2004年12月6日月曜日

スイッチバック

基本に忠実なサスペンス映画は楽しめましたか?

音楽の使い方は地味で、しかも物語の舞台はアメリカの片田舎。

派手さは全くありませんが人間模様がしっかりと描かれているため、決してつまらないとは感じさせなかったはずです。

しかし私は、久しぶりに見たこの映画、何か物足りなくなった気がするのです。

そして皆さん、最近この手の映画が少なくなった気がしませんか?

私はその理由を、こう推理します。

「謎解きをメインに据えた映画は、一度見てしまうと面白さが半分以下になってしまう。」

同じ映画に2度3度と足を運び稼げるアクション大作や感動ものと違い、客足が伸びないひとつの理由になると思います。

その流れに一石を投じ、新しい映画の形を提示したのは「シックスセンス」ではないでしょうか?

いつか紹介したいとは思いますが、そこまでしなくても皆さんがご存じの映画でしょうから、いつかネタ切れの時にでも(笑)

脱線してしまいましたが、確かにその映画以降サスペンスは少しだけ変わったように思えます。


映画館で掛からなかった作品は、ビデオやDVDを売って稼ぐしか手がありません。

この映画の監督は「ダイハード」や「逃亡者」の脚本を手掛けた人であるにもかかわらず、作品としての知名度のなさに日本国内では劇場未公開でした。

そして残念なことにメーカーは、確実にユーザーの目にとまるよう一種の「詐欺的行為」を働いているのです。

ビデオでは良くあることなのですが、作品のジャケットは有名な俳優である2人がいかにも主役であるかのように扱っています。

しかしご覧になった方はお気づきかと思いますが、この映画の主役はあくまでも副保安官と、医者の道を捨てた青年にあります。

映画としては良くできているから結果オーライなのかもしれませんが、この「詐欺的行為」が、好調である映画業界とは裏腹に、ビデオ業界を衰退させたひとつの原因と、現場の第一線で長年働いてきた私は思います。


さてこの映画は、1つの殺人事件が切っ掛けに、2つの人間模様を交互に見せながら進んでいきます。

ひとつは保安官の選挙を控えた年寄りの副保安官と、事件を追う影のあるFBI捜査官。

機械的で影のあるFBI捜査官と対照的に副保安官の人間臭さを際だたせているのが選挙を争う署長。この存在も大切です。

もうひとつはヒッチハイクをしながらあてのない旅をする青年と、友人へ自動車を返しに行く途中の初老の黒人。独り身で旅をするという共通点が、一度は離れた2人を再び結びつけます。

副保安官の管轄である町で人質事件が発生したことにより、この2つの人間模様は少しずつ近づきはじめます。

副保安官とFBI捜査官は人間模様を中心に、そして青年と初老の黒人はどちらが犯人なのか?と言う謎解きを中心に。

やがて、まるで散りばめられた幾つもの点が線となって繋がっていくいように物語は進み、ラスト30分で一気に魅せるのです。


派手な演出なしに、そこここにヒントを配しながら進んでいく物語は、脚本の勝利と言っても過言ではないでしょう。そして映画としては佳作の部類に入るとは思うのですが、残念ながらこの映画には何かが足りません。

数千本のビデオを見た私にも今もって判りませんが、この作品をご覧になった皆様はどう思われますか?


そうそう、私にはこの映画でひとつだけ忘れられないシーンがあります。

この映画の人間臭さはそのシーンがあったからではないか、とまで考えています。

あえてどのシーンかは秘密にしておきますが・・・


さて今回のコラムが遅くなってしまったお詫びに、今週はもう1作紹介します。

予告通り、サスペンス3作品の締めくくりとして。


「ニック・オブ・タイム」


父と娘が降り立った新天地が、一瞬の偶然と陰謀により最悪の90分になってしまう、そんな作品です。

主演はジョニー・デップ。私はそれまでこの俳優を知りませんでしたが、この作品で大注目、その後の活躍は目覚ましいものです。

恐らく、ジョニー・デップのコーナーにあるはずですので、是非お近くのレンタル店をお探し下さい。


それでは、また!


1997年アメリカ映画 118分

監督 ジェブ・スチュアート

音楽 バジル・ポールドゥリス

出演 テッド・レビン ジャレッド・レト ダニー・グローバー デニス・クエイド

0 件のコメント:

コメントを投稿