世の中には、日の目を見ずに消えていくものが多々あります。
人の才能などは、その最たるもの。
沢山の才能は、幼い頃には無限の可能性を秘めているのに、いつの間にか何らかの障害に妨げられて姿を消してしまう。
様々な出会いや運命がそうさせているのです。
一見、永遠に残ると思われる映画ですが、実はそうでない場合があります。
以前「長江」のコラムで触れた「翔べ、イカロスの翼」等は、その代表でしょう。
一本の映画を造るには沢山の人や企業の協力が必要です。スポンサーだけでなく、出演者や映像作成に関わる人等々。
映画が劇場公開された当初に上映終了後の目的が決まっている場合は、最初からその権利を盛り込んで契約したりするのですが、時代の変化と友に生まれる新たなメディアには対応し切れていないのがこれまでの現状のようです。
例えばビデオデッキの出現やCDの出現。音楽になってしまいますが、有名な話ではビートルズのCDでしょうか?発売寸前に、権利の問題がクリアになっていなかった事が明らかになり出荷されなかった幻の「アビィロード」があります。
でもこれはまだ良い方。
本来上映だけが目的で、その後一般の人々の手に渡るなど考えても居なかった過去の映画はビデオ出現以前には殆どがそうでした。
中には未だにビデオ化されていないものもあり、その中には名作も存在します。
石原裕次郎さんの一部の作品等もその一例かも知れませんね。
話が逸れてしまいましたが、前述の「翔べ、イカロスの翼」は、公式HPによると廃棄されるのを待つのみとか。一度もビデオ化されずにです。
実話に基づいた素晴らしい作品だけに、勿体なく思います。
ただ幸い、時々上映会が開かれているようですので、観られる機会があるというのは幸運かも知れません。
一体何が障害でビデオやDVD化されないのかは、視聴者である私たちには見えないのですが、複雑な権利関係である場合が多いと言うことだけは言えると思います。
さて、そんな理由で今現在手に入れることの出来ない作品の中から、私の特別にお気に入りの作品を紹介したいと思います。
まずは「ラストソング」
吉岡秀隆さんと、本木雅弘さん主演。監督は「優駿〜オラシオン〜」で有名な杉田成道さん。そちらのDVDが5年も前に発売されていることから、ここに権利関係が絡んでいることが伺えます。
物語は、一流のミュージシャンを夢見るアマチュアバンドが一人の青年と出会い、行動を共にすることで、メジャーデビューの夢をつかんで上り詰めていくという内容です。そこには紆余曲折があり、仲間との別れや恋、当初の夢とは違った方向へ進んでいかなければならない運命など、様々な障害が待ち受けています。
ビデオ化はされていたので、古くから営業しているレンタルビデオ店にはまだ在庫があるかも知れません。
次は私の最も好きな邦画BEST5に入る作品を2本紹介します。
ひとつ目は、前回のコラムで述べた「秋桜」です。
この映画の監督はすずきじゅんいちさん。「マリリンに逢いたい」の監督と言えば分かるでしょうか?
マリリン〜はDVD化されているので、この「秋桜」がビデオ化で終わっているのは納得がいきません。
しかも現在監督が行動の場としているアメリカでは、以前DVDが発売されていました(ただし日本国内で発売されたビデオに英語字幕を付けただけというお粗末なもの でも私は所有しています)。
レンタル用に始まり、その後低価格の販売用が発売されたのに、です。それだけの需要があったと言うことです。
それにこの映画は、ある意味画期的な作品でした。
映画を造る為の出資金を企業だけでなく、舞台となる町の商店や個人にも募り、青年会議所が中心となって呼び掛けた映画なのです。
その映画が造られる切っ掛けには、素晴らしいドラマがありました。
福島県安達郡本宮町では以前、子を持つ母親達が中心となり、子供達へのメッセージを込めた映画を造ったことがあります。その作品名は「こころの山脈(やまなみ)」。残念ながら私は未見ですが、故 山岡久乃
さんが主演されていたことからも、作品の質が高いことが伺えます。
「秋桜」は、その母親達に育てられた世代の子供達が、大人となり応える為に造った作品なのです。
物語はこうです。
故郷である本宮に戻ってきた主人公と、その母。親一人子一人とは思えない程笑顔の絶えない主人公には、実は重大な秘密が隠されています。
海外で暮らしている頃、事故で受けた輸血によって、エイズに感染しているのです。
母は、その重大な事実を隠さずに生きていこうとします。
しかし日本は閉鎖的。転入した高校では、理解無い人々からのいじめにも似た差別。幼なじみの親友の両親でさえ、避ける状況。
でも主人公は負けません。
それでも自分を貫き生きていくのです。
その勇敢な姿に胸を打たれた親友と、やがて絆を深めていくのですが・・・
いつか必ず観て頂きたい作品なので、紹介はここまでにしておきましょう。
「文部省選定」作品であることから、内容の良さが伺い知れるでしょう。
この作品は日本テレビが製作に関わっているので、ひょっとすると深夜に放映されるなどと言うこともあるかも知れません(関東圏では過去に2度程、放映されています)。
もう一つの作品は、なぜDVD化されないの?と思うかも知れません。
監督がある有名人だからです。
最近、期間限定復活を果たした米米クラブをご存じでしょうか?
そのボーカル、カールスモーキー石井こと石井竜也さんの作品、「河童」です。
初監督作品にもかかわらず、好成績な上、その芸術的センスと、映画への博識と愛情の込められた内容に、涙した人も多いのです。
物語は、「E.T.」に酷似していると言われます。
未知の生物である河童の子供と出会い、友情を深めていくのですが・・・確かにその通りでしょう。
しかし、日本人でなければ分からないわびさびを込めつつも、SFXには手を抜かず、音楽も素晴らしい。
物語やそれぞれのシーンが様々な映画に似ていると感じるのも、実は映画好きの監督ならではの愛情の表れなのです。
演技が多少大げさに感じるのは、ちゃんとラストを考えてのこと。多少笑いを取りつつも最後はきちんと涙で閉めるという、真面目な映画作りに私は、期待しました。
次々に作品が造られることを。
しかし2作目の「ACRI」を最後に、映画界からは消えてしまいました。
なぜかは分かりませんが、それ以降映画を手掛けていないのです。
故に、ビデオとLDが発売されたにとどまり、今現在はレンタル落ちのビデオが見つけられれば運が良いという状況。
昨年私は、運良く程度の良いレンタル落ちを見つけ購入、時々観ているのですが、観る度に思います。
石井竜也監督の新作が観たい!と。
私の知り合いにも、この映画がお気に入りという人が多数居ます。
どんな問題からDVDにならないかは分かりませんが、悔しくてなりません。
そんなネット上の声にされて、映画監督として復活されることを切に願います。
米米CLUBが復活したように・・・
今回のコラムはここまでです。
いずれこの「覚え書き」の続きを書きたいと思いますが、今はまだやめておきましょう。
次回は洋画編と言うことだけ、予告しておきます。
さて、次回のコラムは最新作が公開中、リュックベッソン監督の代表作「グランブルー」をお贈りします。
実は私は、リュックベッソン監督作品とは肌が合いません。その中で唯一、特別なのがこの「グランブルー」なのです。
海が舞台となるその内容は、非常に居心地良く感じます。
残念ながら、現在DVDは手に入らず(ネットで新品がほんの僅かだけ流通しているようです)、レンタルのみとなりますが、男のロマンの描かれた素晴らしい作品ですので、是非是非ご覧になって下さい。
それでは、また!
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