2005年4月3日日曜日

パーフェクトストーム

「あの時こうしていたら」「あの時やめていたら」

人生にはそんな分岐点が幾つもあります。

この映画は、その分岐点を「後悔」ではなく、「やれるだけやっただろ」「だからこれでいいのさ」と思わせてくれる強さを持っています。

あなたは時々、過去を悔やんでいませんか?

「あの時こうしていれば、こんなに悔やむ事はなかったのに」と、今の苦悩を全て過去のせいにした事はありませんか?

そんな思いを持ってしまいがちな人には、是非この映画を見て頂きたいと思います。

そしてもし勇気づけられたら、この映画の製作に携わった全ての人々、そして「アンドレアゲイル号」の乗組員も救われるでしょう。


この映画は実話映画ではありますが、私にとっては一種の体感映画です。

最新の音響設備の整った映画館で初めて見た時に船酔いを覚えたほどと言えば、分かって頂けるでしょう。

そして今回改めてDVDで見直したのも、画面こそ普通サイズのTVですが、音響はドルビーデジタル。映画館での音響にかなり近い環境で見る事が出来ました。

やはり後半は、すざましさを体感出来ました。

このすざましさを演出しているのが、最新の音響と最新のCGです。

その両方なしには、この映画の完成は有り得なかったと言えるでしょう。

言い換えれば、この事件が起きた1991年直後に映画にしていたら、この迫力は作り出せなかったと言う事です。

まさに、「時代が生んだ体感映画」と呼べます。

さてここで監督にも触れなければなりません。

ウォルフガング・ペーターゼンと言えば、作る映画の殆どが代表作と言えるほどの監督です。

古くは「Uボート」「ネバーエンディング・ストーリー」。ハリウッド進出後には「アウトブレイク」「エアフォースワン」、最近では「トロイ」等、皆さんがご存じの作品ばかりです。

そして殆どの作品に言える事は、特殊効果を上手く見方に取り込んで、通常は体験し得ない現実を見せ、体感させてくれるという事です。

この「パーフェクトストーム」は、その代表とも言える仕上がりであると思います。

ただ不満も残ります。あまりにもリアルに嵐を体感させてしまったが為に、乗組員たちの友情やそれを支えた家族たちのドラマが霞んでしまった事。観る人によって評価が両極端に分かれるのは、そんなところに原因があるのでは、と私は思います。

でも、ここでもう一度思い出して欲しいのです。

最後までご覧頂ければ分かるのですが、「アンドレアゲイル号」の乗組員は、全て行方不明のまま。もちろん生きているはずはないでしょうから全員が死んでしまったと言えます。

だからこそ、この映画の大半は、「実話」であれ「事実」ではないのです。

原作者は、この物語を書くに当たってグロースターと言う街に長く滞在し、生前親好のあった人や、元乗組員等、綿密な商材をした上で書き上げています。だから推測ではありますが、殆どが「実際にこうしていたであろう」行動なのです。

映画ならではの特殊な演出などで実話を汚していない、言い換えれば「嵐のリアルさ」に全力を注ぎ、体感以外はあくまでも観る者の心に任せている、と言えるのです。


どうでしょうか?実話映画の奥深さを、前回今回のコラムで少し分かって頂けたでしょうか?

そして、もしこの映画で感動して頂ければ幸いです。

何よりこの映画は、「男のロマンと美学」を描いているのですから。


2作品実話映画が続きましたが、もう一本だけお付き合い下さい。

次回のコラムは、実話映画の代表作であり、ミュージカル映画の最高峰、そして映画史に残る名作、

「サウンド・オブ・ミュージック」です。

現在この作品はBEST HIT50と言うシリーズで発売され、¥999と言う低価格で買う事が出来ます。

ご覧になった事がない、と言う方はほとんど無いとは思いますが、購入して損のない名作ですので、是非3時間ほど時間を空けてご覧になって下さい。もし昔TVやビデオでご覧になった方も、DVDの画質の良さを改めて感じて、新たな感動を味わっていただけることでしょう。


それでは、また。


2000年アメリカ映画 130分

監督 ウォルフガング・ペーターゼン

原作 セバスチャン・ユンガー

音楽 ジェームズ・ホーナー

出演 ジョージ・クルーニー マーク・ウォールバーグ ダイアン・レイン

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