宇宙を舞台にした映画は数多くありますが、その中でも特別な存在であるシリーズが2つあります。
共に共通するのは、その壮大な物語の存在が「語り継がれる伝説」に等しいこと。
そのひとつとは、映画としては完結してしまった「スターウォーズ」
善と悪の戦いに親子の運命を絡め、壮大な物語を紡ぎだしています。この作品を生み出したジョージルーカスは黒澤明監督とも親交があり、「スターウォーズ」は「隠し砦の三悪人」にヒントを得て作られたとも言われています。
そしてもうひとつは、1960年代に大ヒットしたTVシリーズ「宇宙大作戦」(原題STARTREK)を復活させた映画「スタートレック」(1979)です。
こちらは壮大な冒険物語。人類が未踏の宇宙を探査・開拓して行く話で、戦いはありますが善悪の戦いではなく異星人同士の戦いとなり、人間が種族間で争うのと似ていると言えるかもしれません。
このふたつ全く関係ないように見えますが、実はそうでもないのです。
そのヒントは公開された年にあります。
「スターウォーズ」で一番最初のエピソード4「新たなる希望」(公開時は副題なし)は1977年(日本では翌年)公開。一方の「スタートレック」は1979年(日本では翌年)公開。
それまでのSF映画とはスケールの違う大ヒットを記録した「スターウォーズ」に触発されて映画化されたと言う訳です。
「スタートレック」映画版はその後5作品作られました。
しかし物語はそこで終わりません。映画のヒットにより、その後の世界を舞台にした「新スタートレック」がTVシリーズとして製作されます。このシリーズはなんと7年間も続き、さらにその前後の世界もTVシリーズ化されるなど、アメリカでは18年に渡ってTV放映され続けました。
もちろんそれだけの大ヒットですから、「新スタートレック」も映画化されています。こちらは4本製作されました。その内2作品は、副長を演じたジョナサン・フレイクスが監督を務め、彼の監督としての力量を発揮させる切っ掛けを作ったとも言えます。(後に「サンダーバード」を実写映画化)
「スタートレック」シリーズ6作品は「宇宙大作戦」の出演者がそのまま登場し、「新スタートレック」4作品もTVシリーズと同じ出演者で造られていますが、間もなく日本でも公開になる「スタートレック」(2009)はそれまでのキャラクターを若手俳優が演じ、新たな物語として造られています。でもシリーズに含まれるのではなく、リメイクでもなく、新たなる創造「リ・イマジネーション」と言う位置づけに属することとなります。
今回の新作「スタートレック」(2009)の評価はアメリカでは絶大で、その結果が興行収入にも現れています。そして日本では、既にいくつかの試写会が行われていて、かなりの人気を博しているようです。
ここで心配なのが、オリジナルを知る人がどんな反応を示すか?なのですが、ネットでの批評を観ると意外にも知らない人も知る人も好評のようです。
幼い頃にTVの再放送で何度か観た「宇宙大作戦」、それから「スタートレック」(1979)、地上波で深夜放送していた「新スタートレック」(残念ながら全てが放送された訳ではないので中途半端にしか見ていませんが・・・)、そして「新スタートレック」の映画版と、全てではないものの観ている私にとって、今回の新作「スタートレック」(2009)は、製作されると言うニュースを耳にしてからずっと期待が膨らんでいるのですが、そのような人でも満足している内容なのだそうです。
否が応にも期待が膨らみます。ちなみに私のパソコンのデスクトップは3ヶ月程前から、アメリカ版の公式HPからダウンロードした壁紙が表示されています。
そんなスタートレックシリーズを語る上で欠かせないのはオリジナルである「宇宙大作戦」ですが、これに関してはネット上にいくつもあるファンのHPや公式HPを見ていただくとして、ここでは映画シリーズのいくつかを紹介して行きたいと思います。
まずは映画を語る前に、スタートレックを全く知らない人の為に簡単な紹介をしましょう。
時は23世紀。
科学技術は格段に進歩し、遠くはなれた場所へ人間などを移動可能とさせた転送装置や、光速以上の移動が可能な宇宙船のワープ航法などが発明、実用化されていた。もちろん戦闘兵器の技術も格段に進歩し、一瞬にして物質を消滅させることが可能なフェイザー(戦艦などの大型から人間が使用する小型の銃まで多種)や、光子魚雷なども使われるようになっていた。
地球上から飢えや争いをなくすことに成功した人類は、その持て余す力を飽くなき探究心へと向け、宇宙へと向かい、多くの生命体と惑星連邦を形成し、地球は繁栄を極めていた。
しかし宇宙では依然争いがあり、惑星連邦に敵対する戦闘種族クリンゴン人(後に平和協定が締結)や暴力的なロミュラン人などとはしばし戦闘が行われていた。
スタートレックシリーズには、個性的なクルーが登場します。
耳のとんがったスポックは何事も論理的に考えるバルカン人。熱血漢のカーク艦長との掛け合いはそれだけ見ていても面白いです。他にも偏屈もののドクターマッコイも人気のあるキャラクターのひとりです。
「新スタートレック」ではカークのような役割のライカー副長や、カウンセラーのトロイ、スポックのような役割を果たすアンドロイドのデータ、クリンゴン人でありながらエンタープライズの乗組員であるウォーフなど、魅力的なキャラクターが沢山登場し物語を盛り上げてくれます。
人間の魅力が発揮されているのも、このシリーズの大きな特徴です。
もうひとつの魅力と言えば、様々な夢のような道具の数々でしょう。
先ほど紹介した転送装置や、実態のようにそこに表示されるホログラム(これはただ表示されるだけでなくコンピュータと連動し人間のように喋ったりします)、さらには惑星さえ造り出してしまったりします(映画版第2・3作参照)。
その夢のような道具たちは、私たちがドラえもんに熱中したように観ている人々を魅了して行きます。
やがて、観て育った世代の大人たちが続く物語を作ったりしながら、このシリーズはアメリカでひとつの歴史のように存在しているのです。
面白い所では、スペースシャトルの試験機。その名前「エンタープライズ」は多くのスタートレックファンによる熱意が通じ、名付けられました。
以前紹介したTV「ヒーローズ」では、日本人のヒロがいつもバルカン人の挨拶をまねたり、ヒロの父親を演じるジョージ・タケイはスタートレックでヒカル・スルーと言う名のメインの乗組員を演じていますし、シーズン2では同じくメインの乗組員ウフーラを演じたニシェル・ニコルズなども重要な役柄で登場します。
日本ではそこまで有名とは言えないスタートレックシリーズですが熱心なファンは数多く居ますし、今回の新作「スタートレック」(2009)は、過去の作品に新たなファンを呼び込む切っ掛けとなりそうです。
続いて映画版第1作「スタートレック」を紹介しましょう。
惜しまれつつ「宇宙大作戦」が終了してからちょうど10年後、この作品は公開されました。
「宇宙大作戦」では5年の調査飛行が物語の核となりましたが、今回は未知の脅威に襲われるかもしれない地球を救うための任務を帯びて、謎の超巨大物体へ挑むと言うものです。
136分の上映時間は、大きく2つのパートに別れています。
ひとつは物語の前半、新たに改修された宇宙船エンタープライズ出航までを描きます。
もうひとつは惑星系を飲み込む程の超巨大物体を探査し、地球への脅威を避けるための必死の行動を描いています。
スタートレックを知らない人には、前半部分はちょっと長く感じるかもしれませんが、ここで描かれる雄大さがスタートレックの魅力のひとつでもあるので、是非注目していただきたい部分でもあります。
後半は、謎を解きながらその核心に迫って行く過程がSF映画の枠を超え、でもSFでなければ描くことのできないスケールで観客を魅了します。
さて続いて紹介するのはTV「新スタートレック」の映画版第1弾「ジェネレーションズ」です。
この映画の魅力はなんと言っても「新スタートレック」の初映画化でありますが、その物語には粋な計らいが隠されています。
それはエンタープライズの新・旧艦長の競演です。
「宇宙大作戦」と「新スタートレック」は登場人物こそ違いますが、その世界感は受け継がれていて、同じ歴史の線上に位置する物語なのです。
映画はまず、エンタープライズの進水式から始まります。これまでの戦いで何度となく破壊され、新しい船として復活したエンタープライズですが、初航海でいきなり重大な局面に出くわします。
ゲストとして呼ばれていたかつての船長カーク大佐は、SOS信号を発した船の救助を敢行、無事救出を果たしたものの、爆発に巻き込まれ行方不明となってしまいました。
時は経ち、24世紀。
ピカード艦長率いるエンタープライズDは、地球からの命令で救難信号を発している宇宙基地へ到着。
その基地内では乗組員たちが謎の死を遂げていました。唯一の生存者ソランを救出したのですが、それはこれから始まる惑星を巻き込むほどの悲劇の序章だったです・・・
先ほど紹介した「スタートレック」は、当時まだ実用には堪えうる程ではなかったCGを実験的に取り入れていましたが、TV「新スタートレック」では宇宙船や戦闘シーンなどで積極的に取り入れ、今作でも効果的に使われています。比べてみるとCGと特殊撮影の進歩の具合が見て取れて、面白いと思います。
さて最後に紹介するのは「新スタートレック」の映画版2作目「ファーストコンタクト」です。
この作品を語る上で欠かすことの出来ない存在が「新スタートレック」での最大の敵ボーグです。
簡単に説明すると全てがひとつの意思で動く機械と同化した生命体で、人間等もその一部に取り込んでしまうと言う恐ろしい敵なのです。
TVシリーズ中に一度、ピカード艦長は同化された経験を持ち身体の中にはまだその記憶が残っているようで、今作品では物語を進める上で大きな役割を果たします。
物語は、ついにボーグが地球へ侵攻する所から始まります。新造されたエンタープライズEは、なぜかそのボーグを止めるのではなく隙を狙ってくるであろうロミュラン人への警戒に当たらされます。
その理由はもちろん、ピカード艦長が過去にボーグに取り込まれたことが原因でした。
しかし戦闘に当たった他の艦隊はことごとく撃破、エンタープライズEは自身の判断で地球へ向かい、戦闘となります。
かつての経験を生かしボーグの破壊に成功するピカードでしたが、苦戦むなしくその一部が時間をさかのぼり歴史を変えてしまったのでした・・・
目のまでボーグの星と化してしまった地球を救うには、侵略を阻止するしかありません。
時空のゆがみの中、追いかけて辿り着いたのは第3次世界大戦で荒んだ地球。
ピカード艦長たちはボーグの撃破に成功するも、大変な歴史への干渉に出くわしてしまったのです。
それは2063年4月。人類が初めて他の種族との遭遇を果たす日の前日だったのです。ボーグはそのロケットが飛び立とうとする基地を攻撃していたのです。このままでは人類が未踏の宇宙へ飛び出すことは愚か、自分たちの帰るべき場所さえ失ってしまいます。
果たしてピカード艦長たちは歴史を歪ませることなく、人類にとって記念すべき「ファーストコンタクト」の日を迎えることが出来るのでしょうか?
そして忍び寄るボーグの生き残りたちを抹殺出来るのでしょうか?
かい摘んで紹介してきましたが、このシリーズの奥深さを語るにはまだまだ足りません。
でもこのコラムが、あなたが見始める切っ掛けとなれば幸いです。
観るまでもないけど気になる・・・と言う方は、ウィキペディアなどを調べてみると面白いかもしれません。その項目の多さから、どれだけ多くのファンが居るかが創造できます。
さて次回は何にしようか悩んでいます。
もし早めに観ることが出来るなら「スタートレック」(2009)を紹介したいと思いますが、まだ今の所未定です。
ですので詳細はいずれこちらでご報告したいと思います。
それでは、また!
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