2006年5月13日土曜日

極私的ロケ地の旅

今年の春は、冬同様寒いですね。晴れ間も少なく、お出かけに最適な季節が勿体なく感じます。


さて今回はロケ地の旅についてのコラムです。

今まで以上にプライベートな内容ですが、私という人間を形成する「映画」との関わりだと思って、どうかお許し下さい。


映画好きな人たちは、いつからか憧れの映画のロケ地を訪れるようになりました。

その数は今や観光業界を動かす程に増え、それに関連して各都道府県や市町村も、フィルムコミッションに積極的になってきました。

フィルムコミッションはまた別の機会に述べるとして、映画のロケ地は「旅」のひとつの選択肢にまで発展したのです。


私の生まれ故郷は、千葉県銚子市。

三方を水に囲まれ、皆さんの中には漁港の町というイメージが強いことでしょう。

実際に町の観光を支えているひとつは漁港に関するものであり、それに付随してその他の観光施設に人が集まっていると言えます。

しかしその流れに新たな波が加わる転機が訪れます。

とあるドラマの舞台として使われたのです。

「澪つくし」

沢口靖子さん主演で、NHK朝の連続テレビ小説。半年間に渡る放送で、銚子市はロケ地のひとつとして脚光を浴びることとなります。

この流れは、人口減少に悩む町の起爆剤のひとつとなりました。

それまで寂れた雰囲気しか漂わなかった銚子電鉄の車両は綺麗な色で塗り直され、夏場は窓を取り払った展望車両が現在でも運行されています。

その転機以降、銚子市は観光に力を入れるようになったと言っても過言ではないでしょう。

一度は閉鎖された展望館を、新たに「地球の丸く見える丘展望館」として建て直したり、漁港の増設に伴い隣接した敷地にタワーを建設、観光みやげなどを一手に集めた「ウォッセ21」を併設など、様々な施設が造られました。

老朽化した駅舎を建て替え、駅前通は「海の街」を訪れる人に、より味わって貰う為の工夫をこらすなど、町作りにも大きな影響を与えています。

今現在銚子市は、東京に近く天候も良い地の利を生かして、「銚子フィルムコミッション」を立ち上げて、積極的にTVや映画のロケを誘致しています。

それ程までに、ロケが行われるというのは大きな影響があると言うことです。

前回のコラムで取り上げた「さびしんぼう」の舞台である尾道に憧れていたひとつの理由は、故郷がどこか似ていると言うことも関係しているかも知れません。


さて私が、ロケ地を初めて訪れたのは、ちょうど1990年代に切り替わる頃。

知り合いと共に、バイクで房総半島一周をしている時でした。

そう「偶然」なのです。

千葉県館山市の国道を走っていたのですが、駅前の渋滞を避ける為に別の道へ抜けたことが切っ掛けとなりました。

そのロケ地には現在別の建物が建ち、当時の面影は川縁と川に架かる橋くらいですが、今でもそこを訪れるたびにその時の衝撃と感動が甦ります。

作品名は「ぼくらの七日間戦争」。少年達が立てこもった廃工場として登場し、劇中そのままの迷彩色で塗られた外観。元はボーリング場だったそうです。

それからというもの、房総に行く時は必ずその横を通っていましたが、私がバイクからしばらく離れた時期に取り壊されてしまったようです。

残念ながら写真を撮っていないのでお見せすることは出来ませんが、映画を観て頂ければどのような建物かは分かりますので、お時間のある時にでも是非ご覧下さい。今から18年前の作品です。


先程「バイクからしばらく離れた」とありますが、この時期私はバイク以外のことに一生懸命でした。

そしてしばらくの間、「ロケ地を訪れる快感」を忘れていたのです。

でも、いつかは尾道へ!と心の中では思い続けていました。

やがてレンタルビデオ店で働くこととなり、いつしか店長へ。休みの間も映画三昧の日々。

それが2002年、突然終止符を打つことになります。

やめたことに伴う不安や悩みから解放されるひとつの選択肢として、「バイクで旅をすること」を思い出すのです。

初めはただ、風を感じ無になるのが目的でした。

いつしかその目的には理由がつき、大好きな映画のロケ地を探そうとなったわけです。

残念ながら最初に探そうと思った場所は見つからず。

その年の秋、念願だった尾道行きを本気で検討し始めます。

2泊3日でも強行軍となる尾道は、仕事をしていない今でなければ無理だろう、そう思ってのことでした。

残念ながら、出発前日台風に見舞われ、実現には至りませんでした。


やがて私は仕事をしないまま年を越します。

1月が終わる頃、別の映画のロケ地をふと思い出し、突然に訪れることとなります。

その映画は「秋桜」。私の中では邦画BEST5に入る傑作ですが、残念ながら知名度は低く現在ビデオは入手不可能となっています。

この映画が撮影されたのは福島県安達郡本宮町。

全く名前を知られていない町ですが、実は何処よりも早く映画と地元住人の関わりを大切にした町なのです。

「秋桜」と言う映画は、その完成型とでも言えるでしょう。

冬だった為に車で訪れたのですが、次々に現れる「観たことのある場所」に興奮したこと今でも思い出します。

そしてその帰り道、映画「はつ恋」でストーリー展開の重要な要となる「願いの桜」(劇中での名前)を見つけました。この桜は、私のもう一つの旅「桜の旅」の原点とも言えるのですが、この旅については「きまぐれ写真館」をご覧になって下さい。

一度の旅でうけた沢山の衝撃。これが私の「ロケ地の旅」の原点です。


それ以降は特に好きな映画のロケ地を探し、歩きました。

好きだった人と一緒に行くと誓っていた場所、郡上八幡もその一つ。

以前コラムで3回に渡って取り上げた「サトラレ」の主なロケ地です。

この旅は感慨深いものとなりました。

劇中ラストシーンで見せた満開の桜。それに涙した方も多いと思います。

あいにくの大雨でしたが、満開の桜は私に大きな感動と勇気を与えてくれました。


その年の暮れ、それまでの行き詰まった人生を変えるべく、西日本最南端の旅に出て憧れの尾道をついに訪れることになるのですが、実はこの旅でもう一つのロケ地を、しかも偶然に発見することとなりました。

残念ながら映画は未見ですが、あの名曲の映画化「なごり雪」です。古びた駅舎が印象的でバイクを停めたのですが、実はその駅のホームが、ロケに使われたのです。

もう一つの偶然、「さびしんぼう」の大林監督の映画だったと言うことも、運命と感じられて仕方がありません。

この旅の詳細に関しては、詳しくは「ひたすら3800キロ」をご覧下さい。

その後は「桜の旅」に集中し「ロケ地の旅」は無かったのですが、2004年「交渉人真下正義」のエキストラに参加してからは再びロケ地への血が騒ぎ始めました。

今年の私の旅は充実したものが続いています。

以前あれだけ探して見つからなかった「河童」のロケ地、「交渉人真下正義」でのかなりマニアックなロケ地、そして2005〜6年を代表する邦画「Always3丁目の夕日」のロケ地等々。

いつしか効率良く探せるようにもなっていました。

それはひとえにネットでの情報収集のおかげです。

マニアックなロケ地も、先述した各地のフィルムコミッション公式HPを探せばヒントが見つかります。

そのヒントを元に、さらにネットで検索を重ねると、意外にも簡単にロケ地が見つかるものなのです。

有名な映画であればある程、簡単だと言えるでしょう。


どうです?あなたの「旅」の選択肢として、ロケ地を訪れるというのは?

「旅」で無くてもいいかも知れません。

実は知らないだけで、地元で撮影されている作品も多いはずですから。

まずはそこから感動を味わってください。きっとそれからでも遅くはないです。


ちなみに私が現在住んでいる鹿嶋近郊では、鹿嶋開発が行われた頃から沢山の映画が撮影に訪れています。

「さらば愛しき大地」、石原プロの映画数本、「シャコタンブギ」、オリジナルビデオですが「プロミスリング」、最近では「夜のピクニック」等々。

同じく銚子でも撮影が多々行われています。

TVのサスペンスものでの断崖絶壁シーンなどは、ひとつの定番とも言えるかも知れませんね。

以前コラムで取り上げた「ジュブナイル」もそうですし、同じ山崎貴監督の「リターナー」でも飯岡灯台や波崎地区の風車など、数えだしたらきりがありません。


どうです?探してみたい気になりませんか?


さてここしばらく邦画が続いていたので、次回のコラムは久し振りに洋画をお届けしようかと思います。

出会って以来愛し続けている映画であり、名画を選ぶと必ず上位にその名を見せる、

「ニューシネマパラダイス」

をお贈り致します。

完全版を元にコラムを薦めますが、その以前に上映・発売された版との違いなども述べていきたいと思います。

いつになく”熱く””長い”コラムになるかも知れませんが、それも愛情の表れとお許し下さいませ。


それでは、また!

2006年5月8日月曜日

ランボー

映画俳優というと、あなたは最初に何を連想しますか?

演技をする仕事ですよね。演技ををすることだけに生涯を捧げる俳優も数多くいます。職業軍人にひっかけて職業俳優とでも呼びましょうか。

でもいつからか、洋画邦画を問わず、俳優が新たな分野に進出する事も多くなっています。小説を書いたり、店を経営したり、政治に進出したり。

俳優を廃業し、意気揚々と始めてみたものの畑違いで苦労する事も多く、結局役者に後戻りというパターンも見受けられます。

しかし役者としてそこまでの地位に上り詰めた「実力」と「魅力」と「天性」があるのは事実で、新たな分野で成功する人も多いのです。これは役者に限った事ではないですが、ある程度の地位まで上り詰めた人は、やはり何か輝くものを持っているのでしょうね。

畑違いではなくとも、その職業から発展して、成功した人もいます。

最近では、トム・クルーズがそうでしょう。

映画を造る側に立ち、製作だけでなく自ら映画化の権利を買い付け、様々な作品を世に送り出しています。

「ミッション・インポッシブル」シリーズ、「マイノリティ・リポート」、「宇宙戦争」等々。

これだけ目立った活躍は彼が最初だと思われがちですが、実は違います。

この「ランボー」シリーズの主演、「シルベスター・スタローン」もその一人です。

彼の出世作は誰もが知っている「ロッキー」シリーズですね。この映画はスタローンが書き上げた脚本が認められ、当時殆ど無名だった彼を一気にスターダムへのし上げた作品でもあります。

この「ランボー」も脚本に携わっています。

それ以外にも、脚本を書いた作品や、製作した作品、仕舞いには歌まで歌ってしまった(笑)作品もありますので、気になる方は是非探してみて下さい。

「ランボー」の原作はデヴィッド・マレルの「一人だけの軍隊」と言う小説です。

現在発売されている「ランボー」のDVDには原作者のコメンタリーがあるので、是非ご覧下さい。

ランボーの名前の由来や、原作との違い、スターウォーズとの共通点(!)、ラストシーンの秘密等々。

1時間半が短く感じる程沢山の裏話が聞けますよ。


私が小説と出会ったのは、映画を観た直後。

20年以上読んでいないのですが、その小説の内容に映画以上に衝撃を受け、今でも一部を鮮明に覚えています。

映画劇中では、ランボーは人を殺していません。(正確に言うと間接的に一人死んでいますが)

血生臭い残忍なシーンの連続に麻痺して気付かない人も多いかも知れませんが、そうなのです。

原作者コメンタリーではあるシーンで4人死んでいる設定となっていますが、見る立場からすれば死んでいるかどうか判らないので、私はそう解釈します。

ところが小説はどうでしょう。タイトル通り、一人で戦争を仕掛け(性格には仕掛けられたのですが・・・)、多くの命が失われています。

そして、これから書く内容が決定的に映画と違うのですが、最後にティーズル保安官はランボーに殺され、そのランボーもトラウトマン大佐に殺されるのです。

小説は主人公の視点で描かれているのですが、その最後が実に衝撃的で、それまでの死闘を冷静沈着でしかも淡々とした視点で描いていた表現と相まって、主人公は死ぬのですが、胸を打つのです。

このコラムを書くと決めた当初、原作との違いを強調した内容にするつもりでいました。

しかしいざ映画を見始めた時、それは極力省こうとすぐさま決めました。

そう今回、DVDをコメンタリーから見たのです。

原作者コメンタリーを聞けば判る事が多いので、あえて省かせて頂きますが、これだけは言わなければなりません。

この映画の「成功」と「悲劇」は、全てラストに集約されています。

「成功」はランボーが大佐に全てをぶちまける時。それまでは寡黙で殆ど喋りさえもしなかったランボーの、重すぎる程の過去の悲しみが、全てここで伝わってきます。実際にこのシーンのおかげで、ベトナム帰りの兵隊を家族に持つ人々から、感謝されたそうです。(詳しくはコメンタリーをお聞き下さい)

それまでは、ランボーのように「余所者」や「厄介者」としてしか思われなかった人々に、救いの手を差し伸べたわけです。

最近は変わってきましたが、アメリカのアクション映画と言えば当時、一般には好戦的で裏の悲劇をあまり語ろうとしませんでした。でもこの映画「ランボー」は、アクション映画ながら、それを打ち破ったのです。

それもたった数分の台詞で。

初めてこの映画を観た私には衝撃的でした。何せ、当時中学生でしたから。

戦争を知らない世代である私が、戦争を知っている親や祖父祖母たちからでなく、映画から知らされ、しかもあまりにも残忍な内容。

この頃からでしょうか。それまではメカや兵器にこだわって、プラモデルを作ったりしていたのですが、この作品を観てから、徐々にその世界からは離れていったように思います。

実はこの作品を観たのは、この「極私的感涙映画評」の最初のコラム「アウトサイダー」とほぼ同時期。

「アウトサイダー」と共に、私の人生の方向を変えた大切な作品であるのです。

話が少し逸れてしまいましたね。

もう一方の「悲劇」を語らなければなりません。

それは、原作と違うラストシーンです。

ランボーが死んでこそ、この作品の真意が伝わったはずなのです。

実際に、この映画にはもう一つのエンディングがあったそうです。詳しくはコメンタリーで述べられていますが、観客と製作者達は、このラストシーンを選んだという事です。

そしてその余波は、続編という形になって表れます。

戦う事を避けたがっていたはずのランボーが、今もベトナムに残る同僚を助ける為とか、大佐を助ける為だとか、理由を付けてこれでもかという程、戦わされるのです。

多くの血が流れ、多くの死がそこにあります。

生き延びてしまったが為に、再び悲劇の戦場へ戻らなければならなかったのです。

原作を知るものとしては、やはり最後は死ぬべきだったのではないか?と今でも思います。

そしてこの過ちの縮図が、今もアメリカで繰り返されている事に、胸を痛めます。

まもなく9月11日が訪れます。

一般市民の多くはテロという惨劇の中に、真の悲劇の意味を知ったのですが、911テロ以降もアメリカ政府上層部は攻める事をやめません。

手を変え、形を変え、様々な戦いに携わっています。

戦争が景気を支え、人間を発展させているというのは事実かも知れません。

でもそろそろ、その破壊と消費だけの段階を、終わらせなければならないのではないでしょうか?

そして、先日映画館で観た映画のふたつの予告に、その兆しを感じる事が出来ました。

ひとつは「ユナイテッド93」。

911テロで唯一、目標に到達出来なかった機体の中で繰り広げられたであろう物語を描いた作品。

遺族全てに同意を得、台詞ひとつにも嘘がない、ほぼドキュメンタリーに近いフィクション。

そしてもうひとつは「ワールド・トレード・センター」。

テロの標的にされ突然命の危険にさらされた多くの人々を救う為、活躍した消防隊の話。

あの崩れ去った残骸の中から、奇跡の生還を果たした人の実話です。

どちらの予告も、観ていて涙が溢れました。おそらく多くの方が、予告を観て何かを感じ取ったはずです。

そう、実際に起きたその悲劇を、私たちは嫌という程知っているからです。

あなたは、911テロのドキュメンタリーを、観た事がありますか?

新米消防士の密着取材中、その悲劇に出会し、命の危険も顧みずにビルが崩れ去るまでの一部始終を事細かに収めたテープを元に、造られた作品です。

そのドキュメンタリーを観ていた為、緊張感漂う異様なまでの光景を知っていたからかもしれませんが、どちらの作品も、平和の真の意味を考えさせてくれる大変素晴らしい作品に思えます。

そして、悲劇を経験した国からこのような作品が生まれた事に、大きな意味があるのだ、と私は思います。


派手なアクションに目が眩んでいるかもしれませんが、「ランボー」は立派な反戦映画です。

そう思ってみると、より深みの増す、素晴らしい映画に見えるでしょう。


最後にひとつ、劇中の大事な台詞を思い出して下さい。

洞窟内のランボーと、大佐が無線交信しているシーン(チャプター19「無線の呼び掛け」)でのランボーの台詞です。

「they drew first blood.」

この台詞のラストにある、映画と原作のタイトルにもなった「First Blood」とは、


先に仕掛ける。


そんな意味があるのだそうです。

子供達の痴話喧嘩と同じで、まさに、どちらが先に仕掛けたか?と言う事でしょう。

でも悲劇が始まってからでは、そんな事はどうでも良くなってしまいます。

それだけは、忘れないで下さい。


さて、アクション映画のスッキリしたコラムを期待していた方には、ちょっとした裏切りに思える程、重いコラムになってしまいましたね。

その償いもかねて、次回はヒューマンコメディと例えられるような作品をお贈りしたいと思います。

「ダンボドロップ大作戦」

です。

ちなみにこの作品もベトナム戦争を描いていますが、実に心温まる物語です。

そしてさらに、実話(何処までが実話であるかという問題はありますが)である事に驚かされます。

レンタルで探すのは難しいかもしれませんが、この作品は現在税込み1500円という低価格で発売されていますので、興味のある方は是非是非購入してご覧下さいませ。


それでは、また!


1982年アメリカ映画 94分

監督    テッド・コチェフ

製作    バズ・フェイトシャンズ

脚本    マイケル・コゾル

      ウィリアム・サックハイム

      シルヴェスター・スタローン

製作総指揮 マリオ・カサール

      アンドリュー・ヴァイナ

原作    デヴィッド・マレル

音楽    ジェリー・ゴールドスミス

撮影監督  アンドリュー・ラズロ

出演    シルヴェスター・スタローン ブライアン・デネビー リチャード・クレンナ 他

2006年5月7日日曜日

さびしんぼう

今回は久々に約束通りの更新が出来てホッとしています。

桜の旅も無事終わり、これでやっと専念出来るという状態です。


この映画の監督は大林宣彦さん。邦画ファンなら誰もが、その作品を一度は目にした事があるはずです。

「さびしんぼう」は大林監督を有名にさせた旧尾道3部作の最後の作品。私のお気に入り邦画BEST5に入る作品でもあります。

「転校生」の奇抜なアイディアとストーリー展開、「時を掛ける少女」のミステリアス、そして「さびしんぼう」の純愛、3部作を簡単に紹介するとこんな感じでしょうか?

劇場公開は1985年4月13日。その言葉自体今ではすっかり懐かしい響きになってしまいましたが、同時上映に松田聖子主演「カリブ・愛のシンフォニー」。歴史を感じますね。20年以上も昔の映画です。

私はこの「さびしんぼう」のDVDを所有していて約2年半振りに観たのですが、高校生当時に感じなかった恋の痛みが今となってひしひしと伝わり、時折涙ぐみながらの鑑賞となりました。


今回のコラムはストーリーを紹介しながら解説しつつ、ロケ地を訪れた思い出を語りたいと思います。


それでは、スタートです。


オープニングは画面いっぱいに映し出される言葉で始まります。

と同時に始まる音楽とナレーション。

その内容は主人公ヒロキ自身の紹介とこれからのストーリー展開に必要ないくつかの点を無駄なく詰め込んでいるのですが、長さはなんと4分半。DVDのカウンターを気にしなければ1分と感じないでしょう。それはきっと音楽と映像とナレーションの絶妙な噛み合わせの賜物です。

この映画は、最後までこの関係が絶妙です。メインテーマとも呼べるショパンの「別れの曲」を様々なアレンジに変え主人公の心の抑揚を見事に表現しつつ、シーンの変わり目にさり気なく、そして短く挟まれるナレーション、この三つの関係が見事なまでに上手くいっているのです。

台詞に関しては、演技が大げさに感じる部分が前半に多いのですが、これも無駄のない台詞を使いつつ後半の胸がキュンとする恋愛感情を引き出す為の仕掛けと言えます。

以前「サトラレ」のコラムで紹介した「笑わせて泣かせる」手法に似ているとも言えます。

オープニング直後の切なさを感じるナレーションから一転、仲良し3人組のいたずらっぷりが少しずつ笑いを誘い始めます。

ヒロキは親友を引き連れ、お寺である家の本堂の掃除を手伝わせます。もちろんそれには裏があり、ヒロキはそこで小遣いを稼ぎカメラ購入代金の借金を、残りを親友の為のスキヤキ材料購入に充てています。

もちろん家で食べるわけにはいかないので、ある場所へ進入するわけです。

お寺に住んでいるのはヒロキの両親と、ヒロキ、そしておばあちゃん。

おばあちゃんを演じるのは今は亡き浦辺粂子さん。

昨年なくなられた原ひさ子と共に邦画界の「おばあちゃん」的存在でした。

この映画の、シーンとシーンのつなぎ目に違和感を感じさせず、尚かつ気持ちを切り替えて次に挑める心構えを優しく引き出してくれるひとつの要因として、時折挟まれる浦辺さんの演技が挙げられると思います。

演技かどうか分からない程に自然で、ほんの一言に感じるおとぼけさ。

素晴らしい人を亡くしてしまったなと、今でも感じます。この味が出せるおばあちゃんは、今は居ないと言っても過言ではないでしょう。

ふざけながら掃除をしている3人組に悲劇が襲いかかるのですが、それは3人にとっては決して悲劇ではなく、「しまった」程度の出来事でした。しかしこれが、(白塗りの)さびしんぼうがこの世に舞い降りてくる切っ掛けとなるのです。

ここから先は、目まぐるしく物語が展開していきます。理科室でのスキヤキが見つかってしまいバツとしての校長室掃除。ふざけながら掃除しつつ「タヌキのキンタマ」を校長の飼うオウムへ教え帰宅。寺の下にある三叉路で偶然あこがれのさびしんぼう、百合子(この時点でまだ名前は知りませんが)とすれ違い、家の中では(白塗りの)さびしんぼうと出会う。

やがてPTA会長と校長の怒りと、母親の失笑を買い、自宅謹慎となってしまいます。

この映画で特に印象的なロケ地のひとつに、小坊主姿のヒロキが友達と待ち合わせた祠があります。

尾道は20年経った今でもロケマップを無料で配っているのですが、そこにこのロケ地のヒントが隠されています。そう、隠されているだけなのです。具体的な町名や番地は一切記載が無く、ロケ地の名前とモノクロのイラストと道路のみが描かれています。

DVDの特典映像で監督が語っていますが、迷って探しながら尾道を知って欲しいという希望が込められているのだそうです。

そして訪れた人は、見事にそれにはまってしまい、虜になってしまいます。

以前書いた旅日記「ひたすら3800キロ」の8・9日目にも書いた事なのですが、単に映画の魅力だけでなく、街並みの魅力、そして街に住む人々の温かい心が大きく作用しているのです。

尾道の登場する映画でお気に入りがあるのでしたら、一度行かれる事をオススメします。それには時間が必要ですが、丸2日掛ければ、地元の人の助けもありマップのロケ地は全て探せるはずです(正確には一箇所は見つからないのですが・・・)

自宅謹慎を破った二人が向かったのはもう一人の友達の家。彼の家は商店街のど真ん中。

もちろんバレないはずなど無く、運悪くPTA会長と出会し、騒ぎは最高潮。音楽までも巻き込んで、おふざけモードは全開です。

と、ここで冒頭に述べた手法のひとつが、効果音をも駆使して、忘れられないシーンを作り出します。

あこがれのさびしんぼう、百合子が偶然通りかかるのです。

急に聞こえなくなる回りのざわめき。その中に徐々に消えていく友の声。偶然の衝撃を、ピアノの響きと共に見事に表現しています。このシーンは特に気に入っています。

追いかけるヒロキは堤防伝いに走り、百合子が渡船に乗る事を確認します。彼女は尾道の高校に通っていたのですが、隣町に住んでいたのです。その事実がここで分かります。

ここで登場する福本渡船は、現在も同じ船で運航しています。本当に短い距離なのですが、向島に架かる橋までは距離があり、今でも庶民の足として成り立っているようですね。ちなみに「男たちのYAMATO」で使われたロケセットは、この福本渡船の向島側の船着き場から近い場所にあるそうです。

今尾道では、このロケセットはある大きな波紋を起こしています。

「ロケセットは映画の中でこそ生きるもの」そう考える大林監督が異議を唱えているのです。公開されている間は尾道とは絶縁だ、と講演会等で訴え、終わるまで尾道に帰らないとの事です。

そう言われてみれば私が巡った、大林監督の尾道でのロケ地には立て看板など一切ありません。古き良きものを大切にしている心の表れであると同時に、先程の監督の言葉が痛い程良く判る気がします。

恐らくGWで公開は終了するでしょうから、今後の監督の動向が気になるところですね。

さて、(白塗りの)さびしんぼうはとうとう家族の前にも姿を現し、騒動が大きくなっていきます。もちろん家族以外をも巻き込み初めての大騒動。浦辺粂子さんのカルタ取りシーンとの組み合わせは絶妙で、ここで笑いは最高潮になります。

冬休みも終わり、学校に行ったヒロキを興味本位のからかっている眼差しで見る同級生達。ヒロキの同級生達は母が気がおかしくなったと思い、家を訪れさらに大騒ぎ。投げたゴキブリと共に再び表れる(白塗りの)さびしんぼう。

いよいよ収拾がつかなくなってしまいます。

ふと寂しくなるヒロキ。

(白塗りの)さびしんぼうを裏の墓地へ呼び出し、もう出てくるなというシーンも忘れられません。

実はこの時さびしんぼうが座っていた場所は現在、映画を撮影されたカメラマンが眠る場所でもあります。その事実を知らずに、現地を訪れた私は何やら複雑な気持ちになったと同時に、そこから見える尾道の景色の素晴らしさに心を打たれました。


ここから先は、もうストーリー紹介は必要ないですね。

恐らくこの映画は30歳代以上の殆どが観ているはずですから。


物語後半は緩やかで甘く切ない展開になります。

一気に悲しみが押し寄せるのではなく、徐々に徐々に切なさに包まれた悲しみが生まれてくるのです。

「別れの曲」の見事なアレンジと、オリジナルの旋律が観ている者の心を音楽のように操っていきます。

今回は、今までになく切なくなった後半ですが、初めて気付いた事も多々ありました。

父との風呂のシーンで、監督が何を言いたかったのか?

それから登校前のヒロキと掃除中の母が出会う階段のシーン。一瞬見せる母の「恋する乙女」の様な表情。

そして最後の最後にほんの僅かだけ描かれる未来。

劇場公開から20年以上経った今この瞬間、尾道でこの場面が存在しているのかと考えると、時の流れを感じると共に、あの頃と代わらない恋心、いやあの時以上に強くなった恋心に、胸が痛くなりました。


そう、この映画はまさに、私の「恋心の原点」だったのです。

観終えた今、気付きました。


あなたの心の中には、こんな素晴らしい感情を呼び覚ましてくれる映画はありますか?

そしてその映画を大切にしていますか?

もし愛している映画であるなら、一度ロケ地を訪れてみてください。

きっと、今まで以上に愛情が湧いてくるでしょうから。


さて今回のコラムに関連して、次回は「極私的ロケ地の旅」をお贈りします。

私が訪れたロケ地と、その映画にまつわる話を交え、紹介していきたいと思います。


それでは、また!


1985年日本映画 110分

監督     大林宣彦

音楽     宮崎尚志

脚本     剣持亘

       内藤忠司

       大林宣彦

原作     山中恒 「なんだかへんて子」

撮影監督   阪本善尚

美術デザイン 藤谷和夫

音響デザイン 林昌平

出演     富田靖子 尾美としのり 藤田弓子 小林稔侍 秋川リサ 入江若葉 佐藤允 浦辺粂子 根岸季衣 樹木希林 小林聡美

2006年4月29日土曜日

世界の中心で、愛を叫ぶ

2週間後の更新・・・また守れませんでした。

いつもの事ながら、大変申し訳ありません。

今月は、もう一つのHP更新作業に忙しく、時間が割けませんでした。

今しか会えない季節の証に出会いに言っていました。

今年で4年目になる「桜の旅」です。

毎週のようにあちこちへ出掛けて写真を撮ってきましたので、お時間のある方は是非「きまぐれ写真館」をお尋ね下さいませ。

その「桜の旅」もいよいよ佳境です。

来月はこちらに専念出来そうです。

と言う事で、これまでのお詫びをかねて5月は毎週更新を宣言します。

それから今までとは違う形のコラムも考えていますので、是非楽しみにしていて下さいませ。


さて、本題に入ります。

今回のコラムではストーリー紹介は省きます。日本映画の歴代興行収入で10位に入る程の作品であり沢山の方が観ている事と、いつもと違った題材を扱いたいのが理由です。その題材は後程。


この映画がヒットした要因は何でしょうか?

原作がベストセラー。私は未読ですが泣ける小説として有名です。

役者が有名。朔太郎の現在と過去を演じる大沢たかおさんと森山未來さんはそれぞれ有名です。それから婚約者である律子を演じる柴咲コウさんも「黄泉がえり」での好演依頼、日本の映画には欠かせない存在になっています。

その他にも主題歌を歌う平井堅さんや、途中で挿入される名曲の数々もヒットの要因であると言えるでしょう。

これだけ挙げると、なるべくしてなった興行収入10位とも思えます。

恐らくこの映画を企画する段階から数多くの方が携わり、原作の良さに惹かれ愛情を注いで造り上げたのでしょうね。

しかし私は、もうふたつ違う要素が関わっていると思うのです。

それは些細な事なのですが、ひとつ目は「泣きのツボ」です。

最近の映画にかかわらず、興行収入の良い作品はリピート率が高いと言えます。

同じ映画を、何度も映画館で見るという事です。この映画もきっとそんな人々に支えられたと言えるのではないでしょうか?

私は残念ながらこの作品を映画館では観ていません。DVDを購入し何度か観ています。しかし観る度にしっかりと泣けました。

映画館で観るのとTVで観るのでは感動の度合いが違ってきます。それなのにです。

大きなスクリーンで観る方が圧倒的に良い環境のはずなのですが。

そして何度も観る内に、泣ける箇所が増えていくのです。

その理由が「泣きのツボ」です。

以前このコラムで書いた「サトラレ」にも共通して言える事なのですが、見えてしまっている結末が観客の思考を働かせて涙を誘うのです。

ちょっと分かりづらいでしょうか?

簡単に説明しましょう。

この作品では、主人公の恋人である亜紀は白血病に冒されています。それは初めて観る人でも分かる事実(序盤では直接的に描いていませんが)として描かれています。

この病気は決して不治の病ではありませんが、今でも多くの方が亡くなっています。回想シーンの1986年当時は日本骨髄バンク等なく、さらに辛い状況だったと言えるのでしょう。

今もそうですが恐らくその当時白血病になった人は、誰もが死を覚悟していたはずです。

亜紀も同様です。

そして観客も、その気持ちを察しているわけです。

「この先には死が待っている」と。

その事実が、徐々にボディーブローのように効いてくるのです。

段々と悪くなる病状。刻々と近づく死。果たしたくても果たせない約束。

空港での亜紀の叫びに、この映画の悲しみの全てが集約されていると言っても過言ではないでしょう。

初めて観た時に、その「泣きのツボ」にはまると、次からはそのツボに直接関わるシーンでさらに想像力が働き、結末が頭を過ぎる。そしてさらに涙が溢れる、と言った具合です。

映画とは不思議で、最初に観た時は大したことのない映画でも、何度か観ていく内に、その間に経験した記憶が、映画へ大きく作用し、最高の作品になってしまったりするのです。

それはきっと、映画そのものに心があり、愛情があるからだと、私は思います。

この作品だって、ツッコミどころはいくらでもあります。

でもそれはどうでも良いんです。


映画は、心が宿っているかも知れないけれど、事実ではないのですから。


もう一つの要素は、ロケ地です。

都会は常に変わり行くもの。ほんの数年前の作品でも時代が変わったなぁと感じさせてしまいます。だから東京のような都会では、懐かしさはあまり感じません。

この作品の舞台は香川県。ここ数年で数々の映画のロケ地として注目を集めています。前回の「サマータイムマシンブルース」もそうです。

ちょっとした田舎である場所は、日本の何処にあるかには関係なく、ひとの心に安らぎや懐かしさを与えるものです。

この作品でも昭和後期の面影を上手く利用し、違和感なく当時を思い起こさせるのに一役買っているのです。

そんなロケ地の魅力に、今人々が取り付かれつつあります。

映画で得た感動を、実際自分の目で確かめようとするのです。

実際にこの作品のロケ地は、映画公開後から沢山の人々が訪れる名所になったそうです。

時に防波堤の上で叫んでみたり、時に路面電車の停車場にたたずんでみたり、と。

どこにでもありそうだけど、そこにしかない、そんな魅力に惹かれているのです。

あなたはロケ地を訪れた事がありますか?

お気に入りの作品のロケ地を、是非一度訪れてみて下さい。

次にその作品を観た時、今までと違う感動があなたを優しく包んでくれるはずですよ。


些細な事ですが、この二つの要素はどんな映画にも何気なく散りばめられていて、何気なく私たちの心に作用している。という事を知って頂きたかったのです。

なぜ感動したのか?を冷静に考える事はないと思いますが、それを知る事でさらに映画を楽しく見られると言う事を、どうか忘れないで下さい。


さて次回のコラムは、そんなロケ地の魅力に魅せられた沢山の人々が訪れた、そして「日本で一番有名」な映画の町である、広島県尾道市を舞台にした「さびしんぼう」を、ロケ地を訪ねた時の思い出と共にお贈りしたいと思います。

お楽しみに!


それでは、また!!

2004年日本映画  138分

監督・脚本   行定勲

原作      片山恭一

主題歌     「瞳をとじて」平井堅 

撮影      篠田昇

美術      山口修

録音      伊藤裕規

照明      中村裕樹

編集      今井剛

音楽      めいなCo.

出演      大沢たかお 柴咲コウ 長澤まさみ 森山未來 山崎努 他

2006年3月31日金曜日

サマータイムマシンブルース (ネタバレ編)

毎度毎度の事ながら、今回もあと5分で危うく4月に突入してしまうところでした(笑)

まさに「ギリギリセーフ」って感じでしょうか?

映画を観ていない方には、この台詞の意味は分からないかと思いますが、実はこの台詞のシーンにはある秘密が隠されています。

それに関しては、後程。


さて、今回のコラムは激しくネタバレしています。

笑いのポイントや、ディープに隠された秘密、撮影の事など。

ご覧になっていない方が読んでしまうと、楽しみが半減どころか、激減してしまいますので、どうか今回のコラムは、必ずご覧になってからお読み下さい。


最初の10分、まったりと時間が進んでいて、何が始まるのか全く読めずヤキモキされたのではないでしょうか?

実はここは、物語を何度も楽しむ上で絶対にはずせない大切な前置きなのです。

勘の良い方は、最後までご覧にならずとも途中で分かるかと思いますが、物語後半で繰り返されるタイムスリップの直接的な伏線だらけなのです。

そしてその伏線のシーンには、ある効果音が必ず付けられ、画面上の処理もブラックアウトという区切りがつけられているのです。

と言うわけで、初見ではつまらないシーンも、2回目3回目と観るにつれて、新たな発見や楽しみが増してくるのです。

これを私は勝手ながら、「本広マジック」と呼ばせて頂きます。

「踊る大捜査線」シリーズや、「サトラレ」でも同様のマジックが隠されていますので、今一度ご覧になってみて下さい。そこでもし、新たな発見が有れば、あなたも「本広マジック」の体験者です。


この作品の中には、小道具が大活躍しています。

それは「タイムマシーン」と言う主役と呼べるほど存在感のあるものから、事件をより大きくさせる「ヴィダルサスーン」、さらにはファミコンなのに投げつける道具としか使われない「ハリキリスタジアム」、SF研部室内の古びたポスター等々。

この4点に関して、ちょっとだけ触れたいと思います。

まずはタイムマシーン。

この映画の原作は舞台であり、その舞台ではドラえもんのタイムマシーンそのものが登場していました。

しかし映画では、全く違いレトロチックなデザインです。

実は、DVDのコメンタリー内で監督自身が語られているのですが、このデザインはHGウェルズ原作のタイムマシーンをイメージされているようです。それに加えて美術デザインの相馬さん(元アントラーズの選手と同姓同名、しかも同じ漢字!)という方のカメ好きが高じて、あのような甲羅がついたとか。

この甲羅も映画の大事な伏線ですね(笑)

次はヴィダルサスーン。

なぜ新美がヴィダルサスーンを愛用しているのかは不明ですが、そのギャップが笑いのひとつの要素であるには違いないでしょう。

しかも今回この映画では、初日に「ある」リンクネタを披露してくれたのです。

何と、とある劇場で先着順ですが、最新の「ヴィダルサスーン」シャンプーとコンディショナーをセットでプレゼント!

貰った私が、思わず苦笑したのは言うまでもありません。もちろん今でも大事に取って置いてありますよ。

ただ残念な事に、パッケージデザインが変わってしまったのです。メーカーが合わせたのかどうかは不明ですが、なんと劇場公開初日が、新パッケージの発売日(笑)

次はハリキリスタジアム。

これもコメンタリーの中で語られている事なのですが、なかなか美しい当たり方をしてくれなくて、役者さん達の頭に何十回となくぶつけられたとか。このゲームを使用するシーンがひとつもない代わりに、この様な使われ方も有るわけですね。

最後は部室内のポスター等。30〜40代の方々には、懐かしいものばかりです。「E.T.」や「ガンダム」の劇場公開当時のポスターは、特に興味をそそられたのではないでしょうか?ちなみに私が一番惹かれたのは「ハヤカワSFフェア」のポスター。中高生当時読んでいた小説を思い出しました。

そのポスター類は有る程度SFに関係しているから分かるのですが、部活動とは全く関係ない「オロナミンC」や由美かおるさんの「アース製薬」の鉄看板、「工事中」や「チカン注意」の看板などは、恐らく収拾癖のある石松の仕業でしょうね。

ちなみに「ガンダム」のポスターはこの映画の大切なリンクです。

劇中で、ズッコケ3人組(石松・新美・小泉)が過去へ初タイムスリップしたシーンを思い出して下さい。

どこかで聞いた事がある音楽が聞こえませんでしたか?

そうTV版ガンダム(ファースト)で、使用されていた音楽が当時のアレンジのまま(正確に言うと途中切れたりして笑いの要素の一つになってしまっていますが)2曲程使われているのです。元作品での躍動感そのままに、この映画を盛り上げてくれています。

これはかなり画期的な事なのだそうです。未だかつて、ガンダムのサントラは他の映画で使われた事がないのです。

それもこれも無類のガンダム好きである本広監督だからこそ実現した、夢のコラボレーションですね。


前置きが長くなってしまいましたが、そろそろ本題のタイムスリップに触れる事としましょう。

既に気付かれた方も多いとは思いますが、過去へ行くのと、未来へ行くのでは、移動方法が違うんですね。

過去は下へ、未来は上へ、それぞれグニュッと(笑)

そして物語中盤から、過去のシーンと未来のシーンを忙しく交互に描いていますが、ここにも上記の法則が隠れています。

「スロットマシーン」の様な効果音と共に、画面が上下しているのです。シーンが未来から過去へ変わる時はワイプ(シーンの切り替え)が下がり、逆は上がる、と言うように。

この辺りは、同じ場所で過去と未来を描き、しかも殆ど時間差のない場所の混同を避ける為に施された、細かなこだわりと言えると思います。

余談になりますが、このタイムマシーンは、映画館で実機が展示されました。

残念ながら写真には収めなかったのですが、パタパタと動きながら愛嬌を振りまいて、映画を観終えたお客の心を和ませていました。


さて次は撮影に関する秘密を。

この映画は、本広監督が初めてプロデュースを努めた作品です。

映画館にタイムマシーンが展示されたり、ヴィダルサスーンが配られるなど、有る程度自由度が利くのも、そのおかげと言えるでしょう。

それまでの本広監督作品と言えば、国内最大級の配給会社やTV局がバックアップとして名を連ね、宣伝活動も大々的に行われていました。邦画界で大作と言える作品は、殆どがこのような形態で上映に向かって進んでいくのです。

しかしながら、入念なマーケティングと引き替えに、監督の要望とは違った意図を埋め込まれてしまう事も、当然ながら有ることでしょう。

細かなところまでこだわり、自分の造りたい映画を造る。そんな熱意の表れが、今回の作品にはひしひしと感じられます。その証拠に、この映画のエンドロールには次への伏線が隠されています。

この映画は、本広監督プロデュース作品の第1弾なのです。

エンドロール終了直前、画面の左上をよくご覧になって下さい。

#01と書いてあるでしょう。

実際に監督のインタビュー等では、定期的に面白い舞台などを原作に自由度の利く映画を10本程造ると答えています。

今後に期待したいところですね。

余談ですが、私は「スペーストラベラーズ」の続編を観てみたいと、かねてから思っています。きっと実現されると信じながら、今は待つ事としましょう。

この映画は香川県が舞台となっています。本広監督の故郷です。そこで長期間のロケが行われたのですが、実は編集者である田口さんは、同じ時間に東京で仕事をしていました。しかしなぜか、撮影の翌日には繋がった画が監督や出演者達の元で見られていたのです。

これが、以前「交渉人真下正義」のコラムで軽く触れた、もう一つの新しい試みです。

まず断っておかなければならないのは、この映画の撮影は全てデジタルです。

パソコンでネットを使用する方なら、その原理はある程度分かるかと思いますが、ここで簡単に説明しましょう。

アナログというのは、そのものをそのままに焼き付けたり記録したりするものですが、デジタルというのは数字に置き換えています。膨大な情報量を0と1の数字に置き換え記録するのです。

つまりこの映画の秘密は、こういう事です。

香川で撮影されたデーターが、デジタル回線を使って東京に転送。そのデーターを東京で編集し、翌日には香川に最転送。翌日には、不満のあるシーンを取り直す事も出来る画期的な流れが確立したのです。

今はまだ、フィルムによる撮影が多いと聞きますが、いずれ映画はこのシステムに置き換わるものと、私は確信しています。

取り直しが利くだけでなく、制作時間の短縮が、上映まで短時間にこぎ着けるという、観る者にとっても嬉しい流れを生み出してくれるからです。

と、最新の技術にこだわっている事ばかり全面に押し出した作品のようですが、実はアナログな手法を用いたシーンもあります。

これは有るトークショーで編集者である田口さんの口から語られた事なのですが、非常に興味深い事なので、ここで簡単に触れたいと思います。

銭湯のシーンを思い出して下さい。ここで過去と未来の同じ登場人物が、銭湯の浴槽と、脱衣所に二人登場します。最近の映画に見慣れた人は、これを別々に撮影し合成したと思う事でしょう。

ところが実は、合成をしていないのです。

もちろん双生児(劇中ではソーセージと引っかけって笑わせていましたね)でもないです。フランクフルトでもないですよ(笑)

別々に撮影したのは確かなのですが、実はただ編集しただけなのです。脱衣所から浴槽へカメラが動いた際、柱などが写るボケ具合を上手く利用し、編集で誤魔化しているのです。

この手法は過去には良く行われていたようで、それをあえてCG全盛期の時代に使い、古き良き時代の映画と最新の技術を試すというこのバランス感覚。

映画と最新技術を愛する人だからこそ出来る、愛情のひとつと言えるでしょう。

どうです?段々と本広監督作品が好きになってきませんか?


え?まだ?


そんなあなたの為に、ここから先は極上の秘密をお話ししましょう。

この映画では、無秩序にタイムスリップが行われていたように見えますが、実は違います。

時間監視人とも言える、神の存在が隠れているのです。

あまりのさりげなさに、思い出せないでしょう。

それではヒントを差し上げます。

石松がギンギンを盗んできましたね。そのギンギンが置いてあったのは、「くすりの松井」。

そのギンギンがアップで写ったシーンをよーく観て下さい。

店の入口に幾つかポスターが貼ってあります。その内のひとつ、真っ黒な防犯ポスターは見つかりましたか?

そこに写っているのは升穀さん。本広監督の映画では「7月7日、晴れ」での好演が光っていましたが、今回はかなり地味に、しかもしつこいぐらいに登場しています。

この防犯ポスターも、登場するシーンによってデザインが変わります(ここが時間を監視しているという重要な意味を示しているのです)。

それ以外にも、お寺を歩くお遍路さん、薬局前の通りを歩くサラリーマン、田村君がいつの時代かを聞いた軽トラの運転手等々、主要登場人物達の行動を見守っています。特に大事なのは、沼へ落ちた曽我が溺れそうになったシーン。なんと、河童伝説の当事者の内の一人だったのです(加わる事で時間をコントロールしているとも言えますが・・・)。

お寺の前で新美が甲本へ自慢げにヴィダルサスーンを見せたシーンを覚えていますか?

「これはセーフでいいのかな?」と弱気な台詞を口にしましたね。この後、再び新美が写るのですが、実はその後ろを歩くお遍路さんが升穀さんで、しかも見切れるくらいにさり気なく「セーフ」のポーズを取っているのです。

まだここには上げていないシーンにも登場されているので、是非是非探してみて下さい。

もし、発見したら、掲示板にでも書き込んで下さい。

その時は、映画のネタバレトークで暑く(笑)盛り上がりましょうか?


今回のコラムはここでおしまいです。

登場人物のそれぞれの味や台詞の面白さ、ボケの法則など、まだまだ語りたい事は山程有るのですが、それはまたいつかと言う事でお許し下さいませ。


次回のコラムは、同じ香川繋がりで「世界の中心で、愛を叫ぶ」を取り上げたいと思います。

この作品に関しては、紹介は必要ないですよね。

では、再来週にお会いしましょう。


それでは、また!

2006年3月20日月曜日

サマータイムマシンブルース (紹介編)

2月下旬の更新と言っておきながら、またしても遅くなってしまいました。

毎度の事ながら、申し訳ありません。

その理由にはなりませんが、今回のコラムで取り上げる作品「サマータイムマシンブルース」のDVDを2月24日に購入して、既に3回も観てしまいました(笑)

劇場で観た際に大爆笑したのは言うまでもないのですが、はっきり言ってハマッてます。

このノリが、癖になってます。

と言っても、ご覧になっていない方には、何の事やらさっぱりですよね。

では、前置きはここまでにして・・・


タイムスリップ、タイムトラベル、タイムトリップ、等々、時間を超越する小説や映画のどれにも共通しているのが、スケールの大きさや、ロマン溢れる物語、そしてハラハラドキドキするスリル。

しかし今回ご紹介するこの映画は、ちょっと違います。特に最初の2点は当てはまらないに等しいかと思います。と聞くと、つまらない作品に思えてしまうのですが、これがとんでもなく面白い!!

大規模上映ではなかった為に、劇場で上映されている事自体知らない方が多いのが事実です。

よって、邦画好きや舞台好きな人以外に、残念ながらこの映画の知名度はあまりありません。

それでも、タイムトラベルものの好きな方には是非観て頂きたく、そしてハマって何度も見返して欲しく思う作品の為、今回のコラムは紹介にを中心に、次回のコラムをネタバレに展開していこうかと思います。


さて、あなたの前に突然タイムマシンが現れたとします。

もちろん、現代人の私たちにも分かりやすい機械としてですよ。

バック・トゥ・ザ・フューチャーのデロリアンで、時間操作のパネルがありましたよね?あれくらい簡単な操作とイメージして下さい。

あなたはどうしますか?

殆どの人は、まず使ってみたい衝動に駆られるでしょう。

さて、次はどうします?どの時代に行ってみます?

恐らく最初に思いつくのは、歴史で習った事柄を確かめに行ったりする事でしょう。そうでなければ身近な人々の生い立ちや、未来を見に行こうと思うかも知れません。

でも、ちょっと待って下さい。

現実は果たしてそうでしょうか?

どれも自分にとってはあまり利益がありませんよね?まずは目先の事を考えて、自分のためになることをするのではないでしょうか?

この映画は、そんな切り口で描いています。

それもごく最近体験した後悔を払拭する為に。


戻るのは昨日です(笑)


ここだけ聞くと、スケールの小さな作品に思えるでしょうが、ここは騙されたと思って一度観て下さい。

限られたスペースの中で演じなければならない舞台が原作の為、非常に良く練り上げられたストーリー展開である上に、最初の10分を除いて(その10分も後々大きな意味を持ってくるのですが・・・)息をもつかせぬ、それでいておバカなスリルがあなたを「なるほど!」と「爆笑」の渦に巻き込んでくれる事間違いありません。


それでもまだ、観る気になれませんか?

では、以下のサイトに行ってみて下さい。


http://www.eigaseikatu.com/title/13305/


HPを閲覧した方の投票で、映画の満足度を集計しています。

どうです?投票数の多さと得点の高さから判断しても、かなりレベルの高い作品と言う事が分かるかと思います。


この映画には、他にも特筆すべき事があります。

それはサントラの使われ方。

メインは、この映画の為に書き下ろされたオリジナルですが、それも一風変わっています。

テクノ調というか、一世代前のゲーム音楽っぽさを醸し出すメロディー。頭の中にこだまします(笑)

本広映画のサントラは、かなり頻繁にTV番組のBGMで流れています。特に多いのは、「踊る大捜査線」「スペーストラベラーズ」「サトラレ」ですが、最近は本作もかなり頻繁に使われています。映画本編をご覧になれば、きっと気付く事でしょう。

オリジナルの他にも、1stガンダム世代にはたまらない曲や、往年の洋楽ファンにも聞き覚えのあるあの曲等々、遊び心に満ちあふれたサントラと言えます。(但し、オリジナル以外はサントラ盤未収録)

そして、これは前回のコラムにも通じるのですが、笑いながら映画本編を思い出させてくれる、そんな一風変わった曲がサントラに収録されているのです。いわゆる台詞付きの進化系と言えるでしょう。

その曲は、メロディーと劇中の台詞を旨く重ね合わせ、ちょっと昔のリミックス盤のような乗りなのですが、海外のサントラにも負けない秀逸な出来映えです。

映画を観終え帰りの高速バスの中で、iPodに入れてあったサントラを聞きながら、吹き出しそうになったくらいですから(笑)

興味のある方は、是非ご購入ください。サントラ盤に関しては、きっとレンタルで在庫を置いている店はないでしょうから。


それでも、観る気になりませんか?

後はもう知りません。

その代わり、後悔しますよ。後に誰かから薦められる事になったりしたら(笑)

まずは、レンタルで構いませんから、是非是非観て下さいませ。


ちょっと短いですが、今回のコラムはこれまで。

次回は3月末にネタバレ編です。

どうかそれまでに、是非是非ご覧下さいませ!


それでは、また。


2005年日本映画  107分

プロデュース・監督 本広克行

原作・脚本     上田誠(ヨーロッパ企画)

音楽    HALFBY&STRAUSS

エンディングテーマ 「LCDD」Tommy heavenly6 

撮影    川越一成

録音    芦原邦雄

照明    加瀬弘行

VE    吉川博文

編集    田口拓也

装飾    龍田哲児

出演    瑛太 上野樹里 与座嘉秋 川岡大次郎 ムロツヨシ 永野宗典 本多力 真木よう子 升穀 三上市朗 楠見薫 川下大洋 佐々木蔵之介

2006年3月18日土曜日

夜のピクニック

前回、毎週更新をお約束しておきながら、いきなり破ってしまったことをお詫び致します。

これには理由があるのですが、今はまだお話し出来ません。

年末に、ある映画と絡めてお話し出来ると思いますので、どうかそれまでお待ちください。そしてどうかお許しください。


昨年は映画館での邦画の売り上げが21年ぶりに洋画を上回ったそうです。

そこには様々な理由があるのですが、大きな柱として言えるのは、それだけ邦画が元気になって来たと言うことでしょう。ただ、それを維持させる為には、観客を飽きさせず映画館へ運ばせると言う努力が、今後も必要なわけで、よりいっそう邦画のレベルを上げて行かなければならない、と言うことだと思います。

映画であるべき企画だけが映画としてスクリーンに登場しなければならないのです。

TVでも済んでしまう企画なら、私たち観客は映画館へは足を運びません。

それだけは、映画を作る側の方に徹底して欲しいと、一観客である私は切に願います。

それに関連していることなのですが、最近邦画が元気な理由のひとつに「フィルムコミッション」の存在が上げられます。

映画を好きな人なら既にご存知かと思いますが、「フィルムコミッション」とは映画やTV等の撮影に付随する様々な支援を行う組織のことです。

企画段階で映画の撮影場所を探す手伝いをしたり、撮影時のエキストラ手配やボランティアスタッフ等、その活動は多岐にわたります。

しかしこの組織の目的は、それだけにとどまりません。

あなたはロケ地へ行ったことはありますか?

それはきっと、映画等でその場所に特別な思い入れがあるからでしょう。

映画やTV等が「行きたくなる場所」の宣伝を間接的にしてくれる訳です。

「フィルムコミッション」の多くが、自治体が直接関与、または運営している理由は、そこにあります。

営利的な組織ではないけれども、間接的に地元の宣伝活動を行っている訳です。

2001年の8月に全国の協議会が作られて以降、現在では100を越える勢いで増え続けています。

邦画の元気は、これだけ多くの撮影支援組織があるおかげとも言える訳です。

私の住む鹿嶋市には、残念ながらフィルムコミッションは存在しません。

昭和40年代の鹿嶋開発以降、様々な映画やTVの撮影が行われているのに、です。

鹿嶋の立地は、ご存知の方も多いかと思いますが、東京から高速道路で約1時間30分。

東京近郊に本拠地を置く多くの制作会社にとっては、比較的予算もかからず身近にロケを行える場所であるのです。

もちろんTV番組等にも、取り上げてもらいやすい題材が数多く存在しています。

例えばサッカー。最近は優勝から遠ざかっていますが、それでも中継等で多数の製作者たちが訪れています。

他にも自然の産物が、豊富であるとも言えるでしょう。

海や、川、北浦等の釣りも有名です。数多くの芸能人がお忍びで釣りに訪れることもあります。

特に冬場は、ひらめ等の魚を釣る為に、沢山の釣り人が訪れています。

TVの釣り番組等でも良く放送されています。

それだけ鹿嶋と言うのは、映画やTVと近い存在なのです。

なのに、鹿嶋には組織が存在しません。しかし全くその動きがない訳ではありません。

私の友人である市議会議員は、「フィルムコミッション」の重要性を6年前から、議会等で説いています。

すでに一般質問では3度も取り上げているのですが、造ろうと言う動きは残念ながら起こっていません。

でも変わろうとしている兆しはあります。

2~3月にかけては鹿嶋市の協力で2時間もののTVドラマ撮影が行われていました。ある芸能人のご家族が鹿嶋市の出身である為に実現した企画であり、オール鹿嶋ロケと言うのは今回が初めてです。

TV放映は4~5月頃を予定しているそうですが、正式な日程が分かり次第、こちらでもご報告したいと思います。


さて前置きが長くなりましたが、今回お贈りする「夜のピクニック」には、実はフィルムコミッションの存在が欠かせないのです。

既にご覧になった方はお気づきかと思いますが、茨城県各所、特に水戸近辺は数多くの様々な団体が協力してます。

それだけ多くの地元民に支えられた映画なのです。

映画の中心である「歩行祭」を支えるスタッフのごとく、映画を支える為に茨城県民がひとつになった記念すべき作品と言えるのではないでしょうか?


主演をつとめる多部未華子さんは映画「HINOKIO」で本格デビュー後、映画を中心に活躍されている、これからが期待される女優の一人です。

凛としながらも何処か陰があり、それでいて一途なところが印象的でありますが、DVDのコメンタリーを聞くとまた違う一面が垣間みれるので、映画を気に入られた方は、是非コメンタリーを聞くことをお勧めします。

もう一人の主演を務めるのは、石田拓也さん。JUNON SUPERBOYコンテスト出身で、ここ2~3年程TVに映画に活躍の場を広げていることからも、その才能が伺えるかと思います。

その二人のそれぞれの親友役には、西原亜希さんと郭智博さん。西原さんはペンギンと戯れる『suica』で有名ですね。郭さんは岩井俊二監督作品に数多く携わっています。

この映画の魅力的なところのひとつに、個性的な役者がそろっているということがあります。

上記の4人を食ってしまう程のキャラクターが沢山登場します。その役者陣が、学校での雰囲気をよりリアルなものにしてくれているのは間違いないでしょう。

中でも私が気になるのは2人。

1人は、昼に弱くよるに強いロック少年を演じた柄本佑さん。名字からもお分かりかと思いますが、お父さんはあの柄本明氏。個性的な父親にも負けない存在感を、この映画では発揮しています。

もう1人は、すぐに弱音を吐く妄想好きな女性、梨香を演じた貫地谷しほりさん。「スィングガールズ」が有名ですが、最近では大河ドラマに出演、この秋からは連続テレビ小説の主役をつとめる等、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのある女優です。

脇を固める大人たちにも注目しましょう。一見強面ながら、生徒への繊細な優しさを持ち合わせる先生を演じるのは島田久作さん。主人公貴子の母親役には、南果歩さん。一見バラバラに思える個性的な若手陣を、演技で見事に中和する、素晴らしい仕事をしています。

音楽を担当するのはREMEDIOS。ピンと来ないかもしれませんが、「LOVE LETTER」など岩井俊二監督映画には欠かせない存在です。以前は麗美と言う名前で活躍されていた、と付け加えれば30代以降の方には分かるかもしれませんね。本作でも、生徒たちの揺れ動く心情をうまく表現しています。

最後になりましたが、監督は長澤雅彦さん。

「ココニイルコト」で監督デビューを果たして以降、「ソウル」「13階段」などの監督を経て本作に至りますが、映画との関わりはそれ以前からであり、初期の岩井俊二監督作品ではプロデューサーを務め、監督になってからも「はつ恋」の脚本を手がける等、活躍は多岐にわたっています。

「ココニイルコト」は私の好きな映画でもあるので、いつかまた紹介出来たら、と思います。


この映画「夜のピクニック」は観る人によって評価がはっきり別れる作品です。

私の友人には「面白くなかった」と言う感想もあります。

私は「映画の評価とは難しいもの」だと常日頃思ってます。以前レンタル店で店長を務めていた時にいくつも経験してやっと分かったのですが、万人に面白いと言われる作品はありません。

しかしほとんどの観客がつまらないと言う作品でも、その映画が一生を左右する場合もあり、その人に取っては名作でもあるのです。

だから常に、その映画を好きになってもらうには何が必要か?を考えて伝えているつもりなのですが、まだまだ力不足です。

この映画の良さは何?と聞かれると、答えは非常に難しいです。映画を面白くないと言った人が、なぜ面白くないのか、その理由も分かる気もするのです。

ではその答えは?


「体感する」


そんな良さのある映画だと思うのです。似たような経験があればそこに感情移入し、見覚えのある風景があればそれを懐かしむことも「あり」です。

そしてこの映画で何を感じて欲しいかと言うと、学生時代の淡い思い出を、昨日のことのように思い出して欲しいのです。

純粋な気持ちや心をもう一度思い出す切っ掛け、あなたにとってそんな映画であって欲しいのです。

なので今回はストーリーの細かな紹介は一切省きました。ネタバレ基本のこのコラムですが、あえてそれを破ってみたのです。

いかがですか?興味は湧いていただけましたか?


もし観ていただければ幸いです。

そして、良さを感じていただければ、私も幸せです。


さて、短い映画紹介でしたが今回はここで終わりたいと思います。

しかし、いつか別の形で、この映画のロケ地を紹介したいと思います。

今はまだその場に立っていませんが、次回紹介する作品と共に「ロケ地の旅」として紹介するつもりで居ますので、お楽しみに!


そんな訳で次回作は、去年の映画賞を総なめし、独立系映画では無理と言われていた日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞をした、


「フラガール」


をお贈り致します。

私自身の中では、この映画は非常に上位に位置している作品です。

ひょっとすると1回のコラムでは書き切れないかもしれないことを、まずお断りしておきます。


そろそろ桜の季節になってきましたが、皆さんの街ではいつ観られるのでしょうね?

そんな期待をしながらも、また来週、お会い致しましょう!


それでは、また!



映画データ


2006年日本映画 117分


監督   長澤雅彦

原作   恩田陸「夜のピクニック」

脚本   長澤雅彦・三澤慶子

編集   掛須秀一

音楽   REMEDIOS

出演   多部未華子 石田拓也 西原亜希 郭智博 貫地谷しほり 柄本佑 加藤ローサ 島田久作 南果歩 田山涼成 他