映画やアクション映画に主演し日本中に知れ渡っていた俳優です。その存在感故に、実際にやくざと思っていた人が居た程です(この当時そう言う勘違いは多々ありましたが)。

この2人の存在が、あり得ない内容に「リアル」と言う魔法をかけているのです。

それだけではありません。

中学生を人質に取った老人は、戦争の痛みを引きずる世代。公開当時、終結から30年以上が過ぎたとは言え、戦争を経験したことがない世代の人間にとっても身内に必ず居たであろう世代の人間です。

だからこの老人の行動は、決して嘘では片付けられないと言えるでしょう。実際、この頃東京の駅前などでは戦争で身体を失った人々が軍服を着てまだ街頭活動をしていたりしますし、私も何度か目にしたことがあります。

それから物語中盤から登場するラジオ番組も、リアルに磨きをかけています。

テレビが全盛期とは言え、ラジオを聞いている人の存在も圧倒的で、私たちには生活の一部でした。

あなたは電波の向こうから、自分の送ったはがきが読まれたりした記憶はありませんか?

そのドキドキは、素晴らしいものでしたよね?

だから、核爆弾を持ってしまった男がラジオを味方につけ日本中を巻き込むと言うのも説得力があります。

こうして普段私たちが何気なく接していたものを、うまく味方に付けたのがこの映画の魅力を引立てた要因と言っても過言ではないでしょう。


過激な内容だけが騒がれているように思えるこの映画ですが、実はビジュアル的にも見所が満載です。

例えば、城戸が原子力発電所に乗り込むシーン。

ただその過程を描くのではなく、時々ストップモーションにしたり、ミュージカルのような動きで城戸を追う無機質な職員や、ゲーム感覚で脱出していく過程(インベーダーのピコピコ音など)など、本来なら良心の痛みを伴うシーンをポップに見せ、その痛みを取ることに成功しています。

核爆弾製造の様子もそうです。団地の一室、いつもの生活の空間に、見慣れない機材の数々。絶対にあり得ないであろう製造過程を、当時はやっていた音楽をバックに絡ませ、ガイガーカウンターをマイク代わりに歌うなど、さながらミュージカルのようです。

他にもあります。

オープニングは、その代表でしょう。

昇る朝日に照らされる、城戸と原子力発電所。そこに現れるタイトル「太陽を盗んだ男」

白い文字が黄色から赤へと変色していく様は、まるで核反応をシンプルに表しているようです。

バックに流れる井上堯之さんの音楽も、カッコいいことこの上ありません。

それと同じようなシーンは他にもあります。私が一番素晴らしいと思ったのは、国会議事堂のシーンです。とは言っても、城戸が女装して乗り込むシーンではありません。その前に数秒だけ映る、朝日をバックにした国会議事堂のシルエットです。

核反応を起こす太陽と城戸の持つ原爆をだぶらせてイメージし、国会議事堂の上に昇ろうとする様は、これから起こる国をも揺るがす事件を象徴しています。ここでもやはり、井上堯之さんの音楽がうまく引立てていますね。


さて主人公の城戸は、なんとか核爆弾を造ることに成功する訳ですが、その目的は殺人ではありません。

ネコにガスをかけ一見残酷に思える行動ですが、そのネコは後のシーンで再び登場しますし、同じくガスをかけられた警官も、後の新聞を見る限りでは眠らされただけのようです。原子力発電所のシーンでは、職員が燃やされたり飛ばされたりしていますが、これも医療施設が整っているはずである原子力発電所だから出来る訳であって、城戸は人を殺そうなどとは思っていなかったはずなのです。

つまりプルトニウムを奪ったけれど、その行動は愉快犯だった訳です。

しかしその城戸に、皇居以来2度目の転機が訪れます。

それは、ネコの死です。

自分の不注意から、ネコを殺してしまうのです。直接ではありませんが、自分の造ったモノで死に至らしめてしまった訳ですから、殺したも同然でしょう。

転機だったことは、学校での行動からも読み取れます。生徒が観ている目の前で、ターザンの真似事をしていましたよね?この行動は、それまで押さえつけていた何かが壊れてしまった象徴でしょう。


核爆弾を持った城戸に待ち受ける運命は「死」です。たとえ爆発しなくても、それまでに大量に浴びてしまった放射線の影響は、死に至るものだったはずです。

しかし、その放射能を浴びていない2人の死を忘れてはいけません。

ひとりはDJの沢井。「核爆弾を持ったら何をしたい?」と言う問いかけから巻き込まれ、物語終盤では城戸の逃走を手助けします。しかし、その目的を達する前に、山下の銃弾に倒れ命を落としてしまいます。

それからもうひとりは、核を奪い返そうと必死で奮闘する山下警部。最後は城戸を巻き込んで壮絶な死を迎えます。

2人とも城戸に関わったがために命を落としました。

ではこの死は何を意味してるのでしょうか?

ちょっと考えてみました。そしてひとつの答えを見つけました。


それは国家間の争いに例えられるんじゃないかと。


現在核兵器を所有している国は、残念ながらこの作品が公開された当時より増えています。

そしてその核を所有するほとんどの国では、未だに軍事行動で死者が出ています。もちろん核を持っていない国でも死者は出ていますが、本来核兵器は使う為でなく抑止の為に存在するはず。

なのに、結局は戦争に近い行為が行われ、命が奪われているのです。

核兵器を造れる高度な技術と経済力を持っていても、愚かな行為で奪われる命を救えない。

その力を別の方向に向ければ争いは防げるはずなのに、核兵器を所有してしまったが為になされない。

なんて無益なんでしょう・・・

核兵器に関わったが為に死人が出てしまうと言う悪循環。城戸に関わったが為に命を落とす2人。

自らを9番と呼んだ城戸と、後に発する「一体何がしたいんだ?」と言う台詞から、それを読み取れる気がします。


そう言う視点で見ると、非常に重いメッセージを放っている社会派作品と思われがちですが、そうではありません。前述のような意味も含まれているはずですが、やはりこれは娯楽作品です。

物語終盤の、メーデーでの群衆シーンや、息をもつかせぬデパートでの攻防。そしてカーチェイスに、ヘリを使った必死のアクション。

どれを取っても、未だに見応えのあるシーンです。

それは、観客を魅了することに心血を注いでいるからこそ出来たシーンである訳で、観客を本気で楽しませる「心意気」を感じさせます。

社会派作品には、そこまで必要とは思えません。しかしながら、その影にはしっかりとメッセージが込められている。だからこそ後世まで語り継がれる映画になれたのではないでしょうか?


この映画が公開されてから、間もなく30年が経とうとしています。

そして残念ながら、長谷川和彦監督はこの後、映画を撮っていません。

監督は現在63歳。引退にはまだ早すぎます。

ぜひとも、新しい作品を見てみたいものです。

昨今好調な邦画ですから、「太陽を盗んだ男」が公開された後の冬の時代と比べれば撮りやすい環境になっているのは明らかです。撮影に協力するフィルムコミッションの存在も、それを後押ししてくれるでしょう。

未だに人気があるこの作品を生んだ長谷川監督の最新作を望んでいる人は、決して少なくないはずですから。


さてここから先は、ちょっとした願いを込めて書き進んでみたいと思います。

この映画が撮られた1979年は、第2次オイルショックのまっただ中。日々の生活に追われ、夢を忘れてしまう程深刻な影響が私たちの生活を襲っていました。

そして今、第3次オイルショック後の世界的恐慌に見舞われ、人々の生活はまさに30年前と同じ様相を呈しています。日々を生き抜くのに疲れ果て、夢を描くことが困難な世の中になりつつあると言えます。

そんな時代だからこそ、長谷川和彦監督の破天荒とも言える映画を、観客は求めているのではないでしょうか?

リメイクである必要はないですが、私はやはり同じ題材を元にした映画を観てみたいと感じます。

その作品で城戸を主人公にするのは無理があります。映画のラストでは生きていますが、放射線の影響ですぐに死んでしまったと推測出来るからです。余談ですが、ラストは核爆発をイメージさせますが、私は爆発していないと思っています。加えて城戸を犯人として特定出来ずに時効を迎えていると。

ネコを大切にしたように、城戸は人を殺すような人間ではないはずですし、沢井と山下以外は城戸の顔を見ていません。そして何より、大量生産の時代に物証から割り出すのは難しいでしょう。だから城戸は人知れず死んでしまったのではないかと思うのです。

核爆弾を造った後は、家もきれいに片付けていたのですから、城戸が行方不明になっても誰も疑わないでしょう(学校で核兵器の講義をしたことは不安要素ではありますがラジオで話題になっていたから疑われずに済むかもしれません)

でも放射性物質を一般家庭に持ち込んだのですから、近隣の家庭には少なからず影響はあった訳で、そこに着目して物語を膨らませたら、面白い作品が造れるのではないかと思うのです。

「悪くないのに巻き込まれてしまった市民の暴走」

放射能汚染のせいとは思いもせずに、余命幾ばくもない自分の最後の悪あがき。

幼い頃耳にしたラジオの「核爆弾騒ぎ」にヒントを得て、一人黙々と核兵器を造り、国を相手に戦いを挑む。

どうです?なんだか面白そうな作品がとれそうな気がしませんか?

もし問題があるとすれば、やはりその題材でしょう。

地下鉄サリン事件で多くの被害が出た日本はもとより、911テロで多くの死者が出たアメリカも、この題材に敏感に反応するのは目に見えています。おそらく1979年よりも、激しい拒絶反応が起こるでしょう。

でも、だからこそ、そう言う映画が必要だと、私は思うのです。

そして一娯楽作品としてだけでなく、核を持たないと宣言している日本だからこそ出来るメッセージを発信出来るはずなのです。


映画製作者のみなさま!誰か長谷川和彦監督を迎えて映画を撮ってくれませんか?


今回は特に好きな作品の為、いつもよりも熱く、長くなってしまいましたが、そろそろ終わりにしたいと思います。本当はもっと書きたいことがあるのですが、それはまたいつか。


さて次回は5月29日より公開の「スタートレック」にちなんで、過去のスタートレック作品をまとめて紹介したいと思います。


それでは、また!

2009年5月1日金曜日

レ・ミゼラブル 輝く光の中で

今回のコラムはなかなか手に入りにくい作品と言う特性上、2部構成で挑みたいと思います。

まずはこの作品をご覧になったことが無い方の為、作品の紹介と簡単なあらすじを。

次に、ご覧になった方の為にネタバレをしつつ、この映画の良さを引き出しと行こうかと思います。


ではまずは、未見の方の為の第1部を・・・


映画には多くの場合原作が存在します。そして多かれ少なかれ、原作とは違う登場人物や展開がなされ、オリジナルの要素を含んできます。

しかし今回お贈りする「レ・ミゼラブル 輝く光の中で」(以下、オリジナルと区別する為「輝く光の中で」と記載)は、それとは違うアプローチで造られた作品です。

物語の元となるのは有名な文学作品「レ・ミゼラブル」

何度も映画化や舞台化がなされ、日本ではアニメ化もされ多くの人々に感動を与え続けた作品です。

最近ではリーアム・ニーソン主演で1998年に映画化されています。

「レ・ミゼラブル」では激動の19世紀フランスが舞台でしたが、「輝く光の中で」は、そのほぼ100年後の20世紀初頭から世界大戦後までの約50年を描いています。

しかしながら、物語の進行はオリジナルを踏襲し、歴史の違いをうまく取り込みつつ見せているので、「レ・ミゼラブル」を知らない人だけでなく、知っている人にも受け入れられるよう造られています。

実は私は、映画で「レ・ミゼラブル」を観たことはあるのですが、原作は読んだことはありません。

なのでここから先は、前者の立場でコラムを書いて行くことをお許しくださいませ。


物語は「レ・ミゼラブル」の主人公であるジャン・バル・ジャンの悲しげな表情から始まります。

何かを後悔し、叫びながら懺悔を乞うような表情がしばらく続きます。

場面は代わり、19世紀の終焉と20世紀の幕開けを祝う舞踏会。貴族たちが華やかな衣装に身を包み、集っています。

その会場へ、慌てた様子の男が入り込んできます。彼の名はアンリ・フォルタン。ある貴族の運転手を務めていました。

貴族は、アンリの言葉で舞踏会を去ることを決めます。なぜなら彼は偽物の貴族だからなのです。

帰路の途中、山間の道路でアンリの運転する自動車はパンクし、そこでこともあろうに突然主は拳銃自殺を図り、運悪くアンリに殺害の容疑がかけられてしまいます。

しかしながら文盲のアンリは裁判で一方的に負け、投獄されます。

それでも愛する妻と子供に会うことを信じ頑張るアンリなのですが・・・


物語の紹介は、ここまでにしておきましょう。

ずいぶん語ったんじゃないか?とご心配のみなさま、どうかご安心ください。

175分ある作品の、冒頭15分だけのあらすじです。


この作品は日本ではあまり知名度がないようで、発売当時置いているレンタル店もそれほど多くなかったと記憶しています。

当時レンタル店で店長をしていた私は、発売前にサンプルを手に入れその内容に心揺さぶられ、すぐに入荷を決めましたが、残念ながら商業的には厳しい結果でした。

今現在、流通しているのはほとんどがレンタル上がりの商品で、長いテープを使用している都合上、程度もあまり良くないのが現状です。現に私が入手した中古も、途中に数カ所傷がありました。

海外ではどうかと言うと、本国フランスではDVDが4年前にリリースされ今現在も入手可能のようです。

アメリカでも入手出来るようですが、リージョンコードが日本とは違うので観られません。いずれにしても日本国内のDVDプレーヤーでは再生出来ないので(パソコンやリージョンフリーのプレーヤー等を使用すれば観る方法もありますがこちらは自己責任で)、どうしても観たい場合は、やはり中古ビデオしか手がないようです。

海外での発売時期を考えると、この先日本国内でDVDが発売される可能性は低いと思われますので、もし興味を持った方がいらっしゃいましたら、アマゾンのマーケットプレイスなどを利用して手に入れることをお勧めします。おそらく金額的には安いと思われますので。

しかし今回、この調べものをしていて驚きました。

アメリカのアマゾンで、かなり高い評価を得ているんですね。なぜ、これほどの名作を日本が放っておくのか不思議でなりません。

ちなみに発売当初のビデオと廉価版は、フランス作品であるにも関わらずワーナーからでした。発売されない理由は、そこにもあるのかもしれません。


さて、作品紹介はここまでにして、これから先はご覧になった方と共に感動を分かち合うネタバレ編にしましょう。

まだご覧になっていない方は、ここからは読まないことをお勧めします。

感動が半減してしまいます。

是非、入手してご覧になってください。決して損の無い作品ですから。


では、ネタバレ編です。


あなたはこの作品のどこが気に入りましたか?


私は、親子二代に渡る長い年月を描き、なおかつ歴史上の事件を織り交ぜているにもかかわらず、決して本質であるドラマがかすんでいないこと。むしろ、歴史上の事件と相まって、大きな感動を生み出していることです。

それはビデオのパッケージからも読み取れます。

裏面に記載されているあらすじには、息子であるアンリの物語しか書かれていません。

なぜでしょう?

メーカー側としては、ビデオを手に取った人に対してその物語を売り込みたかったからではないでしょうか?

それだけ感動的な部分であると言えると思うのです。

特に第2次世界大戦に入ってからの展開は、凄まじいものがあります。

ユダヤ人である為に、国を追われるように逃げ出す家族と、それに巻き込まれてしまったアンリ。

この4人の物語が交互に展開され、長編映画ではありがちなダレてしまう後半部分を、前半よりも短い時間の感覚で観させてくれています。

 生き延びる為、親元から離れ寄宿学校へ入った娘。

 ナチスの娼婦として囚われの身になったジマン婦人。

 瀕死の重傷を負いながらも、親切な農夫に助けられ、でも金と一方通行の愛に阻まれ世界から隔離されてしまったジマン。

 そんな3人を守ろうと、どんな責め苦にも負けずに耐え、生き抜く為に盗みまで働くアンリ。

戦争と言う残虐行為を生き抜こうとする人間の勇気が、言葉にするとたった4行の展開の中に、全て託されています。

それ故に、ノルマンディー上陸作戦と絡むことによって大きな感動を生むのです。

ただ残念なことに、日本で発売されたビデオはトリミングされ、TVサイズに変更されています。

もしオリジナルのシネマスコープサイズだったら、更なる感動を生んでくれたと思うのですが・・・こればかりはDVDかブルーレイで発売されるのを願うばかりです。


私がもうひとつ気に入ったのは、どんな逆境にもくじけず自分を信じるアンリの生き様です。

義理を忘れず、たとえ自分が不利になろうとも信じる正義を貫くその姿勢は、簡単に真似の出来るものではありません。

そして、文盲であってもそれを不幸と思わず、常に前向きに生きる姿には、この作品と出会って12年経った今でも勇気をもらいます。

今回のコラムを書く為約10年ぶりに見たのですが、改めて作品の奥深さを感じラスト15分は涙しました。当時、泣いた記憶が無かったので、私もそれだけ歳を重ねたと言うことでしょうか・・・

そして、以前観た時には気づかなかった発見が、いくつかありました。

その中でも特に大切だと思ったことがあります。

それは、この作品がビクトル・ユーゴーへのオマージュであるとともに、映画と言う発明へのオマージュでもあると言うこと。

それに気づいたのは、物語序盤での貴族とアンリの会話からです。

「子供はいくつになるんだ?」との貴族の問いに、

「5歳です、映画と同じ」と言う答えを返します。

このシーンは世紀越えの舞踏会後なので、数えるとアンリの子供(後のアンリ)は1894~5年生まれと言うことになります。

そのアンリが生まれた年には、エジソンの発明に大いなる影響を受けたリュミエール兄弟が商業映画を完成させ上映を始めています。

母とともにノルマンディーの酒場で働いていたアンリの息子が目にし、衝撃を受けるのは映画でした。

物語の終盤が近づき、仲間と一緒に入ったのも映画館でした。

そして共に上映作品は、「レ・ミゼラブル」を題材にした作品であったのです。

一見すると、作者に対しての敬意を払っているだけに思えますが、実はそうでもないようです。

物語がたどる約50年の月日の中で、「レ・ミゼラブル」と言う本だけを絡めて行けば済むはずの内容に、なぜ映画を絡めたのでしょう?そしてなぜ、アンリはその年に生まれた設定なのでしょう?

その秘密は、この作品が造られた年にあります。


1995年。


つまり、リミュエール兄弟が映画を発明した年から数えてちょうど100年目だったのです。

これを単なる偶然ととらえてしまってはいけないと思います。

初めて映画を観たアンリ少年のあのまなざしは、文字を読めるようになって本を読んでいる50年後のアンリと、何ら変わらないのです。

つまり、本を読み想像力を膨らませるのと同じ感動を、映画は与えてくれると言うことを表現したかったんだと思います。


この「レ・ミゼラブル 輝く光の中で」では、他にももっと語りたい要素があるのですが、今回はここまでとしましょう。

全て話してしまっては、改めて観直そうとされている方々の感動を半減させかねませんから・・・


この続きは、ひょっとしたら発売されるかもしれないDVDに運命を託しましょうか。


さて次回は、予告通り「太陽を盗んだ男」をお贈りいたします。

こちらの作品はDVDが発売されていますので、みなさまもご覧になる機会があるかもしれませんね。

なるべく早いうちに更新したいと思いますので、それまで作品をご覧になるなどしてお待ちくださいませ。


それでは、また!



映画データ


1995年フランス映画 175分


製作・監督・脚本 クロード・ルルーシュ

美術       ジャック・ブノワール

音楽       フランシス・レイ ミシェル・ルグラン

出演       ジャン=ポール・ベルモント ミシェル・ブシュナー アレサンドラ・マルティンス 他

もうひとつのリニューアル

「レ・ミゼラブル 輝く光の中で」のコラムはただいま執筆中です。
本日中にアップ出来ますので、しばしお待ちくださいませ。

さて今回、こちらのブログを移転しリニューアルしたわけですが、実はもうひとつのホームページもリニューアル作業中で、先ほどやっと完成致しました。

そのホームページは「きまぐれ写真館」です。
アドレスは、


になります。

以前から「極私的感涙映画評」をご覧頂いている方は既にご存知かとは思いますが、「きまぐれ写真館」は私が撮り溜めた写真を中心に構成されているホームページです。
リニューアル内容は見ていただくこととして、ここでは簡単な紹介をさせていただきたいと思います。
実は、「極私的感涙映画評」を移転したのには「きまぐれ写真館」が密接に関係していて、更新の簡素化を目指した為なのです。
私が以前から使用しているホームページ作成ソフトはDIGITALSTAGEと言うメーカーのIDforWEBLIFEとBINDforWEBLIFEと言う2本のソフトなのですが、今回BINDforWEBLIFEがバージョン2.5となり、Googleのサービスをうまく取り込む仕様になったのです。
分かりやすく言うと、GoogleのサービスであるブログサービスBloggerをBINDのサイト内に融合させられるようになったのです。
同じ内容の2つのサイトを同時に更新していた煩わしさから解放される訳で、これを利用しない手はありません。

そこで今回のリニューアルとなった訳です。

両ソフトとも、難しい知識が無くても簡単に美しいホームページが造れますので、これを機会にみなさまも是非お試しになってはいかがでしょうか?
どちらのソフトも14日間フルに使える体験版がダウンロード出来ます。

さて、それでは続いて「レ・ミゼラブル 輝く光の中で」をお贈りしたいと思います。

2009年4月30日木曜日

TVシリーズあれこれ

一ヶ月のご無沙汰です。

段々と暖かくなってきましたが、突然寒くなったりしてみなさまは体調を崩されたりしてはいませんか?


今回はブログを移転し初めてのコラムになりますね。

でもまずは、お詫びを書かねばなりません。

今回も前回と同様に、予告した作品をお贈りすることが出来ません。

色々と事情はあるのですが、書かない日々が長く続くのもいけないと思い、今回は別の記事をアップさせていただきます。

とは言うものの、今回は映画の記事ではありません。

この2年程私がハマっていることについてです。


それは海外のTVドラマシリーズ。


何を今更、と言う方も多いかもしれません。

ここ数年、レンタルDVDを発端とし海外TVドラマのブームが続いているのはみなさまご存知の通り。

その人気がさらに別の作品へ飛び火し、日本のTVでも放映されるなどして再び新たなブームを呼びつつあります。

遅まきながら、私もその手中にハマってしまったのです(笑)

どの作品かを書く前に、まずは私が過去にハマったTVドラマについて少し触れたいと思います。


ちょっと古いのですが、「Xファイル」はレンタルが火をつけた先駆けと言える作品です。

それ以前にもレンタルビデオが切っ掛けでヒットしたTVシリーズはいくつかありますが(「V」や「ツインピークス」)、人気の長さから見てもどれも「Xファイル」には敵わないと言えるでしょう。

FBI捜査官のモルダーとスカリーが未解決事件を解くべく様々な超常現象に立ち向かって行くと言う内容は、今までに無い斬新さから、レンタルビデオを利用していた人々を瞬く間にブームの渦中に巻き込んでしまいました。

シリーズはその後シーズン9まで続き、その間に劇場版も公開、昨年にはその後の2人を描いた劇場版もついに公開されました。

当時私はレンタル店勤務と言う立場上シーズン1から見続け、モルダーが行方不明になったあたりで挫折してしまいましたが、みなさまはどこまでご覧になりました?

今でも遜色のない面白さなので、まだ未見の方は是非ご覧になってみてください。

その後は「ER」などが大ヒットを記録しています。

しかしながら、シリーズが長く続けば続く程、観る側が求める作品の質も高くなる訳で、前作を越えなければファンは離れてしまいます。

なので長期にわたるシリーズは少ないのも事実です。

ところがここ数年ヒットしているTVシリーズは、その期待を満たす質と刺激を兼ね備えた作品が多々あるのです。

例えば、物語がリアルタイムで進行する「24 TwentyFour」

この作品は現在アメリカではシーズン7が放送中(5月に終了予定)で、日本でもこの夏DVDレンタルがスタートします。

私は、この作品が深夜に地上波で放送されているのを見てハマりました。と言ってもシーズン4からなので、それ以前は未見です。観たいとは思うのですが、何せ時間とお金が掛かるので、手を出せずにいると言うのが正直な所で・・・

そんな私に最近、救世主が現れたのです。

偶然深夜に放送されているのを見て、ハマってしまったのです。しかもシーズン1から!

その作品は「HEROES ヒーローズ」

突然特殊能力に目覚めた人々が、世界を巻き込む大事件の渦中に引き込まれて行くと言うその内容は、決して明るい物語ではないのに、多くのファンを魅了しています。

こちらの作品は、シーズン3が間もなく日本に上陸します。

中途半端に終わってしまったシーズン2には賛否両論ありますが、これは以前話題になったアメリカでの脚本家ストライキの影響があったので致し方ないと言うしかありませんね。

作品をご存じない人の為にこの作品の面白さをあげると、まずは普通の人が突然能力に目覚めてしまうと言うこと。

その能力は様々です。

他人の考えていることが全て聞こえてしまうとか、どんなに大きな怪我をしても瞬時に治ってしまうとか、時間を飛び越えられるとか、多種多様です。さらに、超人的な勘で他人の能力を自分のものにしてしまったり、近くにいるだけで能力者のコピーが出来てしまうなど、様々な能力が登場することにより、観る人を飽きさせません。

そんな能力に誰もが一度は憧れたことでしょう。しかしこの作品は、それが登場人物をダークな方へ引き込んで行くのです。

その中で見え隠れする人間模様も面白さのひとつでしょう。

それからこの作品を語る上で忘れてはならないのが、日本人が日本人の役で登場し、しかも日本語で喋る(アメリカでは英語字幕が表示)と言う、今までのドラマでは考えられなかった快挙を成し遂げている日本人がいることです。

その人の名は、マシ・オカ。本名、岡 政偉(おか まさより)。

多分、ヒーローズを知らない人は、誰?と首を傾げるでしょう。

でも映画が好きな人なら、誰もが彼の関わった作品を目にしている可能性があるのです。

なんと彼は、特殊効果で有名なあのILMでも働いているのです。しかも特殊効果などのソフトを作る側なのだそうです。

それでも分からない人は・・・今年の2月「めちゃ2イケてる!」に出演されていたのですが、ご覧になったでしょうか?土曜夜8時と言う高視聴率の時間なので、かなりの方が目にされていると思います。

なんと彼は、ハリウッドで役者として成功した身でありながら、日本のお笑い芸人がするであろう体当たりを数多く見せ、見事に笑いを取ったのです!なんてスゴい人でしょう。しかも、番組のファンだからと言う理由だけで来日されたとか。(この放送はしっかり録画し今でも時々観ています 笑)

今後もその活躍から目が離せませんね。

ひょっとしたら、日本の大作映画に出演なんてこともあり得るかもしれません。

(個人的には「踊る大捜査線3」で、来日中の捜査官などを演じているのを見てみたいかな)

これまで海外のTVシリーズにハマってもレンタルには手を出さずにいたのですが、次回作であるシーズン3には手にしてしまいそうな予感がします。


さて、実はもうひとつハマっている作品があるのです。

それは私たち世代なら誰もが目にしたであろう海外SFドラマのリメイク(正確には原作に基づいた新たな創造なんだそうですが・・・)です。

みなさまは「宇宙空母ギャラクティカ」をご存知ですか?

機械人間である敵と戦い逃げながら、伝説の星を目指すと言う物語、と言えば思い出した方も多いはず。

私もこのオリジナル作品はしっかりと見ていましたね。今ではすっかりちゃちに見えてしまいますが、わくわくしながらTVに釘付けになった日々を覚えています。

そう、その作品の名は「ギャラクティカ」

以前は機械対人間と言う単純な敵対図で物語が展開していたのですが、今回はサイロン(機械)が進化して人間と同じ仕組みの生命体が絡んでくるのです。しかも自らが人間と思い込み普通に生活をし、ある日突然プログラムが作動したかのように反乱を起こしてしまうと言う、人間からすればもっともタチの悪い敵なのです。

オリジナルを生かしながらの新しい創造、と言うのはそこにあるのです。(シーズン2からはさらに物語が深くなるようなのですが・・・)

機械が生んだ人工生命体が人間のように進化し、物語をより複雑で奥の深いものにしているのです。

現在この作品はアメリカでシーズン4が放送中で、日本では間もなくシーズン3のレンタルが開始されます。

私はまだ、TV放映をしていたシーズン1しか見ていないのですが、これも次のシーズンに手を出してしまいそうです。いや、きっと観るでしょうね。お金に余裕があればDVDも買ってしまうかもしれません。

それほどにハマっています。

どうです?一度ご覧になってみては。話が進むにつれて、グイグイ引き込まれて行きますよ。

そうそうギャラクティカの艦長であるウィリアム・アダマを演じるエドワード・J・オルモスは、実は私が以前紹介したある作品に出演しています。しかも邦画です。


さて、どの映画でしょう?


答えは・・・「復活の日」です。

実は私、「ギャラクティカ」シーズン1最終話を観終えた昨日まで知りませんでした。ネットで調べものをしていて偶然、フィルモグラフィーを見つけたのです。

もちろんすぐに「復活の日」を観直しました。

そうしたらなんと、居るではありませんか。

役はチリの越冬隊員。南極に取り残され、そのままチリの代表になってしまったロペス大尉を演じています。

「ギャラクティカ」では恰幅の良い年を重ねたいかにも軍人風だったのですが、30年近く前の「復活の日」では、細身な上に長髪で全く別人のよう。まるでチェ・ゲバラのような顔つきなんです。

これじゃ、気づく訳ありませんね。

台詞はそれほど多くは無いのですが中盤からかなり出番があるので、重要な役柄の一人と言えるかもしれません。

それに・・・ピアノを弾いて歌まで歌っています。さすが元ミュージシャン(笑)


おっと話がだいぶ逸れてしまいました。


そんなこんなで、今回は私が最近ハマっている海外のTVドラマシリーズをお贈りいたしました。

他にも面白いシリーズが沢山あるので、レンタル店を探してみるのも良いかもしれません。


さて「ギャラクティカ」は、原作に基づいた新たな創造と書きましたが、映画原作不足の昨今、私はこれからその流れが大きなブームになると思っています。

その証拠に、歴史に残る有名なTVシリーズが新たに映画化され劇場公開されるのです。もちろん新たな創造として。

その作品の名は「スタートレック」、5月に公開されます。

オリジナルではおとなしめだった戦闘シーンが激しく展開されるなど、予告を観る限りではかなり意欲的な作品に見えます。

カークを演じるクリス・パインは、かつてのウィリアム・シャトナーを彷彿とさせますが、私が注目するのはスポックを演じるザッカリー・クイント。

まさにスポックを演じる為に生まれたと言える程にピッタリなんです。おそらく古くからの「スタートレック」ファンが最も違和感を持たないと言えるでしょう。

ちなみに彼は「HEROES ヒーローズ」で物語のヒール役、サイラーを演じています。

だからその存在感は、言うまでもありません。きっと見事に演じてくれていると思います。

そんな訳で「スタートレック」が好きな私は、今からわくわくしています。どんな風に料理してくれるんだろう、と。

そして僅かな別の期待も持っています。

「ギャラクティカ」のようなTVシリーズになってくれないか、と。もちろん他の作品と比べたら手間がかかるのは当然なので、物語が短くなるのは覚悟しています。

それでも映画の出来次第では、TVシリーズ化が大いに期待出来ると思うのです。

「スタートレック」は元を正せばTVシリーズですし、ヒットし映画にもなり、その後の世界を描いた作品が多々造られていますから。

そうそう、せっかくので新しい映画が公開される前に「スタートレック」の劇場版についても書こうかな、と思います。

映画が終了してからでは意味が無いので、5月中には記事にする予定です。

それまで、しばしお待ちくださいませ。


さて次回は、今度こそ予告通りに「レ・ミゼラブル 輝く光の中で」をお贈りいたします。

それもなるべく早いうちに。

そうしないと「スタートレック」について書けなくなりますからね(笑)


それでは、また!

2009年3月20日金曜日

ワルキューレ(紹介編)

みなさま、お久しぶりです、kiyohikoです。

花粉症と黄砂が猛威をふるっていますが、みなさまはいかがでしょうか?


さて前回別の作品を予告していたのですが、今新作映画を観に行く機会があったので、今回は内容を変更します。

そしてその映画は今日公開されたばかりなので、ネタバレもしないように「紹介編」とさせていただきます。


その作品とは「ワルキューレ」

トム・クルーズが実在した軍人シュタウフェンベルク大佐を演じています

製作と監督は「ユージュアル・サスペクツ」で全米に衝撃を与えた、ブライアン・シンガー。

ここ最近アメコミ原作の映画が続いていましたが、今回は初めて実話に挑みます。

ヒトラー暗殺を企てた人々に焦点を当てた非常に重たい内容で、非常時に発動されるある作戦を逆手に政府の転覆と自由を手に入れようとする物語です。


それでは本題に入りましょう。


歴史にはふたつの側面があります。

ひとつは、教科書などに載り学校で一度は習う事実。そこで知識を得た上で、その後の考え方や人生に少なからず影響を与えています。ただし大抵の人間は長い歴史を学ぶ都合上大きな出来事ばかりで、よほどの興味を持たなければ小さな出来事はこれに該当しません。

もうひとつは、教科書などには載らない事実。学校を卒業した後、何らかの形で情報として入っては来ますが、既に歴史の骨格を学んでいるので、その人の考え方や人生にさほど大きな影響は与えません。

例えれば、日本が戦った太平洋戦争はひとつとしてとれば大きな出来事ですが、その中には沢山の作戦や、出来事、偶然などが重なり、複雑に絡み合っています。そうしてひとつの歴史となっているのです。

それでも私たちが高校生までの間に習うのは、その中のほんの一部。日本人の行った残虐な行為などは、深くは語られません。

私たちは後に、日本人が行ってきた残虐さを知ることとなるのですが、その影響力は「全員が同じ事実を突きつけられる学生」である時に学ぶ程ではないでしょう。

今回ご紹介する映画「ワルキューレ」の内容は、日本人にとって後者の側面を持っています。

ドイツと言う国が周辺諸国を占領し、異人種を虐殺しつつ勢力を拡大しますが、やがて衰退し、最後にヒトラーは自決する。ほとんどのドイツ人は「悪」である、と。

多くの日本人が学んだ歴史から把握しているのは、この程度です。

「ドイツが残虐な行為を行ってきた」としか認識が無く「悪」になってしまうのですが、その残虐行為を止める為に命をかけた人々が多数いた、と言うのは残念ながら日本人にはあまり知られていません。

そう言う意味では「シンドラーのリスト」なども同じかも知れませんね。


この映画「ワルキューレ」は、ドイツ人の魂を救うために命を捧げた人々への鎮魂歌であると同時に、人間はどうあるべきか?と言う大きなテーマを私たちに突きつけています。

そう、この映画はかなり骨太な内容なのです。


みなさまは結末の見える映画ってどう思われますか?

大抵、途中からつまらなくなりますよね。大逆転があるかな・・・と期待していると、さらにつまらなくなってしまいます。

ベストセラーの小説などが原作だったりすると、それを避ける為に新たな結末になったりすることも多々ありますが、歴史を描く映画では、そうはいきません。せいぜい違った解釈を加える程度までしか出来ないでしょう。

特に「実話映画」をうたっていれば、その違った解釈さえも許されない状況になります。なぜなら実話には、生死に関わらずその出来事に携わった人がいるのです。映画を造る以上、その人々に最大限の敬意を払わねばなりません。

この映画には、もうひとつ難しい理由が存在します。

歴史で学んだ「ヒトラーは自決する」と言う事実がある以上、この映画の作戦は失敗し破綻してしまうのは明白です。

そう、結末が見えているのです。

ただ私たちがそこに至る経緯をほとんど知らないと言うのは、この物語を楽しむ要素のひとつとしてあるかもしれません。

でも作戦が失敗することは明白です。

映画を観る前は、この難しい題材をどう料理するんだろう?そればかりが気になっていました。

どこかを間違えば、一気にシラケた映画になってしまうからです。

しかし観終えてまず感じたのは、素晴らしい内容、と言うこと。

緩急の間が良く、音楽も決して本編を喰わないがでも自己主張をしている。そして音楽のかからないシーンも効果的に緊張感を演出。

それぞれの登場人物の心を感じさせる楽曲やカメラワークも見事だと思います。

特に後半は緊張に次ぐ緊張の連続で隙がなく、まさに手に汗を握る展開。既に与えられた結末に向け、一気に進んで行きます。

配役も含めて、全てがうまく絡み合い、素晴らしい仕事をし、良く練られた映画になっています。


そして私自身の個人的な感想ですが「信念を持って生きなければ」そう思いました。


この「ワルキューレ」は観て損の無い映画であるだけでなく、今まさに歴史を学んでいる学生たちにも是非見せたい、いや、観なければならない映画だ、と強く感じました。

戦争映画とはほとんどの場合、人間が血を流し殺し合う映画です。残虐性ばかりが強調され、教育には良くないとの声も聞きますが、果たしてそれが全ての戦争映画に当てはまるのでしょうか?

そんな訳はありません。

この映画には人間が人間として生きる上で大切な、「信念を貫く意志」が描かれています。

自らが殺されかもしれないと言うのを承知の上で、ドイツを国民の為に取り戻そうと多くの人間が団結するのです。

たったひとつの目的、ヒトラーを殺す為に。

殺人を肯定する訳ではありませんが、この歴史の場合はそうしなければより多くの命が奪われていたことでしょう。

ワルキューレ作戦で暗殺されそうになったと言う事実が、後の自決を決定づけたのかもしれません。

ただ、歴史に「もしも」は無いのですが・・・

目的の為に様々な思惑を持つ人間が集まると言うことは、たったひとつの裏切りや失敗で破綻すると言う要素もはらんでいます。

軍人や政治家と言う生き様や存在意義の違う人が沢山関わるからこそ、それはより深く、そしてより複雑に絡み合ってしまいます。

周知の事実ですが、人間誰もが同じ考えではありません。押さえつけようとすれば、必ずほころびます。多くの様々な決断が重なり続け、歴史が作られているのです。

そしてそれは、そのまま自分の人生にも繁栄していると言えます。


私はこの映画「ワルキューレ」はただの戦争映画ではなく、人生を見つめ直し、この先の生き様に大きな影響を与える映画だと思っています。


あなたは観に行かれますか?

私は是非お勧めします。

それには理由があります。

地方では、洋画の上映期間が明らかに短くなっています。

毎週何かが公開されるなど作品の多さが際立っているだけでなく、洋画はDVD化が早いと多くの映画好きな人は知っています。急ぐ必要は無い、おそらくそんな理由があるんだと思います。

でもシネコンは、昔のように同じ作品を一日中まわすのではなく売り上げの少ない作品は減らし、新しい作品にシフトしていまうのです。

つまり「どの時間でも自由にスクリーン」で観られる環境は公開直後だけと言うことです。

迷っていたら、より観づらい環境になってしまいます。

何よりもやはり、映画はスクリーンで観るのがベストですから。

気になったら即行動、映画に関しては言えると思います。

それに、この作品のパンフレットは情報量が豊富で、知らなかった事実を学ぶには十分な量の歴史が語られています。劇場へ足を運び、買って損の無いパンフレットだと思います。(私は常に買いますが 笑)


それでも迷ってますか?

ではひとつ、秘密の情報を。

字幕が無いため英語の聞き取りが出来る人に限定されてしまうのですが、とあるパソコンメーカーのアメリカの公式サイトで、「ワルキューレ」の最初の6分間が観られるのです。

もちろん無料です。今日現在は、まだ観られました。

興味のある方は、是非探してみてください。それからでも遅くはないでしょう。


次回は、前回の予告通り「レ・ミゼラブル 輝く光の中で」をお贈りしたいと思います。

更新はちょっと先になりますが、それまでお待ちくださいませ。


それでは、また!



映画データ


2008年アメリカ映画 120分


監督   ブライアン・シンガー

脚本   クリストファー・マッカリー ネイサン・アレクサンダー

製作   ブライアン・シンガー クリストファー・マッカリー ギルバート・アドラー

撮影監督 ニュートン・トーマス・サイジェル

編集   ジョン・オットマン

衣装   ジョアンナ・ジョンストン

音楽   ジョン・オットマン

出演   トム・クルーズ ケネス・ブラナー ビル・ナイ トム・ウィルキンソン テレンス・スタンプ カリス・ファン・ハウテン トーマス・クレッチマン エディ・イザード ジェイミー・パーカー クリスチャン・ベルケル デヴィッド・バンバー 他

2009年2月17日火曜日

復活します!

みなさま、お元気でお過ごしでしょうか?

約1年と1ヶ月ぶりの更新となります。ここまで日が空くと、事実上再スタートに近いですね。

みなさまにとって、どんな2008年でしたか?

私はと言えば、色々な出来事がありました。

普段通り仕事をしながら「少林少女」の応援ブログを更新する日々が続き、念願だった本広監督と亀山千広プロデューサーにお会いする事も出来ました。

それから、夢から目標へと変え少しずつ回ろうと決めた日本一周の一環で、9月の初旬には2泊3日(+@)の強行スケジュールを敢行し、東北一周ツーリングにも出かけました。ある意味、真冬に最南端を巡った旅よりもハードでした。その模様は是非、私のHP「きまぐれ写真館」をご覧くださいませ。

その後、友人との意見の食い違いから4年半続いた仕事を辞め、今現在無職の状態です。

仕事はなかなか決まりません。私のように特別な資格を持っていない者には、とても厳しい現実です。

それでもなんとかめげずに頑張っています。

いや、正直に言うと、めげていました。

もっと早くこのブログを更新したかったのですが、とてもその気にはなれなかったと言うのが現実でした。

そんな最悪な気持ちの中、どうしてこのように復活出来たかと言うと、そこに映画とビデオの影響があったのです。

無職になった5ヶ月の間に、私は5本の映画を観ました。

「20世紀少年 第1章 終わりのはじまり」

「イーグル・アイ」

「20世紀少年 第2章 最後の希望」

「誰も守ってくれない」

「ヘブンズ・ドア」

上記2本は既にDVDが発売されています。いずれこのブログでも紹介したいと思います。

「20世紀少年 第2章 最後の希望」は、非常に面白かったですね。

原作を読んでいない私には、第1章よりも面白かったと思えました。

「誰も守ってくれない」は、「踊る大捜査線」シリーズの脚本を手掛けた君塚良一さんが脚本・監督を務めた、邦画では珍しい内容の映画です。私は今まで君塚監督作品をスクリーンで観た事がなかったのですが、今作は「良くこの題材を劇場公開作品として成立させたな」を驚きました。

主人公である少女と刑事が、激しく、暗く、陰湿な仕打ちを受け続け、救いの見えない展開を見せる内容なのですが、最後に嫌な気分を残さないのです。

これ以上書くと映画の魅力を半減させてしまうのでここまでにしますが、まだ劇場で観る事が出来ますので、是非大きなスクリーンでご覧ください。

「ヘブンズ・ドア」は長瀬智也さんと福田麻由子さんの好演が光る秀作です。実はこの映画、ドイツ映画のリメイクであり、アメリカ生まれでハリウッド映画に参加するなどの実績もあるマイケル・アリアス監督が手掛けた、邦画としては異色尽くめの作品なんです。

元の映画「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」をご覧いただくのも良いのですが、まずは劇場で「ヘブンズ・ドア」をご覧いただく事をお勧めします。

こちらの作品も、いずれブログにて紹介したいと思っています。

でもまずは、仕事に就く事が大事ですね・・・そうしないとコラムを書く為にDVDを買う軍資金が生まれませんから(笑)

それから、ビデオの影響もありました。と言っても作品と出会った訳ではなく、以前から趣味でしているビデオ編集での出来事なんです。

毎年私は、友人が参加する祭りのビデオを撮影し、編集しています。昨年で5年目となりました。

その流れで、急遽おとといの日曜日(15日)、あるビデオを作成する仲間を手伝ってくれないか?と友人から誘いを受けたのです。私が参加したときには既に撮影も半分以上済んでいて大して手伝えなかったのですが、慣れない仲間の代わりに編集をしてもらえないか?と頼まれ、昨日一日かけて編集を行ったのです。

夜に友人宅を訪れ観てもらったのですが、大爆笑の高評価を得る事が出来ました。

今まで、編集終了直後にここまで喜んでもらえたことがなかったので、私も大変嬉しく思いました。

そのおかげで「何かが吹っ切れた」気がしたんです。

これだけひどい状況でも、やれば出来るんだな、と。

と言っても、もう生活費も底をつきそうです。

なんとしても働き口を探さなければなりません。

きっとブログの更新は、その後になると思いますが、こうして宣言する事によって自分への戒めにしたいと思います。


ということで、近日中にコラムを再開する事を決めました!

予定している作品は以下の通りです。

「レ・ミゼラブル 輝く光の中で」(絶版作品 中古のビデオのみ流通)

「太陽を盗んだ男」(DVD発売中)

まずは「レ・ミゼラブル 輝く光の中で」で再開したいと思います。

この作品を書こうと思った切っ掛けも、実はこの5ヶ月の間にありました。

それは昨年末の事です。

12月から1月初旬にかけて、ものすごい勢いで「ある」検索ワードが私のブログへ導いてくれたのです。1ヶ月で1000件近くの訪問者がありました。

その検索ワードとは、「バウンティフルへの旅」です。

調べてみると昨年末関西ローカルでTV放映があったようです。関東圏で観られなかったのは大変残念でしたが、(国内では)DVD化されないこの作品が陽の目を見る事が出来たのは嬉しい限りです。

そこで私は思ったのです。やはりこうして観る機会が極端に少ない作品は、出来る限り文章として残しておこう、と。

ネタバレが出来ないつらさもあるのですが、そこは今までとは違った工夫をしネタバレを含みつつ、なんとか頑張ろうかと考えています。


再開はいつと、言い切れない所がつらいのですが、なるべく近日中には再開出来ると思います。

それまで今しばらく、お待ちくださいませ。


それでは、また!!!

2008年1月17日木曜日

復活の日

みなさまお久しぶりです、kiyohikoです。

「11月の初旬には更新出来ます」と書いておきながら、早くも3ヶ月が過ぎてしまいました。

年末年始の挨拶も出来ずに滞っていた事をお許しください。

勤務先の人手不足から休みをあまり取れない状況が続き、こちらまで手が回りませんでした。

私は親友がオーナーを勤めるコンビニで働いています。以前コンビニと言えば華やかな仕事のひとつだったかもしれません。

しかし今は、仕事量の多さから敬遠されつつある仕事になってしまったようで、求人を出してもほとんど応募がない状況。

現に私の勤める夜勤は、昨年9月中旬に一人辞めて以来、つい先週までほとんど応募がなかったのです。

しかし、待った甲斐がありました。やっと優秀な人材が決まったおかげで、こうして更新にこぎ着けました。


でもここでもうひとつお知らせしなければならない事があります。


今回「復活の日」をお送りした後、しばらくの間この極私的感涙映画評を休止しなければならなくなりました。

私自身が新たなプロジェクトに参加する事となったからです。

そのプロジェクトとは、私の尊敬する本広克行監督の4月に公開される最新作「少林少女」の応援ブログ。

本広監督の作品を愛して止まない全国の有志と共に、一緒に映画を盛り上げていこうと言う企画なのです。

そんなプロジェクトはめずらしくないとお思いかもしれませんが、今までとはちょっと違うのです。

素人で、映画関係者でもない私たちなのに「オフィシャル」なのです。

それだけ責任も重大で、色々な制約がありますが、「いつか何らかの形で応援したい」と思っていた私は、もちろん迷わずに参加を決意しました。

この企画ははじまったばかりの事なので、今後どのような展開になるもかも分かりません。

しかし始めた以上は、最善を尽くしたいと考えています。

となると、こちらのブログには力を入れられなくなってしまいます。

そこで休止を決意しました。

本来なら休止するべきではないのかもしれません。出来る限り頑張って、ダメなら休止すればいいとも思えます。

でも始める以上は、最初から集中したいのが私の思いです。

なので休止することをどうかお許しください。

もし、更新出来る余裕があると分かったら、その時点で復活致しますので、どうか気長にお待ちくださいませ。


さて本題に入りましょう。

今回お贈りする映画「復活の日」は、原作を小松左京さん、監督を深作欣二さんが務め、製作はあの角川春樹さん。

今はもう実現しない豪華な製作陣に加え、日米の俳優が総結集したキャストも、当時の話題をさらいました。

そして当時としては世界初の試みである南極ロケに、実際に軍から借りた潜水艦等を使用しリアルさも追求した、まさに贅を尽くした映画でした。


物語は冬の東ドイツからはじまります。遺伝子操作により誕生した最強最悪のウィルスMM-88が、存在に危機を感じた科学者によって持ち出されます。国を越えた協力によりワクチンを造って欲しいと願った為に犯罪を犯したのです。

しかしその行為は軍の知る事となり、博士は射殺。間一髪でウィルスを手に入れたスパイは猛吹雪の中をセスナで逃げます。が、レーダーから逃れる為の低空飛行が仇となり、山に激突、ウィルスは冬山にばらまかれてしまったのでした。

やがて春になり、ヨーロッパ各地では動物たちに異変が起こり始めます。

家畜たちが謎の死を遂げたのです。その死は動物だけにとどまらず、すぐに人間もその脅威にさらされてしまいました。

2ヶ月もしないうちにヨーロッパ全土は壊滅的な打撃を受け、その波はアフリカ、アジア、そして世界各国へと飛び火して行きます。

人類は予想もしていなかった、「急速な破滅の道」へと突き進んで行くのです・・・南極で暮らす僅かな人々を残して。


2時間30分を越える中身は、今見ても重厚さが漂い、そこから放たれるメッセージは色褪せていません。

そればかりか、30年近く前に造られた映画上の空想の危機が、今もって私たちを取り巻いている事に、驚きを感じます。

それはやはり原作が素晴らしいからでしょう。

私が生まれて初めて読んだ単行本の小説は、この「復活の日」でした。

克明に記されたデータや描写に、衝撃を受けた事は言うまでもありません。

人間の手でいじられた「病原菌」が人を死に至らしめるだけでなく、それまでに人間が犯してきた過ちが、最後通牒のように生き残った人間たちへ降り掛かる。まるで神が与えた罰のように。

そして、その過程が手に取るように見えて来る原作。

一度読まれる事をお奨めします。

その上でこの映画を観ると、さらに魅力が増し、一生忘れられない映画となるでしょう。


さて以前、ちょっと趣向を代えてお贈りします、と書きましたが、みなさまは覚えていらっしゃいますか?


私がこの映画に関して書きたかった事、それはリメイクへの希望、です。

昨今、日本もアメリカも映画のネタ不足からリメイクが続いています。

以前紹介した「日本沈没」も長年の時を経てリメイクされました。その出来は賛否両論ですが、私の感想はこちらをご覧下さい。

残念ながらこの「復活の日」は、リメイクの噂さえ聞きません。

なぜかは分かりませんが、あまりのスケールの大きさは、引き受ける事になる監督にとっては大いなるプレッシャーになるに違いありません。

もしかしたら、リメイクは無いかもしれません。

ならば、もしリメイクしたらどんな物語になるだろう?と考えてみたのです。

ここから先は、私の独り言と思って、読んで下さい。


まずは時代設定。

現代を舞台にすると、この映画が訴えている願いが薄れてしまうでしょう。

例えば、25年前にはなかったインターネットの存在。

ゆっくりと、そして一方通行気味に流される情報が、南極越冬隊の孤独と苦悩を強調させましたが、もしインターネットがあったら、どうなっていたでしょう?

無事である南極の存在がすぐに知れ渡り、大挙して感染した人間が南極へ押し寄せるでしょう。

ほどなく極寒の地でも感染がはじまり、あっという間に南極も全滅です。

人類へ生き残れなくなってしまいます。

それにこの映画で涙を誘うあるシーンも、存在し得なくなります。

滅び行く世界に取り残された孤独から、無線で助けを求める子供のシーン。何かしてあげたくても、何も出来ない悔しさが、今でも涙を誘います。しかしこれにネットが関わるとなると、「押しっぱなしのスイッチ」と言う悲劇はないですね。

もしネットを使ったテレビ電話などがあれば、少年の勘違いを解いて自殺せずにすんだかもしれません。

他には、故郷日本の状況が全く分からない隊員たちの心の焦り。

これも、インターネットの存在があったなら、消滅してしまうシーンでしょう。

それから、生き残った南極の人々が女性の権利を踏みにじる取り決めをしたシーン。

このシーンも、女性を軽視している人間が多い時代だから許されるシーンだったとも言えます。

私はこのシーンが女性を軽視しているのではなく、それよりも深い、究極の倫理観を問われたら人間はどう判断するのかを表現していると思っています。

しかし、もしリメイクがあってもこのシーンは許されないでしょうね。今の時代では、気分を害する女性が圧倒的に多いでしょう。

と言う事は、夫婦での愛のある行為によって誕生したグリー以外に子供はいない、と言う設定にするのが最善かもしれません。

つまり、この映画の良さは、あの時代でしか表現出来ないものだと言えるのではないでしょうか?

時代の変化がそれだけ激しい、と言う事です。

しかし一方、核の危機に関しては一歩も進歩していません。それどころか後退していると言えます。

ウィルスの恐怖も然りです。

鳥インフルエンザが、間もなく人が感染する病原体へ変異すると言われています。真偽の程は定かではありませんが、過去の歴史を振り返る限り、それは本当でしょう。

この映画程の猛威はふるわないでしょうが、ものすごく大勢の犠牲が出る事は違いありません。

脱線してしまいましたが、年月が経っても「変わるもの」と「変わらないもの」があるのです。

この作品をリメイクする上で大切なのは「変わらないもの」をいかにうまく引き出せるかにかかっている気がするのです。

「復活の日」はある意味でパニック映画だと思います。

原因の分からない恐怖に襲われる、その状況下で、人間の倫理観がどうなるかを描いています。

しかし当時の描写方法は、ここ最近の映画を見慣れた私たちにとっては物足りないと言わざるを得ないでしょう。

このパニック部分を現代の技術と表現方法でいかに料理出来るかによって、人間ドラマがより引き立ってくると思えるのです。

あなたは「タイタニック」をご覧になった事がありますか?

この映画は私のお気に入りのひとつです。特に好きなのは、船が沈み始めてから巻き起こる人間模様。

でもその人間模様を引立てているのは、壮絶な衝突と沈没シーンで(劇場の)観客に一体感を持たせる事に成功したからこそだと私は思うのです。

それと同じ考えで、物語により激しい強弱をつければ、リメイクが前作を越える事も可能なはずなのです。

もちろん、より素晴らしいリメイクが出来てもこの「復活の日」の魅力や良さ、そして完成度は色褪せる事はありません。それだけ、この作品は素晴らしく、邦画の歴史に残る名作だと、私は信じています。


ここまではリメイクが映画だったら、と言う過程で書き記しましたが、それだけとは限りませんね。

テレビシリーズと言う手もありかもしれません。

遥か彼方の記憶で定かではないのですが、小説ではもっと沢山のエピソードがあった気がするのです。

最近のテレビドラマは10~12話で終了するパターンが主です。

時間にすると、8時間くらいでしょうか。

これだけの時間があれば、原作に忠実な映像化も可能なはずです。

幸い、ここ最近の日本のVFX技術は相当高いレベルにあり、今は無くなってしまった街並も再現出来る事は「Always三丁目の夕日」を観れば明らかです。

当時の時代設定のまま、原作を忠実に再現出来るのです。

問題があるとすれば、資金面だけかもしれません。


どうです?21世紀が描く「復活の日」、観てみたいと思いませんか?


さて、今回のコラムはこれでおしまいです。

そして文頭で触れた通り、しばらく休止します。

当面の間、「少林少女」を応援するブログだけを書く事になるので、もしよろしければそちらをご覧下さい。

公式のブログのアドレスはこちらです。

ブログの左にあるカレンダー直下、「同門生道場」の「少林少女 常陸国かしま支部 放浪道場」が私のブログですので、是非お越し下さいませ。


それでは、また!


1980年日本映画 156分


製作 角川春樹

監督 深作欣二

原作 小松左京

脚本 高田宏治 グレゴリー・ナップ 深作欣二

撮影 木村大作

美術 横尾嘉良

録音 紅谷愃一

照明 望月英樹

編集 鈴木晄

音楽 羽田健太郎

翻訳 清水俊二 戸田奈津子

出演 草刈正雄 渡瀬恒彦 夏八木勲 多岐川裕美 永島敏行 森田健作 千葉真一 緒形拳 オリビア・ハッセー グレン・フォード ジョージ・ケネディ ボー・スベンソン エドワード・J・オルモス チャック・コナーズ ヘンリー・シルバ ロバート・ボーン