2006年5月28日日曜日

グランブルー(グレートブルー完全版)

海の近くに住んでいながら、実は海のことを殆ど分かっていない私にとって、この映画は癒しでした。

海の映像は、それは居心地が良く、最初の数回は途中で寝てしまい結末が分からなかった程です。

眠ってしまったと言っても、つまらないと訳ではないですよ。

宝石のように美しい海の映像と、ゆっくりと進む物語にすっかり癒されてしまったと言うことです。

海は、それ程までに疲れを癒し、ひとの心を優しくしてくれるのですね。


物語は主人公ジャックとエンゾの少年時代から始まります。

ギリシャの海は、ジャックの父の働く場所であり、ジャックにとって海は当たり前の存在でした。

無口な海の男に一人で育てられ、同じ血が流れているジャックは、もちろん言葉少な。

貧しい生活に慣れた彼は欲もなく、人と争うことは望んでいません。

一方、そんな彼の前に表れたエンゾは、親分肌。常に自分が一番で、ライバルが出現すれば実力でのし上がろうとする少年。

ある日の出来事です。海に沈む硬貨を見つけたジャックを制し、エンゾは俺が取ってくると潜り、ほんの数秒で取って上がってきたのです。

エンゾはジャックにも硬貨を貰う権利があると言い、俺より早く取ってこれれば譲ろうと潜ることを勧めるのですが、ジャックは「君が一番」と消極的。

鼻高々に、少年達を連れてその場を去っていくエンゾの姿。一方のジャックは、海に潜り、海を楽しむことを日課としていました。


そんなある日、不幸は突然訪れます。

父の漁を手伝うジャックの前で、潜水用具の不具合から父は溺れて死んでしまいます。

偶然近くに居合わせたエンゾにとってもショックでした。


それから時は流れ、いつしか二人は大人へ。


エンゾは相変わらず海を生業として活躍。しかも潜水の世界選手権のチャンピオンとなっていました。

幼い日々のライバル心は、どん欲にも健在だったのです。

解体作業中の事故で傾いたタンカーから人を見事に救出し1万ドルを手に入れますが、生活は至ってシンプル。オンボロの車に乗って、弟を子分のようにいつも連れて歩いています。

そしてチャンピオンになった彼には、やるべき事が残っていました。

少年の日に、叶わなかったライバルとの勝負の決着、行方の知れないジャックを探すことです。

それは、自分が真のチャンピオンになる為に絶対不可欠なことだったのです。


やがてジャックの前に突然表れるエンゾ。

そしてジャックを追いかけるように転がり込んできたジョアンナとの、友情と愛情の入り組んだ、でも雄大な海に抱かれ静かに流れる時が始まります。


さてここから先は大いにネタバレしながら物語の説明をしますので、映画をご覧になっていない方は読まれないようお願い致します。


物語の中盤から、ジャックとジョアンナの恋が始まります。

初めは純粋な恋愛でした。

好きである表現が、不器用ながらも素直に表れ、普段は口数の少ないジャックがエンゾに怒るなど、明らかに変化も伴っていました。

でも、変化のない海と共に生きるジャックにとって、己の感情の揺らぎは不安でもあり、日々の平穏は時に崩れたりします。

それでも愛するジョアンナ。ジョアンナを愛する気持ちをストレートに感じ、何とか応えようとするジャック。

ジョアンナの愛と、ジャックの愛は、ゆっくりながらも上手くいっているように見えました。

そう、見えただけだったのです。


自由奔放に生きる男達は、わがままで、時に気紛れで、でも一生懸命で、男を愛する女は、自分を捨ててまでも、海のように深い深い愛情で接しなければバランスが取れないのでしょう。


ジョアンナは、一緒になりたいと願っていました。子供と友に、落ち着いた暮らしを望んでいます。

それは、誰にとっても当たり前のことでしょうし、当然の考えです。

でも夢や生きがいを持つ男にとって、時にそれは大きな障害にもなり得ます。

愛に悩むジャック。

それでも海は、優しく向かえてくれる。

一方のジョアンナはジャックに愛を確かめたくなって何度も行動を起こしますが、答を求める時ジャックはいつも海へと消えていきます。

それは逃げているのではないのです。

いつもながらの、当たり前の行動をしているに過ぎないのです。でもジョアンナにはそれが理解出来ない。

エンゾがジョアンナへ忠告したことは、嘘ではなかったのです。

ライバルでもあり、親友でもあるエンゾには、誰よりも分かっていたのです。

ジャックという男の不器用さが。


先行きへの不安が取り巻き始めた生活、それでもジョアンナは彼の元を去ろうとしません。

一度離れて、その辛さを知っていたからでしょう。

一方のエンゾは恋人を連れて故郷へとやってきます。さり気なくですが、実はこれもライバル心の表れなのでしょう。


故郷で記録を樹立し実質チャンピオンになったようなもののジャック。

そして、その記録を何としてでも破ろうとするエンゾ。

そんな2人の近くにいながらも、自分に対する愛情を確かめることしかできないジョアンナ。

3人の経験する2度目の世界選手権は、3人の関係に大きな変化をもたらすこととなります。


無謀なまでのエンゾの行動に、他の挑戦者は失神の連続。

しかしジャックはいとも容易く、その記録を打ち破ります。

これがジャックの真価なのです。

そしてついにエンゾの無謀な挑戦がピリオドを向かえることとなります。


これ以上の競技続行は無理と判断した博士の提言で、競技が中止へと追い込まれるのです。

エンゾは、今まさに練習で潜ろうと構えている瞬間だと言うのに。

エンゾを止められるのはジャックしか居ないと知っている主催者は、ジャックをエンゾの元へと行かせます。

しかしエンゾを良く知るジャックは競技の中止を伝えても、潜っていくエンゾを止めようとしませんでした。

人一倍強いプライドとライバル心を持って、それを生きがいとするエンゾを止めることは絶対に出来ない、ジャックは痛い程そのことを良く知っていたからなのです。

争いたくなくても、エンゾに応える為に大会へ参加したし、記録も塗り替えたのです。

まさに男の友情、です。


沈み行くエンゾにオーバーラップする父の死。

不安は的中し、ジャックは水中へ。

溺れるエンゾを助け上げます。

虫の息のエンゾを救命しようとする人々を払いのけるジャックには、きっとエンゾの人生の終わりが見えていたのでしょう。

ジャックの目を見つめ、微かな声でエンゾは言います。

「俺を沈めてくれ」と。

言葉にはしなかったけれど、エンゾはジャックに近づきたいと、ずっと思っていたのでしょう。その超人的な能力は、自分には備わっていないと分かっていながらも・・・

そう、ただライバル心だけでで潜っていた訳ではなかったのです。

死に瀕する状態になって、初めて海の良さが分かったエンゾは、ジャックにこう伝えたかったのかも知れません。


「深い、深い海の、良さがやっと分かった。お前を越えることは出来なかったけれど、せめてお前の近くにいさせてくれ。」と。


では、エンゾの頼みを涙で断るジャックは、なぜ沈めにいったのでしょうか?


人付き合いの苦手なジャックが、唯一心を許した親友の「最後の」願いを叶える為。

綺麗な言葉で片づけたくはない友情物語ですが、きっとそうだったと思います。


エンゾを沈めた後、瀕死で助けれらたジャックはイルカの夢をみます。

物語序盤、突然襲ってくる父の死も知らずに、ジャックに人魚の話をする男の会話を覚えていますか?

ここでは語られませんが、恐らく、人魚の正体は、死に瀕した時、最後に見える愛する者の姿なのでしょう。

ジャックは一命を取り留めますが、その後も死の恐怖は襲ってきます。

ベットで出血し気絶していたジャックは、ジョアンナに助けられますが、それでも海へ行こうとします。

これ以上の潜水に待ち受けるのは「死」だけなのに・・・


きっと、ジョアンナとの愛に悩むジャックは、本当に愛する者が誰なのかを確かめる為に潜ったのでしょう。

そしてその結末は観ての通りですが、そんな男を許す女の深い深い愛はこういうものだと言いたかったのでしょう。


「私の愛をみてきて」と言う最後の台詞の意味が、この映画と出会って10年目で、やっと分かった気がします。


さて、リュック・ベッソン監督と言えばアクション大作のイメージが強いのですが、実はこの映画のように精細な心を描く作品もあるのです。

そして、私の中では、この作品がベッソン作品のNo.1です。

時が経っても、忘れ去られないベッソン作品は、きっとこの「グランブルー」だと断言出来ます。


今回のコラムは物語の進行に沿って、ネタバレと感想を含んでみましたが、いかがでしょう?

私はジャックのように変化をあまり望みませんが、やはり同じ様な文章ばかりでは皆さんにとって退屈になるかも知れませんしね。

これからも、皆さんを飽きさせないような企画を色々と考えていますので、どうぞお楽しみに!!


さて毎週更新のコラムは今回でいったん終了です。

次回は6月の第2週週末更新を予定しています。

それにはちょっと理由がありまして・・・

次回はあまりにも有名なスターウォーズシリーズより、クラシック3部作と呼ばれるエピソード4〜6を紹介したいと思います。合わせて7時間弱には、やはり時間が必要なのです。

当然コラムにネタバレは必須ですし、いつになく熱い内容にしたいので、まだご覧になっていない方も、過去にビデオで見たよと言う方も、是非是非レンタルDVD等でご覧になって下さい。

よろしくお願い致します。


それでは、また!


1988年フランス映画

監督    リュック・ベッソン

製作    パトリス・ルドゥ

原案・脚本 リュック・ベッソン

撮影    カルロ・ヴァリーニ

音楽    エリック・セラ

出演    ジャン・マルク・パール ジャン・レノ ロザンナ・アークェット 他

2 件のコメント:

  1. エンドロールの最後に、「我が娘ジュリエットに捧ぐ」と出ますが、そこはどういう風に解釈したら良いでしょうか?

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  2. この映画はショットアングルで画面を構成しているが、ロング画面になるとホラーになる。ショットアングルだけだと分からない。エンゾが死んだ後の結末はヨーロッパとアメリカでは結末が違う。それを象徴しているのが映画に描いてある絵でありあれが結末である。題名も違う。アメリカは偉大な海、ヨーロッパは日も差さない暗い海である。これはダイビングと人魚両方の意味である。人魚=海で死んだ人の魂=イルカである。

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