2010年12月14日火曜日

俳優 竹内力について考えてみた

気温が上がったり下がったりの繰り返しで体力的にかなりきつい天候ですが、みなさまはどう過ごされていますか?風邪などひかれてはいないでしょうか?

さて今回は、今までとちょっと趣を変えてみました。これまでは好きな映画を紹介するコラムがほとんどでしたが、今回は一人の俳優にスポットを当て、いろいろと考察し紹介していこうかと思います。


私は常日頃、新聞を読みません。ネットがそれにとってかわったからです。新聞よりも早く、より詳しい情報が手に入るからです。必ずしもそれが正しい情報と限らない場合もありますが、見極める目も身につきつつあります。

そんな私は今日、ちょっと気になる記事があったのでいつもの調子でさらっと読んでいたのです。
しかし読み終えた後、何か違和感を感じたんです。

その記事とは「竹内力 初のコメディー映画主演」

良く読んでみたら竹内力さんではなく、竹野内豊さんだったのですが水川あさみさんとの共演でコメディー映画が製作され来年公開されるというもの。


竹野内豊さんならば初めてのことなのでニュースなのですが、竹内力さんと勘違いしていた私には「コメディー映画」という括りがどうも引っかかったのです。


竹内力さんと言えばミナミの帝王や任侠映画で有名な俳優で、一時はVシネの帝王と呼ばれ、哀川翔さんとともにレンタルビデオ業界を引っ張った根っからの役者です。

レンタルビデオを沢山ご覧になった方なら分かると思うのですが、一般の人が抱く竹内力さんのイメージとは違い、彼は数え切れないほどの作品を経験し様々な役柄に挑戦している「器用な」俳優なのです。

どんな作品があるかと言いますと、例えばナインティーナインが初主演を果たした「岸和田少年愚連隊」シリーズ。彼らの主演はそれだけでしたが、その後沢山の続編が造られました。そのひとつ「カオルちゃん最強伝説」に竹内力さんは主演しました。シリーズ内でも有名な作品です。
本作で彼は、その姿を見ているだけで吹き出してしまいそうな怪演をしています。それは彼の演じる主人公が15歳の中学生と言うかなり無理のある設定のせいもあるのですが、それを何となく納得させてしまう演技力を見せてくれているのです。
その怪演のおかげで当初はシリーズの外伝的な作品だった本作はシリーズ化され2007年までに8作も造られました。

それ以外にも私の好きなシリーズ「全国制覇 テキ屋魂」等も忘れてはいけない作品でしょう。
この作品はネットなどの紹介では、彼に植え付けられたイメージを重視してか「任侠もの」扱いになっていますが、どちらかと言えばテキ屋で生きる男たちの友情を面白おかしく描いた「人情喜劇」の部類に入ります。

余談になりますが、日本各地を渡り歩くテキ屋という商売は祭とは切っても切れない縁。日本人には絶対に必要な存在です。それは世界に誇れる日本映画「男はつらいよ」でも証明されています。どこかに忘れていって言ってしまった日本人の義理人情を、感じさせてくれる存在であるからでしょう。
私はひそかに期待をしていたのですが、この「全国制覇 テキ屋魂」も寅さんのように長く続いてくれれば、と願っていたのです。
残念ながらレンタルビデオブームの終焉とともに、たった2作で終了してしまいました。

つまり俳優竹内力は、一般人の抱く「コメディー映画」のジャンルに含まれる喜劇的な作品をすでに何作も主演・出演されているのです。先ほどの「全国制覇 テキ屋魂」に関して言えばVシネ扱いになっているので、映画ではないと言われる方もいるかもしれませんが、Vシネ全盛期とは時代が違うから当てはまらないと、私は考えます。

それはなぜかと言いますと、Vシネマ(一般化した名称ですが元は東映の造った言葉です)と呼ばれた作品は当初、完全にビデオレンタルのみでしか扱われない作品でした。
しかしビデオレンタルが徐々に衰退し始め製作本数が減るにつれ、いつしか顧客への訴求力のためレンタル直前に全国で数館のみ劇場上映をし「劇場公開作品」の冠をつけた作品も出てくるようになったのです。

あいまいなのはその例だけではありません。シネコンが全国的に普及し増えたスクリーンのおかげで、一昔前ならVシネ扱いであろう作品が、今現在は劇場で上映される作品として造られる機会も増えているのです。

つまり時代が替わると共に、作品を映画かVシネかと区別することに意味がなくなってしまっていたのです。

他にも彼が出演を果たした中で、忘れてはいけない大切な作品があります。
それは「釣りバカ日誌」第19作。この作品で彼は、念願だった故郷を舞台に、国民的シリーズに出演を果たしました。
この作品も喜劇作品の部類に入りますね。

だから、その記事に対して「コメディー映画」と言う括りで表現してほしくなかったな、という感想を持ったのです。(今思えば大きな勘違いなので、どうでもよいことになってしまいますが・・・)

それにVシネの帝王と言う顔を知らない人でも、ここ数年彼が出演したTVなどを見ていれば、かなりコミカルな才能を持った人だと言うことが分かるでしょう。

その代表格が歌手RIKIです。竹内力の弟(誰がどう見ても本人ですが)で、竹中直人さんを彷彿とするはじけっぷりを見せつけていましたね。

そんなコミカルな部分が強調されている昨今ですが、実は彼は他にも才能を持っています。


それはビジネスです。と言っても何か大きな商売や副業をしているという意味ではなく、ビジネス的な部分の才能があると言うことなのです。

彼は自身の設立した事務所「RIKIプロジェクト」に所属しています。いわゆる個人事務所と思われがちですが、本人を含め10人(うち1人はRIKI)の個性派俳優と歌手を擁しているのです。
この事務所では他にも、映画などの企画制作も手掛けています。つまり彼は、所属する役者を自社企画の作品などに出演させることもできる立場にいるのです。他にもファッションブランドも手掛け、ミナミの帝王等ではそのブランドを身につけ出演・販売に結び付け、商売人としての才能も発揮しているのです。

彼は俳優竹内力であると共に、商売人竹内力、プロデューサー竹内力、と幾つもの顔を持っているわけです。
ビジネスで成功している社長たちはTVに頻繁に出演されますが、彼はあまり目立った露出はしていないので、この地位を生み出した幾つもの顔の存在は、意外な一面ですよね。

もちろん、今の地位を築くまでの苦労は沢山あったと思います。
それは彼の出演した作品遍歴を見ると分かるでしょう。

彼は大林宣彦監督の「彼のオートバイ、彼女の島」で主役デビューを果たしました。
その後も劇場公開作品を中心にTVドラマ等でも二枚目俳優としての地位を築きつつあったのですが、折からのレンタルビデオブームに乗って活躍の場をVシネマに移し、やがて「やくざの顔」としての地位を持つ俳優へと変貌していったのです。

私の手元に資料がないので詳しいことはわかりませんが、そういった時代の流れを肌で感じ取って、結果辿りついたのが自身の事務所設立に結びついたのだと思われます。

そんな彼はここ数年、コミカルな一面を見せ、以前はあまり出演しなかったTVにも顔を見せ始めています。


これは何を意味するのでしょうか?


日本はバブルがはじけて以来、アリ地獄から抜け出せずにいます。そして日本人の気質でもある「耐えること」が当たり前になって、まだ不況を抜け出していない事実さえ見失っています。


日本人は知らず知らずのうちに、笑顔を忘れてしまっているのです。

心の底から笑えることに飢えてしまっているのです。


彼は、演じることによって、そんな日本人を応援しようとしているのではないでしょうか?
一見バカバカしく見えさえする歌手RIKIの存在を笑い飛ばして見てしまう、いや、見させてしまう彼の演技力で、日本を救おうとしているのではないでしょうか?

私にはそう思えてなりません。

Vシネマという言葉が過去のものになってしまった今、俳優竹内力は新たな局面に向かおうとしていると私は信じています。それがどんな形かは分かりませんが、今以上に大きな存在で俳優界に居続けるでしょう。あわせて、皆様に「笑い」を届けるだけでなく「勇気」を与えてくれる存在になることも。

そして「人間 竹内力」の魅力を振りまいてくれるでしょう。

きっとこれから、私たちの目に嫌がおうにも留まるほどの活躍を見せてくれるはずです。


さて、勘違いから始まったとはいえ、今回は今までと趣向を変えて一人の役者について考察してみました。
たまにこのような形で俳優を取り上げていこうかと思いますので、どうぞご期待くださいませ。

それでは、また!

(12月15日AM4:00 内容一部修正)

0 件のコメント:

コメントを投稿